【Live Report】
THEイナズマ戦隊「俺とオマエとサンプラと応援歌」
2019年4月21日 at 中野サンプラザホール
昨年5月、結成20周年の集大成として行われた初の日比谷野外大音楽堂でのワンマンライヴ。そこで観た景色によって気づかされたことがたくさんあった、という言葉に続けて、「1つずつ自分たちが乗り越えるべき壁を作って、ちゃんと自分らで責任とってケツ拭いていったら、ほんとに武道館って夢じゃないんやないか」とインタビューで語っていた上中丈弥。22年目のTHEイナズマ戦隊が、今年乗り越えるべき壁=目標としてきたのが、この中野サンプラザホールでのライヴだった。
客電がまだ明るい中、おもむろに客席後方から登場し、ステージへとあがった4人。ざわつきが歓声へと変わり、拍手が巻き起こる中、幕のかかったステージ前方で「ラブレター フロム 俺」をアコースティック編成で披露。その後、メンバーが幕の中に消え、「My Generation」のザックザクのギターリフが鳴り響き、丈弥の歌声を合図にステージを覆っていた紗幕が落とされ、ライヴがスタートした。
思えば、野音の大ラスに客席の真ん中で、同じくアコースティックで演奏されたのも「ラブレター フロム 俺」だった。あの日から始まったイナ戦の夢の続きが、この中野サンプラザホールでのライヴなのだ。そして、〈泥のついた人生が 俺達の勲章と言っても過言じゃないぜ〉と、20周年を経て最初に世に放ったシングル「My Generation」によって、俺たちまだまだ行くんだぜ!と高らかに宣言した、そんなオープニングとなった。
バックドロップとバンドセットのみのステージで、なんのギミックもないシンプルなロックサウンドを鳴らしライヴバンドとしての矜恃をみせた前半から、エンタメ要素の強いナンバーが並んだ中盤では、勝手にしやがれ・ホーンズの田中和、田浦健、キーボーディストの伊東ミキオを呼び込んでの華やかなパフォーマンスを展開。そこからは、ライヴハウスのようにダイレクトに熱量を伝えることが難しいとされるホール会場でも、十分に〈音楽〉で楽しませることのできるロックバンドであることを見せた。
なかでも鍵盤の旋律とバンド演奏に合わせ、じっくりと唄い上げた「愛じゃないか」「桜咲くまで俺達は」からの流れは、この日の最初のハイライト。格段に歌の表現力が増し、 心のひだをものぞかせる丈弥の歌声と、ふたたび4人だけの演奏に戻って立て続けにプレイされた「情熱」「OLD ROOKIES」「スポットライト」といったミディアムナンバーが、ぐっと胸に染み渡っていく。情熱をガソリンに、ただがむしゃらに走っていればよかった20代から、現実を目の当たりにし、迷いや葛藤を抱えながら試行錯誤してきた30代を経て、今年メンバー全員が40代となった今だからこそ届けることのできる〈歌〉たち。生き様や人生のペーソスを唄い、リスナーに勇気と希望を与えてきた先輩バンドに憧れ、その背中を追いかけていただけの20代の頃には到底出せなかったものが、歌の端々から滲み出ている今のTHEイナズマ戦隊。だからこその説得力が、今の彼らの歌にはあるのだ。それは、メンバー全員でのMCを挟んでプレイされた初期のナンバーでより実感したのだった。
そして、4人が札幌のライヴハウスでやり始めた頃から、20年近く演奏され続けてきた「応援歌」へ。この曲を全力で鳴らしながら唄う4人に応えるかのように、客席にいるひとりひとりが腹の底から声を出し、大合唱が巻き起こる。この曲を初めて聴いた時の感情が蘇えって奮起することも、当時とはまた違った響き方によって励まされることもあるだろう。きっとそれはメンバーもそうだ。良いことばかりじゃないけれど、踏ん張っていこうぜと、互いにエールを送り合い、本編は終了した。
アンコールでは、2日前に完成したという新曲を披露し、この日のラストナンバー「出会った皆様、我が師匠」をプレイする前、「胡散臭く聞こえるやろうけど、ホンマありがとう。死ぬまでイナ戦続けるから、これからもよろしく頼むな」と実に素直な思いを告げた丈弥。また、「そのうち物販で高齢者用オムツ売ろうと思うわ」と照れ隠しのような言葉を続けていたが、この日集まった人たちへ心の底から感謝の気持ちを言葉と歌に乗せて伝え、この日のライヴは幕を閉じたのだった。
「OLD ROOKIES」の一節じゃないが、夢や理想を追いかけ、時に躓き、現状に溺れながら大人になった彼らが、自分たちの力だけではここまでこれなかったことに気づいた野音。そこから、青春と呼ぶには若くない歳になったけど、それでも叶えたい夢がある幸せを知った彼らは、また新たな乗り越えるべき壁を作っては、メンバー4人だけでなく、バンドを応援し続ける人たちと一緒に越えていく。その先にある夢の舞台を目指して。
「もはや続けることでしか、自分たちを証明できないのかもしれない」と、以前インタビューで丈弥は言っていたが、決して順風満帆ではなく、心持ちも含めて紆余曲折しながらも、ロックの魔法と互いを信じ続けてきたからこそ輝きを放ちはじめた曲が、彼らにはいくつもある。スタイリッシュな佇まいや、インテリジェンスさを感じさせるサウンドなど、ロックバンドのカッコよさの形は様々だが、泥臭く転がり続け、悲喜こもごもの人生そのものが音楽になっていく。そういうカッコよさを持ったロックバンドにTHEイナズマ戦隊はなっていくのではないだろうか。いや、そうなってほしい。そんなことを思いながら、会場をあとにしたのであった。
文=平林道子
【 SET LIST 】
AC 01 ラブレター フロム 俺
01 My Generation
02 赤い命が燃えている
03.I love U
4.喜びの歌
5.俺とオマエとサンプラのソロ
6.あぁ バラ色の日々
7.最終列車
8.ワン・ツー・ストレート!!
9.為さねば成らぬぞ!!
10.パーダラ・ブギ~後悔するにゃ若すぎる~
11.愛じゃないか
12.桜咲くまで俺達は
13.情熱
14.OLD ROOKIES
15.スポットライト
16.バカ者よ大志を抱け
17.オマエ・がむしゃら・はい・ジャンプ
18.俺達の1ぺージ
19.合言葉 ~シャララII~ 生きててくれてありがとうな
20.応援歌
ENCORE
01 新曲
02 33歳
03 出会った皆様 我が師匠
【LIVE INFORMATION】
Acoustic Live Tour「唄モノSTATION 2019 ~出会った皆様 我が師匠~」
8月2日(金)名古屋 BL café OPEN 18:30 START 19:00
(問)サンデーフォークプロモーション 052-320-9100
8月9日(金)広島 LIVE JUKE OPEN 18:30 START 19:00
(問)キャンディープロモーション広島 082-249-8334
8月10日(土)福岡 スカラエスパシオ OPEN 17:30 START 18:00
(問)キョードー西日本 0570-09-2424
8月12日(月)高松 SPEAK LOW OPEN 16:30 START 17:00
(問)DUKE高松 087-822-2520
8月30日(金)東京 キネマ倶楽部 OPEN 18:15 START 19:00
(問)DISK GARAGE 050-5533-0888
9月5日(木)札幌 KRAPS HALL OPEN 18:30 START 19:00
(問)WESS 011-614-9999
9月7日(土)仙台 darwin OPEN 17:30 START 18:00
(問)GIP 022-222-9999
9月16日(月)大阪 味園ユニバース OPEN 16:30 START 17:00
(問)サウンドクリエーター 06-6357-4400
全公演:前売り¥4,500(D代別)/当日¥5,000(D代別)
オフィシャルHP先行:5月11日(土)12:00~5月19日(日) 23:59
一般販売:6月1日(土)10:00~
詳しくはSMA☆アーティストへ http://smam.jp/inasen/
【RELEASE INFORMATION】
13thアルバム『I love U』
NOW ON SALE
THEイナズマ戦隊オフィシャルHP http://www.inazumasentai.com/