綺麗事っぽく聞こえたらイヤなんですけど、改めてバンドって身体の一部みたいなものだなって思ったんですよ
どう否定されたの?
SORA「俺の場合、DEZERTのドラマーである自分を否定されました。ま、そこはどうでもいいんですけど。僕は千秋が言って来ることに対してなるべく受け入れて自分なりにどうすべきか考えるんですけど、どこかで自分らしさを殺しちゃってたのかなって」
千秋「っていう考えがズレてるんですよ。これはSORAくんに限らずみーちゃん(Miyako)もSacchanもそうなんだけど、いろいろ考えすぎてライヴをやってたんですよ。でも『TODAY』っていうアルバムはシンプルで簡単なアルバムだと思ってて、でも4人で表現するのはすごく難しいというか、ぶっちゃけ俺が弾き語りでやったほうが伝わるんですよ。でも俺がそれやっても面白くないからやらないだけで、つまりZeppは一致団結できなかったっていうだけの話なんですけど」
逹瑯(MUCC/ヴォーカル)「でも千秋さ、自分とズレてるって言うけど、一致団結っていうのは〈自分に合わせる〉ってことじゃないから」
おっといきなり先輩が登場(笑)。
千秋「逹瑯さん、まさにそうなんですよ。僕も『俺についてこい』って言ってるわけじゃなくて、『TODAY』についてこいっていうか。でもあのアルバムの曲作ったのは俺だし、結果的に俺が思ったことをバンバン言うし、それにみんなが引っ張られるし、さらに俺もみんなが処理しきれないほど言ってしまう……ていうかズレというか空回り。それがZeppでは顕著に出たっていう感じです」
で、今はそのズレも受け入れていると。
千秋「はい。Zeppのあと次の日の朝に酔っ払いながらそう思いました」
Sacchan「まぁでも実際にズレはあったんですよ、ヴォーカルと楽器隊の間にズレが。僕、あの日のライヴが終わって楽屋で〈あれ? 今日何しに来たんだっけ〉って思ったんですよ。ライヴが終わってからずっとモヤモヤしてて。しかも僕だけじゃなくて、SORAくんもみーちゃんもモヤモヤしてる気がして。で、それって何だろう?って。Zeppに向けてあれだけ練習して、フレーズも確認して、音も詰め込んだのに、どうしてモヤモヤしてるんだ?って。それで気づいたのは、僕らライヴをしに来たんじゃなくて、練習してきたことの発表会をあそこでやっちゃったんですよ。でもヴォーカルだけが発表会じゃないライヴをしに来てて、そこにズレがあったライヴだと思うんです。そのことに終わってから気づきました」
なるほど。Miyakoくんも同じことを思った?
Miyako「みんなが向かっている方向は同じだったはずで。来てくれた人に届けたいっていう思いは。だからそのために準備をしたんだけど、もっと単純にライヴを楽しむことを大事にしたかったなって」
SORA「それ、すげえわかる。逆にあんまり準備とかしないままだったらもっと強気でやってた気がします。〈行くぜオラ!〉みたいな(笑)。でもなんか地方を廻ってた時の自分と違ってたんですよ。あとでライヴ映像見て自分のことを〈誰だコイツ〉って思うような瞬間もあったし」
確かに僕が初めて観たライヴとは全然違うバンドになってました。でもそこが良かったというか。『TODAY』っていうアルバムを出したバンドが今やるライヴとしては、あれが正解だったと思います。でもそれが4人にとってはしっくりこないものだった。そういうことなんでしょうね。
千秋「綺麗事っぽく聞こえたらイヤなんですけど、改めてバンドって身体の一部みたいなものだなって思ったんですよ。もともと俺らは人間味のあるロックバンドというか。例えばSORAくんのドラムのカウントで曲が始まる時に、俺がどんなに落ちてようがクズだろうが、〈行くぜオラ!〉ってアクセルを踏んでもらうことで、俺も自信持って唄うことができる。でもそこで今まで俺がいろんなことをSORAくんに要求したり考えさせすぎたんだと思うんですよ。で、あの日俺だけがそういうモードになってた。だからズレがあったんです」
でもあのアルバムで千秋くんが唄ってることをちゃんと伝えようと思ったら、どこか発表会みたいな意識があって当然だと思うけど。
千秋「わかりますよ。でも俺、やっぱりバンドの魂を感じたいんですよ」
青臭いな(笑)。それってある種の自己満足だと思うんですよ。むしろ今までやり逃げみたいなライヴをやってきたDEZERTが、あの日はちゃんと唄ったり演奏したりしてることに意味があったと思うけど。
Sacchan「実際はそうなんですけどね。ただ、過去に自分たちがやってきたライヴを引きずってるというか……真面目にやればやるほど、楽しくなくなってくるんですよ。〈あれ? あれ?〉みたいに思ってるうちに曲がポンポン進んでいって……」
で、〈何しに来たんだろう?〉と。
千秋「だから俺、ツアーファイナルって言い方はもうやめようと思って。ファイナルって思うとみんな固くなるから」
今の話を聞いてて思うのは、それだけ『TODAY』っていうアルバムをライヴで表現するのは難しいってことで。それぐらいすごいアルバムを作ったってことじゃないでしょうか。
千秋「そう。だからまだモノにできてないんですよ、『TODAY』を。できないまま終わってしまった。けどそれでズレまくってることもわかったしそれを受け入れることもできたし、今はすごい前向きです。早く次を出したいって思えてるから」
はい。で、ここからは逹瑯もインタビューに参加してもらって1月からの2マンツアーの話をしましょう。このツアーはどういう経緯で出てきた話なんですか。
千秋「すごい軽いノリだったと思います。なんかよく知らないけど逹瑯さんがいくつか会場を押さえてて、俺らは俺らで会場を押さえてて、どっちも内容決まってなくて、じゃあ合体させる?みたいなノリで」
逹瑯「オマエの説明、時系列がめちゃくちゃなんだけど(笑)。最初に千秋から『2マンやらせてもらえないですか』っていう誘いがまずあって」
千秋「そうだった(笑)」
逹瑯「でもせっかく関係性の深いDEZERTとやるんだったら、普通に2マンやっても面白くないなと思って。だから俺個人的には各地で2デイズぐらいのツアーにしたほうが面白くなるんじゃないかと思って。最近MUCCも若いバンドと2マンやる機会が多いんで、それとは差別化したいというか」
だからツアーで、しかも2デイズ。
逹瑯「そう。それを俺から提案したらバンド的にも〈いいね〉ってなり。で、俺が会場押さえてたって言うのは、もともとそこで個人的にコピバンでもやろうかなと思ってたんですけど、けっこうスケジュール的に厳しくなりそうだったんでやめようと思って。で、その会場をそのまま2マンに使うことになったっていう」
千秋「そうですそうです」
逹瑯「だからただの2マンを東京で1本だけだったらサラッとやってはい終わりっていうノリなんですけど、けっこう規模が大きくなってきちゃって。しかも『せっかくだからお互いに曲作って会場限定で出しませんか』みたいな面倒くさいアイディアまで出てきて(笑)」
で、今日はそのレコーディングだと。
逹瑯「はい。もうすぐ歌入れです」