真似しても一生憧れの対象には届かない。自分から出たものを100研ぎ澄ましていくほうが憧れに近付ける
新しいEPを聴く限りではすごくいいことだと思いました。肩肘張ってないし、バンドの風通しの良さをすごく感じます。
「そうっすね……レコーディングの時の空気感はすごく良かったから、そういう目に見えないものが音に影響してたりするのかな。前は、〈ちゃんとやってるかな〉〈うまくできてるのか〉とか、そういうことばかり気にしてたんですけど、負の感情に引っ張られるのがイヤで、今回は〈こうしてほしい〉〈そうじゃない〉っていう場面で、それを言うのを放棄しちゃいました」
それって逆に不安になったり心残りがあったりするんじゃ……。
「ありますよ。だから次からちょっと言います(笑)」
はははははは。
「でも前は不足感から人を動かしてる感じがするんです。〈そうじゃない、こうして!〉って。それを〈こうしたほうが良くなりそうじゃない?〉っていう視点に変えてみたんです。あとギターとかはけっこう任せたりして。イントロ以外は全部考えてとか。そういうの初めてで」
そういうことができるようになった、という言い方もできますよね。
「できるようになりましたね。付き合いが長いっていうのもあるし、いいところもわかるし、自分ができることを最大限にやるようになっているというか。誰かに憧れてそれを真似しても、一生憧れの対象には届かないじゃないですか。自分から出たものが憧れと全然違っても、俺の曲、砂川(一黄)のギター、タカハシ(マイ/ヴォーカル&シンセサイザー&ギター)の歌声、(山崎)正太郎のドラムっていうのを100研ぎ澄ましていくほうが、憧れに近付けるきっかけになるんじゃないかと」
憧れて80くらいのものを作るんじゃなくて、きちんとCzecho No Republicとしての100を目指すと。
「そういうことって昔からわかってはいたんですけど、なかなか実行できなくて」
ひねくれてたし、卑屈になってましたからね。
「……はい。いや、もう素直に認めますよ(笑)」
ははは。今回は曲もいい意味で無理をしてないし、何より歌詞がすごく素直です。
「歌詞、変わりました? もうダメだ的な曲は書かないようになりましたけど、でも前も見返してみるとそこまでバッドではなかったかなと思うんですよ。主人公は寂しそうですけどね、いっつも」
今回は寂しそうな過去を眺めて、それをちゃんと肯定してますよね。「STAR」の〈過ちを繰り返した過去/彩って不思議と光る〉とか。
「ああ、〈STAR〉は最後に作った曲なんですけど、今まで通ってきた道筋とか、器用に生きてこれなかった感じとか、その中で誰かと比べて〈しょせん俺なんて〉って気持ちが生まれてたんですけど、結局これが俺のテンポだしな~みたいな。過去を見返しても成長できてるし、一見悲しそうだった出来事が、実はすごくいいことだったり。過去を否定すると、今を否定することになっちゃうんで。1個も無駄じゃないと思えたというか。出会って離れ離れになってしまっても、それも大事なことだったって思えてる。生きてるし、バンドも続けてるし」
〈間違う事ばかりの僕ら/でも生きてたらいい〉っていう。
「うん。けっこう疲れちゃってた時期もあったんですよね、精神的に」
いつぐらいですか?
「2年前くらいかな。何事もうまくいかないというか、何か人生が停滞しちゃってるような気持ちにもなってて。傍から見たらその頃と今とで何が変わってるかはわからないと思うんですけど……変わってるか、メンバー1人脱退してるし、傍から見たらよりピンチに見えてるのかな? でも俺としては人生が走り出してる、ダイナミックな瞬間というか」