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  • #ヤバイTシャツ屋さん
  • #ライヴレポート

想像以上の変化と覚悟に胸を打たれた。ヤバイTシャツ屋さん、新たな始まりを予感した一夜

text by 樋口靖幸

【Live Report】
ヤバイTシャツ屋さん “スペインのひみつ” ONE-MAN TOUR 2019
2019年10月7日 at Zepp Tokyo



予想外のメガ進化ぶりに驚愕した。今日がツアー初日とは思えないほど素晴らしいライヴ。バンドが覚醒していく瞬間を目の当たりにしたようなステージだった。ついにヤバTはバンドとしての絶頂期を迎えつつある。とはいえステージの3人はいつもと変わらないところがヤバTらしいのだが、これまでとはどこか違う〈秘めた思い〉のようなものをステージの3人から感じた2時間だった。


「毎回ライヴで失う体力が大きすぎて。基礎体力があったほうがもうちょっとラクに唄えるんやろなって」


最新シングル「スペインのひみつ」リリース時のインタビューで、こやまたくや(ギター&ヴォーカル)は最近ランニングを始めた理由をこのように語っていたのだが、確かにここ最近の彼らにはスタミナ面に問題があるようなライヴが多かった。声が出なかったり演奏に集中できていなかったり、さらにはオーディエンスの熱気を受け止めきれなかったり。つまりデビュー以降ここにきてバンドが疲弊し始めているのではないか?という印象を持つようになった。しかし、この日の3人が生み出す音は初っ端から違っていた。軽快かつ前のめりな演奏で「かわE」でライヴが始まった瞬間、会場中から怒号のような声援が湧きおこる。それはステージから放たれる音の強度がこれまでと圧倒的に違うゆえのリアクションだろう。スリーピースの理想形とも言える奥行きの感じられるバンドサウンドと、それに負けない強いメロとヴォーカルやハーモニー。まだ1曲目が終わらないうちに彼らが急成長を遂げたことを確信する。ちなみに京都大作戦で会ったこやまは「もう走ってないです」と言っていたが、密かに肉体改造は行われているのだろうか(たぶん行われていない)。


というわけでライヴ序盤から途切れなく疾走曲を連発するこやまの姿は、大げさに言えば400mトラックを疾走するアスリートのように華麗であった。同じくしばたありぼぼ(ベース&ヴォーカル)もいつも以上にステージでの身のこなしが軽いだけでなく、声に張りと太さも加わっていて頼もしい限り。もりもりもと(ドラム&コーラス)は安定感に加えマッチョなプレイが際立つドラマーの進化形へとバージョンアップ。そんな序盤のブロックで衝撃だったのは「ネコ飼いたい」だ。ひたすら〈ネコ飼いたい〉を叫び続けるだけのこの曲をオーディエンスとともに熱唱する光景は、もはやアリーナロックのそれを彷彿とさせるものだった。万単位の聴衆が拳を振り上げながら〈ネコ!ネコ!ネコ飼いたい!〉と連呼するアリーナ会場……想像するだけで笑いがこみ上げてくる。


バンドが壮大なオーラをまとっているかといえば、そんなことはない。むしろそういった変化を拒んでいる印象すら受ける。そこには彼らなりの〈サークルバンド精神〉がそうさせるのだろう。だからMCも普段の会話と同じノリ。「パンケーキ食べたい」(©夢屋まさる)や「ありがとうオリゴ糖」(©ジョイマン)といった小ネタを挟みつつ、『エンタの神様』における司会の白石美帆の存在意義についてダラダラ語ってみたり。それはサークルの部室(があったかどうか知らないが)で3人がしていた会話とほぼ同じだろう。そんな彼らが紅白歌合戦への出演を願いつつ「案外わるないNHK」を熱唱するのも、サークルバンドのままどこまで行けるのかを楽しんでいるようでもある。しかしライヴが進むにつれて、それ以上の強い思いがステージからジワジワとにじり寄ってくるのを感じた。


冒頭で触れたように、間違いなく今の彼らは絶頂期を迎えつつある。きっと紅白も出るだろうし、アリーナ規模の動員を果たすライヴもやるだろう……と思っていたら、アンコールで野外ワンマンが発表される。3月28日と29日、三重県の志摩スペイン村で野外ワンマンを開催するという。なるほど、そういうことか。そういえば本編の終盤、彼らは「反吐でる」という初期の珍しい曲を披露した。ライヴで聴くのは初めてだったが、この日この場所で、そして野外ワンマンを発表するこのタイミングでこの曲をやることは、彼らにとってとても意味のある行為のように感じられた。〈大好きだったあの歌も/今は何故か切なくて/聞こえてくるたび/反吐が出そうだ〉――このフレーズに込められた想いは知る由もない。けど、心なしかその歌は、彼らの何かに対する新たな決意表明のようであった。サークルバンドとしての矜持を持ちながらも、どこまで人を楽しませることができるのか。そのためにバンドを、音楽を、そして自分そのものを、どこまで相手に差し出すことができるのか。内輪ノリで盛り上がっていればそれでよかったサークルバンドの精神は忘れずに、彼らは新たな戦いに挑もうと腹を括った。その決意が、今夜の熱狂を作り出していたのだろう。

スペイン村で彼らが迎える野外ワンマン。それはきっと、彼らにしか作ることのできない唯一無二のメチャメチャ楽しい空間になるだろう。その場所を作り上げるための最初の一歩が、この日だったということなのか。それまで彼らは、今日みたいなライヴをひとつひとつ、積み上げていくのだろう。

文=樋口靖幸
写真=オイケカオリ



【SET LIST】

01 かわE
02 Tank-top of the world
03 KOKYAKU満足度1位
04 Universal Serial Bus
05 ネコ飼いたい
06 DANCE ON TANSU
07 リセットマラソン
08 sweet memories
09 ざつにどうぶつしょうかい
10 無線LANばり便利
11 眠いオブザイヤー受賞
12 ウェイウェイ大学生
13 どすえ 〜おこしやす京都〜
14 ベストジーニスト賞
15 案外わるないNHK
16 メロコアバンドのアルバムの3曲目ぐらいによく収録されている感じの曲
17 反吐でる
18 とりあえず噛む
19 癒着☆NIGHT
20 ヤバみ
21 鬼POP激キャッチー最強ハイパーウルトラミュージック
22 ハッピーウェディング前ソング

ENCORE
01 きっとパルケエスパーニャ
02 スーモマーチ
03 Tank-top Festival 2019
04 あつまれ!パーティーピーポー

ヤバイTシャツ屋さん HP  http://yabaitshirtsyasan.com/



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