【Live Report】
音楽と人LIVE 2019“新木場ナイトカーニバル”
2019年3月31日 at 新木場STUDIO COAST
今年の第一弾となるライヴイベント、〈音楽と人LIVE 2019 “新木場ナイトカーニバル”〉の出演者は、The Birtday、the pillows、ストレイテナーの3組。それは、2006年9月にこの会場で行われた、弊誌主催のライヴイベントで共演していた3組で、実に12年半ぶりの邂逅だった。
トップバッターを務めたのはThe Birthday。〈パーティーがまた始まる〉と繰り返されるフレーズがイベントの幕開けにふさわしい「Buddy」で勢いよく火蓋を切って落とした。2曲目「THE ANSWER」ではソリッドなサウンドにチバユウスケ(ヴォーカル&ギター)の切なる叫びのような歌声が響き渡り、緊迫感を生み出す。そして未来への希望を唄う「青空」を終えると、チバがギターを一度置きハンドマイクでステージから身を乗り出すように「24時」を唄い、続く「カレンダーガール」、「SUMMER NIGHT」では、それまでのソリッドでヘヴィな側面を打ち出した流れとは裏腹に、バンドのポップさ、キャッチーさを露わにする。フジイケンジ(ギター)が初めて歌声を聴かせ、バースディに新たな風を吹き込んだ「FLOWER」のあと、まるで広い場所へと解き放たれていくような「OH BABY!」で、いよいよクライマックスへ。チバがギターを置き、3月20日にリリースされたばかりのニューアルバム『VIVIAN KILLERS』から極めてハードコアな「DISKO」を披露。〈このクソメタルババァがよ〉という衝撃的な歌い出しから、バンドが鳴らすサウンドとグルーヴの強靭さ、そしてロックバンドとしての貫禄をこれでもかと叩きつけ、ステージを後にしたのであった。
次に登場したのはストレイテナー。躍動感あふれるドラムと、大山純(ギター)が奏でるブルースハープの音色が絡みあって始まる「YES, SIR」という、まさかのナンバーから幕を開けた。続く「KILLER TUNE」ではカラフルな照明に彩られた会場がみるみるうちにダンスフロアへと変貌していく。熱気を帯び始めた会場を「MOTIONS」でさらに高揚させ、一旦MCへ。ホリエアツシ(ヴォーカル&ギター)が「12年半前はチバさんも、さわおさんも40歳になっていないから、俺は今40になって2人の歳を超えてるんです。昔の2人のヒーローさを考えたら、自分はどうなんだろうって(笑)」と、あらためて12年の月日が経過したこととに想いを馳せていた。そんな言葉のあとに披露された「PLAY THE STAR GUITAR」で、彼らの音楽はまたこれから時を重ねながら進化していくことを、また「The Novemberist」では彼らの演奏力の高さと安定感を強く実感したのだった。「Melodic Storm」で、バンドとオーディエンスが音楽を軸に互いの心を通わせ、その一体感のまま突入した「MAGIC WORDS」で、客席のボルテージは沸点に。演奏を終え「ストレイテナーでした」というホリエの言葉のあと、1曲目からここまで12年半前に演奏したセットリストとまったく同じであることを明らかにした。現在の彼らが12年半前を再現するという、なんとも粋なサプライズ。そして、「シーグラス」、3月27日に配信リリースされたばかりの新曲「スパイラル」でライヴを締めくくった。これまでの足跡を振り返ることで、彼らがたどり着いた現在地を確かめ、さらに未来へ向かう新たな扉が開く瞬間を見るかのようなライヴであった。
この日トリを託されたのはthe pillows。「連れてってやる! この世の果てまで!」と山中さわお(ヴォーカル&ギター)が勢いよく叫び、「この世の果てまで」でライヴがスタート。誰ひとりとして置いてけぼりにすることなく、まだ見ぬ場所へ連れて行ってくれるような、そんな頼もしさにあふれていた。「『音楽と人』は25周年、金光さんは編集長になって20年。おめでとう!」と山中の祝福の言葉とともにプレイされた「アナザーモーニング」で『音楽と人』に対する思いに触れ、続く「About a Rock'n'Roll Band」では、この日の会場に集まったオーディエンスとロックンロールの持つ魔法をわかちあっていった。その後、「Funny Bunny」のサビで巻き起こった大合唱からは、真摯に音楽と向き合ってきたバンドとリスナーの間に築かれた確かな絆を感じたのだった。その後のMCでは、ストレイテナーとは15年、バースディのチバとクハラとは25年、『音楽と人』編集長の金光とは30年ほどの付き合いだと述べ、「こんなに長い付き合いの人たちがいまだに音楽が大好きで嬉しい。長い道を歩き続けてきた男たち、そして女たちに愛を込めて」と語り、「Thank you, my twilight」へ。その優しくも、先を照らす光のように力強い渾身のプレイに、強く胸を打たれ、さらに畳み掛けるように演奏された「LAST DINOSAUR」、「ハイブリッド レインボウ」でますます会場の思いがひとつになっていく。ラストは衝動の塊のような「Advice」で一旦ステージを去ったのだった。
興奮さめやらぬオーディエンスからの熱いアンコールに応え、再び登場したピロウズ。そこで山中は今年バンド結成30周年を記念し10月17日に横浜アリーナ公演を行うことに触れ、「平日だから行きにくいと思う。だから仕事を辞めて集まってくれ!(笑)」と笑いを誘いつつも、集大成となる大舞台への思いを語る。さらに今の時代、ピロウズの音楽は流行りではないと話し、そのうえで「新しいも古いもない世界、それがロックンロールだ!」と叫び、「Locomotion,more! more!」を披露。ロックバンドとしての誇りと自信を持ち続け、これからも最高のロックンロールを鳴らしていくことを宣言し、イベントは大団円を迎えたのであった。
こうして12年半ぶりとなる3組による熱いステージは終幕した。この12年半の間に、それぞれのバンドではメンバーの脱退・加入なども経験し、様々な壁にぶつかってきたことだろう。それでもここまで転がり続けてきたのは、どんなことがあろうと音楽に対する情熱を絶やさずにいたからだ。やりたいことをやること、カッコいいと思うものを信じること――この3バンドはこれからもその強い信念を貫いていくはずだ。それを改めて確認した素晴らしい夜だった。
文=青木里紗
写真=新保勇樹
【SET LIST】
The Birthday
01 Buddy
02 THE ANSWER
03 青空
04 24時
05 カレンダーガール
06 SUMMER NIGHT
07 VICIOUS
08 FLOWER
09 OH BABY!
10 DISKO
ストレイテナー
01 YES,SIR
02 POSTMODERN
03 KILLER TUNE
04 MOTIONS
05 PLAY THE STAR GUITAR
06 泳ぐ鳥
07 DISCOGRAPHY
08 The Novemberist
09 Melodic Storm
10 MAGIC WORDS
11 シーグラス
12 スパイラル
the pillows
01 この世の果てまで
02 RUNNERS HIGH
03 アナザーモーニング
04 About A Rock'n'Roll Band
05 BOON BOON ROCK
06 ニンゲンドモ
07 バビロン 天使の詩
08 Funny Bunny
09 Thank you, my twilight
10 LAST DINOSAUR
11 ハイブリッド レインボウ
12 Advice
Encore
01 Locomotion, more! more!
この日の様子は音楽と人6月号(5月2日発売)でもお伝えします!
本誌でしか見られない写真もあるので、ぜひ誌面をご確認ください!