もうあとに戻れないし、戻りたいとも思わないから、今はしっかり自分たちの道を極めていきたいなって思いますね
正しい順番ですよね、それが。
「エルレの前にback numberの東京ドームも観に行ってて。インディーズの頃から知ってる先輩だからこそ、東京ドームで当時の曲を聴いた時に、とてつもない勇気になって。その2本のライヴを目の当たりにした時に、自分たちはこの人たちと戦っていかなきゃいけないってあらためて感じたし、俺は無理して何かしようとしてたのかなって気付いて。細美さんが去年一緒にツーマンやった時に打ち上げで、『焦る必要なんてまったくねえから』ってずっと言ってたんですよ。『焦って結果を残そうとして、結局何もありませんってなったら、本当に音楽嫌いになっちゃうからさ』って。僕もまったく同じ意見で。……同じ意見なのに、やっぱり怖くてできなくて、どこか焦りがあって」
それは、人から嫌われたくないから、自然と人に気を遣ったり幸せなことよりも不安なほうに目が行っちゃう、田邊さんの性格からくるところだったんでしょうね。
「何でしょうね……ビジネスマンみたいな感覚だったのかな? すごく利益不利益を考えて、いろんなマーケティングをしたりとか……そこまで戦略的にやってきたわけじゃないけど、自然と意識してる自分がいたというか。世の中のことに対して敏感になって、みたいな。でもそうやってきたことが間違いでもなかったんですよね。読みが外れていたらZepp Tokyoで2デイズもライヴできてないだろうし。ただ、これまで出会ってきた人たちにもっと誇りに思ってもらうためにはどうしたらいいのかっていうことをこの1年模索して。その答えが〈FREEDOM〉という作品に出たというか」
この曲タイトルやサウンドに反して、歌詞はめっちゃもがいてますもんね。壁を壊して一歩進んでも、また不安や迷いが生まれて、それをまたなんとか振り切って前に進んでいくっていう。その姿はとてもBLUE ENCOUNTらしいなと思います。
「そうですね(笑)。作品を出すたびに『解放された』とか言ってきてたんですけど、でも本当にタガが外れてきたような感じはしますね。一筋縄じゃいかねえぞってハッキリ言えるというか。だからファンの人もより濃厚であってほしいなって最近すごく思うんですよね。クセのあるやつが集まってほしいし、そいつらから教えられることがあるので。だから俺が言ったことに対してどんどん面倒くさい意見ほしいなって思うし。まあ言われたら言われたで、面倒くせえなって思うんですけど(笑)」
ははははは。
「でも結局それがほしくて音楽やってるんだなって思いますね。かまってほしいんですよね(笑)。で、俺たちのことをそうやってかまってくれる人にはいつまでもワクワクしてほしい。期待されたものに答えてワクワクさせるのか、それとも新しいものを見せ続けてドキドキさせるのか。ブルエンは後者でありたいなってすごく思いましたね」
あ、こんな姿もあるんだとか、こういうこともできちゃうんだっていう。
「そのうえで、パブリックイメージどおりの熱い曲やヤンチャな曲を披露した時に、それがちゃんと俺らの武器にできるというか」
カップリングの「ミュージック」はブルエンの武器をフル装備した曲ですよね。普通、バンドのパブリックイメージに近いものを表題曲にして、裏で実験的で攻めたようなことをやるっていうのがセオリーですけど、そうじゃない。このシングルはそこが面白いし、ワクワクさせながらグッと引き寄せるものがあって。
「そうですね。だから今回の形でシングルを出せるバンドでよかったなって、聴いてて誇らしさすらあるというか。だって引き出しがないと絶対にできないことじゃないですか。俺の引き出しまだあんぞ、なめんなよって言いたいし(笑)。いろんな先輩方が仲良くしてくださってるおかげ
で、その人たちから吸収できることもいっぱいあるんで。もうあとに戻れないし、戻りたいとも思わないから、今はしっかり自分たちの道を極めていきたいなって思いますね」
文=竹内陽香
撮影=堀内彩香