【Live Report】
SPARTA LOCALS ワンマンリサイタル 2019『underground』
2019年4月5日 at 恵比寿LIQUIDROOM
再結成後初、オリジナルメンバーとしては13年ぶりにリリースされた新作『underground』を引っ提げてのワンマンリサイタル。2016年に再結成を果たした彼らの活動はこれまでライヴのみだったわけで、つまりようやくバンドはここから本当の意味での〈再始動〉を果たすことになる。過去を懐かしむ同窓会のようなサービスタイムを終わらせるために、彼らが乗り越えなくてはならないもの。それがこの日のライヴだった。
開演定刻に場内暗転、いつもの出囃子とともに4人が暗闇の中から登場する。そしてピンスポが当てられたドラム中山昭仁の「スパルタローカルズ、ワンマンライヴ、始まります!」という掛け声とともに新曲「夢くれ」でライヴがスタート。フロアには再結成ライヴのような凄まじい熱狂や興奮はない。むしろ誰もが穏やかに身体を揺らすことで新曲を自分になじませようとしているようだ。それはステージの4人も同様で、ヘンにオーディエンスを意識することもなく、それぞれの持ち場で演奏や歌に徹している。ギター伊東真一は伸ばしっぱなしのロングヘアーで外界をシャットアウトしたままプレイに没頭し、ベース安部光広は背後の中山のことを常に意識している。その中山は再結成以降ずいぶん自信を感じられるプレイに成長した。そしてコウセイ。オマエは本当に美しい声の持ち主だ。でも昔のコウセイはいろんな感情が交錯してしまうがゆえにまっすぐ歌が唄えなかった。もっと言えば唄うことは誰かを攻撃するための武器であり、誰かに助けを求めるための悲鳴でもあったのだ。でも今のコウセイにとって歌は違う。スパルタをいったん終わらせ、HINTOを始め、そしてまたスパルタを再結成させた末に彼がたどり着いたのは、今の自分を偽らずまっすぐに唄いたい、という境地だった。そしてそれが『underground』という作品だ。つまり昔のスパルタの再現でも焼き直しでもない、今の4人にとってのスパルタローカルズとしてステージに立つことが重要なのだ。
ライヴは新曲の間に彼らの代表曲をいくつも挟みながら進んでいく。「黄金WAVE」「ウララ」「ロックとハニー」はもちろん今でも人気があって、曲が始まるたびにフロアから声が上がる。でもここに集まっている人たちは過去の曲を聴いて懐かしんだりかつての自分に帰ってみたり、そういう同窓会のようなノリを求めているわけではないことが、フロアの様子からわかる。彼らもまた今の自分のままスパルタローカルズの音楽を楽しみたいのだ。再結成から2年あまり、ファンの中にもそんな欲求が次第に高まっていったに違いない。俺もそうだった。最初は過去の曲だけやってくれりゃあ満足だった。十分なカタルシスがそこにあった。でも何度か彼らのライヴに足を運んでいくうちに、自分を誤魔化せなくなってきた。これは同窓会なのか? フェイスブックで昔のクラスメイトが「一瞬で昔のみんなに帰れるよね」みたいな同窓会の様子を見た時のモヤモヤした気持ちが込み上げてくる。むしろ同窓会なんてクソ食らえだ。そう自分に痩せ我慢して生きてきた人間だからこそ、今でもスパルタローカルズが必要なんだ。なぁ、みんなもそうだろう?
誤解を恐れず言えば、再結成以降のスパルタはどこかで同窓会になりかけていたんだと思う。でもそれはコウセイが一番イヤだったはず。だから新作を早く出したかったけど、プレッシャーだったり昔と今の自分のギャップに苦しんだりしてなかなか作れなかった。そしてようやく完成した新作をもって臨んだワンマンリサイタル。ここからバンドは〈今を生きる〉ために生まれ変わろうとしているのだ。そして変化の時は訪れた。後半「Leaky Drive」から本編ラスト「jumpin」までの凄まじい熱狂は、明らかに再結成ライヴのそれを超える何かがうごめいていた。勢いあまってフロアへ降りて揉みくちゃにされているコウセイは、過去を乗り越えた解放感に包まれているようだった。
アンコールで出てきた4人は、まるで憑き物が取れたような表情で2曲を、さらにダブルアンコールで「CHAOS」をサクッとやってすぐ引っ込んだ。過去の亡霊はこの2時間で消え失せた。同窓会という名のサービスタイムもついに終了した。さ、バンドはここからが勝負だぜ、コウセイ。やっとスパルタローカルズが真の再結成を果たし、その一歩を刻んだ夜。彼らにはこれからたくさんの未来が待っているはずだ。
文=樋口靖幸
写真=西槇太一
【SET LIST】
01 夢くれ
02 I LOVE YOU
03 アンダーグラウンド
04 UFOバンザイ
05 黄金WAVE
06 GOD
07 春忘却
08 ウララ
09 希望
10 noRmaL
11 ギャラクシー空港
12 ピンクのバイクにまたがって
13 コールタール0
14 ロックとハニー
15 battle
16 Leaky Drive
17 THE CLUB
18 ピース
19 ばかやろう
20 jumpin
Encore
01 ハート
02 トーキョウバレリーナ
Encore 2
01 CHAOS