2021年、ガラ(メリー)改造計画第1段として彼が挑んだ挑戦は、なんとライヴレポート! 事務所の先輩である京(DIR EN GREY)が率いるsukekiyoのライヴの模様を綴ってくれました。『音楽と人』4月号の「ガラの毒言」とあわせてお楽しみください。
【LIVE REPORT】
sukekiyo〈sukekiyo「地獄のリピーター」-漆黒の儀-〉
2021.01.29 at TSUTAYA O-EAST
場所はTSUTAYA O-EAST。
久々にライヴハウスに来た。
会場の中は黒い服装に身を包んだファン、ステージには紗幕が張られている。BGMが流れる中、皆静かに開演の時を待っている。
いつもと変わらないsukekiyoライヴの光景だけれど
いつもと違う所と言えば、その紗幕に新型コロナウイルスに対する感染予防対策の文言が書かれている事だ。
約一年振りの公演。
不安と緊張感が漂う中、開演を知らせるブザーが冷たく鳴り響く。
そして、静寂の中、地獄へと導く幕が上がった。
一曲目の「in all weathers」。
この一曲を観ただけで、何故か今夜はとんでもない夜になると感じた。
ステージ後ろに配置されたLEDとステージ前に吊るされた紗幕に映る映像は
曲の世界観をより深く、そしてより美しく下品にsukekiyoの世界を創って行く。
抑えがたい愛憎の感情を吐き出す京さんの歌は今日も素晴らしい。
これが約一年振りのステージだなんて思えない。
個人的にsukekiyoに持つ勝手なイメージは
・変態的混沌
・サイケデリック
ライヴでは音を聴くというより、音を観る、魅せつけられると言う様な感覚。
今日のセットリストは昨日のそれとガラっと内容を変えているのは勿論だが、sukekiyoの曲は演奏する曲順が違うだけで全く違う表情を見せる。
ライヴを観に来ているはずなのに、
実は京さんによって作られた完璧なシナリオの中に取り込まれ、それを見せつけられる歪曲舞台劇なのではないか?と思う時がある。
今日のステージもまさにそれだった。
客席を一切意識せず、観ている者に合わす事もなく淡々と進んでいくのだが、力づくで引き寄せたり、無理矢理連れて行こうともしない。
まるで、カラフルな渦巻きのトンネルの中で怪しい笑みを浮かべた京さんが、こっちへおいでとばかりに、手招きをしていて、皆その姿に引き寄せ、結果取り込まれて行く。
この物語には意味があるのか、ないのか、答えがあるのか、終わりがあるのか、登場人物は自分なのか、別の誰かなのか、そこに存在しているのか、いないのか、それは嘘か本当か、それすら分からない。
しかし、それらはこの物語にとって凄く重要な事なのかも知れない。
自分の話をすればセットリストを作る際は、
まず今日どんなライヴにしたいか? どうやってみんなに伝えるかをイメージし、
何処で盛り上げ、落とし、聞かせ、最後はどうしたいか? 起承転結を考える。
そして、その流れを曲調だけで決めるのではなく、歌詞の意味合いも含め、照明、演出と合わせ練っていく。
単純に流れだけを意識したセットリストにすると、一本槍なライヴになってしまいがちで、楽しかった。は残るかも知れないが、何かを感じた、伝わった。という感覚にはならないと思っている。
自分は楽しい歌の後には哀しい歌は歌えない。
その逆もしかり。
楽しい時には笑い、哀しい時には泣く。
それが人間だと思うしそんなに器用に心は操れない。
今日のsukekiyoはとことん深く深く渦巻いて行くセットリストでかなり攻めていて、その答えは京さんだけが知っている物なのかも知れないと思った。
sukekiyoを表現する上で、映像演出は欠かせない要素の一つ。
歌詞を出したり文字を出したり、時にはステージに背を向けて生カメラで映し出したりと、映像の手法が多彩にある。
自分のバンドでも映像は使うのだが、あくまでもメンバーが背負うという感覚。
メンバーありきでその映像があり、曲、歌詞の表現をより広げて行くという感じ。
だが、sukekiyoに関しては映像ありきでこの曲を作ったのかな?
と思う場面があったり、メンバーより映像を際立たせる場面も多数ある。
この使い方は全く自分には無かったので、初めて観た時にはその迫力に圧倒された。
直接聞いた事はないが、一曲一曲の映像イメージは京さんが考え、伝え形にしているのだと思う。
何処からこのイメージが湧いて、どう映像制作に伝えたのだろう?とか、
出来る事なら一度頭の中を覗いてみたいと思っている。きっと見たことも無い何かが住んでいる思う。
京さんを支える演奏陣も素晴らしい。
確かな演奏力は勿論、この緊張感のあるステージの中でやるという事は大変な事だ。
以前、カウントダウンライヴにシークレット出演させてもらった時は
極度のプレッシャーから全身に湿疹が出たくらい身をもって体験している(苦笑)。
2020年コロナ禍になり、ライヴと言う物の存在、在り方は180度変わった。
チケットを手に足を運び、拳を上げて汗をかき、一緒に歌う。
その場所で生まれる熱狂と一体感こそがライヴの醍醐味だと思っていた。
だがしかし、sukekiyoのライヴには最初からそれがないのだ。
無いというよりそれらが必要ではなかったのだ。
sukekiyoと選ばれし者達との精神世界。
声や行動など見える物では無く、見えないけれどそこには強く確かな「心」があり繋がりがある。
もはや、従来の分かりやすい「型」は必要の無い物となっていて
それはそう思っていた自分のずっと先を行っているようにも感じた。
15曲目の「憂染」では珍しい青空の映像があった。
正直に言うと、この曲でライヴが終わっても良いと思った。
自分が言うところの起承転結の結の部分。
深い暗い沈んだ場所まで来たのに
何故か見上げた遥か上に小さな光がポツンと見えた。
その光が凄く綺麗で心がすっと軽くなって晴れた気がした。
その余韻に浸っていると、終わり所か、sukekiyoはまた、まだ攻めて来た(笑)。
〈えぇーこれが、地獄のリピーターって事!?〉
終わりの無い何処までも粘着質な偏愛物語は続く……。 気の触れた向こう側で……。
文=ガラ(メリー)
写真=尾形隆夫
【SET LIST】
01 in all weathers
02 偶像モラトリアム
03 猥雑
04 沙羅螺
05 本能お断り
06 接触
07 dorothy
08 Valentina
09 君は剥き出し
10 触れさせる
11 夢見ドロ
12 マニエリスムな冷たい葬列者
13 黝いヒステリア
14 濡羽色
15 憂染
16 ただ、まだ、私。
17 漂白フレーバー
sukekiyo オフィシャルサイト https://sukekiyo-official.jp/
メリー オフィシャルサイト http://merryweb.jp/