NITRODAYのヴォーカル&ギター小室ぺいが、自身が気になったものを独自の視点で綴っていくWEB連載。今回は、高校の頃に出会ったアルバムと、その頃から変わってしまった自分自身について。
#18「いままでで一番きれいな朝日」
2年前から横浜(といっても外れの方)にて一人で暮らしている。狭く、貧相で、だけど陽当たりは良好な部屋だ。窓が大きいからよく季節を感じられる。暑すぎる夏に寒すぎる冬、飽き足らない。
そこで過ごしてきた時間は、1日の呼吸の数のようなもので、思い返すにも返し切れない。馴染んでいるからこそ居心地がいいのか、あるいは、その逆なのか。とにかく、いま住んでいる家が結構好きだ。家の事だってマメではないが自分でやる。本当に面倒なことでもリズムに乗せて手を、身体を動かしていれば終わらないことはない。
この間は夜も明けそうな頃、ナンバーガールの1stアルバムを聴きながら洗濯を干していた。
高校の軽音部で出会った松島が貸してくれて、それまでロックのRの字も知らなかった15歳の頭をガツンとギターで小突いてくれたような、僕の人生においてはNEVERMINDとともに、BCをADにしてくれたようなオモイデがある1枚だ。
ふとディスクを再生させると、そんなことを含めた、高校生だった当時のことがまざまざと蘇ってきた。
誰とも目を合わせずスニーカーを見つめていた通学路や、モノクロの授業、学年集会。わざと音漏れさせて聴いていた騒がしい音楽。
そして――。
それから完全に隔たった20歳の自分。
かつての強さ(のようなもの)はない。
弱くなってしまったのだろうか、そう思うと目が滲む。でも、だとしたら今の方がちょっとマシだろうか。
だって、涙すら出なかったので。
夏至に冬至は思い出せない。波間に写る自分の影には触れられない。月日とはそんな風に些細なようで莫大なものだ。きっと、これからもすべては少しずつ変わってゆくんだろうか。
だとしたら涙もいつかは枯れるかな。
そんなことを思って眺める朝日は結構きれいだった。星も、僕も日々を刻んでゆくんだろう。5年後のことなんか100年後と同じくらいわからないけど、とにかく1日ずつ精一杯やろうと思う。
毎日、毎日、いままでで、一番きれいな朝日をのぞむ。
Information
「人にやさしく/ホームラン!」が配信中。
小室ぺいが出演する映画『君が世界のはじまり』(原作・監督:ふくだももこ、主演:松本穂香)のタイアップ楽曲として、THE BLUE HEARTSの名曲「人にやさしく」をNITRODAYがカヴァー。「ホームラン」は、ミドルテンポでメロディアスなサウンドと決意表明とも取れる歌詞が印象的なNITRODAYの新曲。
NITRODAYの楽曲はこちらをチェック→ https://ssm.lnk.to/nitroday
映画『君が世界のはじまり』(監督・ふくだももこ)https://kimiseka-movie.jp
NITRODAY オフィシャルサイト https://www.nitroday.com/