【Live Report】
音楽と人LIVE 2019
ストレンジャー イン トーキョー 〜DEZERT 異種格闘3番勝負!〜 ROUND1
2019年10月2日 at 新宿LOFT
「今のDEZERTのライヴをもっといろんな人に観てほしい」。そんな思いから誕生した、弊誌主催のイベント〈ストレンジャー イン トーキョー ~DEZERT 異種格闘3番勝負~〉。その一発目が、10月2日新宿ロフトにて開催された。
トップバッターを務めたのは、この日の対バン相手であるメリー。ではなく、登場したのはガラとアコギを手にした結生の2人だけ。不思議に思う観客に対して「音楽と人〈ストレンジャー イン トーキョー ~DEZERT 異種格闘3番勝負~〉へようこそ!」と切り出したのはガラ。「本当はこういうのDEZERTがやらなきゃいけないんですけど、ああいう子たちなので。僕らが前座として登場しました! 音人には普段から良くしてもらってて、僕たちは社歌も作ったんですよ。ただ、あまりにそれが広まってなさ過ぎるので今から披露します!」。ガラの説明によって観客が納得すると、結生の温かみあるギターが鳴り響き、会場は瞬く間にアットホームな空気に包まれた。曲を通じてガラの弊誌に対する思い入れの強さが感じ取れて、社員としては妙に照れ臭くなってしまう。演奏が終了するやいなや、観客に対して「バチバチに行くんで、楽しみにしててください」とガラが予告し、2人はステージをあとにした。
真っ赤な照明でフロアが妖しげな空間に一変すると再びメリーが登場し、「Friction XXXX」で火蓋を切った。ガラは「メリーファンもDEZERTファンも関係ねえ! 暴れようぜ!」と叫び、初っ端から観客を煽る。とにかく煽る。先ほどまで丁寧に社歌を唄いあげていた人と同一人物とは思えない加熱っぷりだ。それに触発されるかのように、他のメンバーも誰一人として気を緩めることなく「[human farm]」「オリエンタルBLサーカス」「溺愛の水槽」、そしてDIR EN GREYの「Schweinの椅子」のカヴァーを披露した。続く「ジャパニーズモダニスト」では、DEZERTの千秋が乱入。ガラと千秋が肩を組み目を合わせながら唄う場面もあったが、その視線にはお互いへの敬意が滲んでいたのが印象的だった。その後は有り余った体力を全て出し切るように「sheeple」「千代田線デモクラシー」を披露。終始攻めの姿勢を貫き、ブレることなく駆け抜ける彼らの姿には、先輩バンドとしての勇ましさや逞しさが感じられた。
後攻はDEZERT。観客の期待が高まる中、まず鳴らされたのは「みぎて」。メリーとは打って変わって落ち着いた佇まいでありながらも、力強い歌声を轟かせる千秋。その後も「蝶々」「沈黙」「オレンジの詩」といった、このバンドの楽曲の良さを堪能できる構成で、観客を心酔させた。と思いきや、6曲目に披露された「Call of Rescue」からは、ジワジワと会場の熱を上げていくような展開へ。「脳みそくん。」「「遺書。」」そして新曲の「神経と重力」などを披露し、アンコールでは再びガラを呼び込みセッションへ。その前に「ガラさんが出にくいコールで迎えよう」と千秋が提案。千秋の「G・A・R・I!」の掛け声に続いて、観客もガラを呼び込む――が、字面で見ればおわかりのように、「ガラ」ではなく「ガリ」と間違えて呼び込みをしていたのだ。それに対して「ねえ、ガリって誰? 最後がAじゃなくてIだと〈ガリ〉になっちゃうんだけど……」とツッコミながら現れたガラ。思わず爆笑してしまうようなこんなやり取りも、先輩風を吹かせるわけでもなく優しいガラと、敬意を持ちながらも先輩に対して臆することなくぶつかっていく千秋、両者の人柄があってこそだろう。その後、2人で「「殺意」」を唄い会場は熱狂の渦に包まれた。
ラストは、千秋的には〈青臭い〉という新曲を披露。「時計を見ながら作った曲だけど、時計ってやばない? ずーっと回ってんの。あれを作ったのが人間の最大の罪だと思う。時間通りに生きられない人のほうが多いと思うんだ……遅刻っていう意味じゃなくてね。落ちこぼれだったり、遅れていくんだよね。俺も、自分のこと天才かなって思ってた頃もあるんだけど」と自分自身を重ねながら、この曲を作った経緯について打ち明けた千秋。歌詞を全て聴き取ることはできなかったが、〈誰もが同じ歩幅で歩いていけない〉〈自分を愛して 探し出して 綺麗じゃなくていいから〉といった至極シンプルではあるけれど、ダメな自分も肯定してくれるような力強い言葉が並んでいた。唄う人によっては綺麗事として受け取ってしまうかもしれない。しかし、千秋が唄うからこそこの曲は説得力があるのではないだろうか。大人になればなるほど、言葉の裏側にある意味を探して、相手が何を伝えたいのか、その言葉は額面通りに受け取っていいのかとか、一人相撲のようにぐるぐると余計なことを考える瞬間がある。何が本当で何が嘘なのかわからなくなる。だけど、千秋の言葉には嘘がないから、この曲もそうだがどこまでも信じられる気がするのだ。
メリーとDEZERT。両者がやりたいことを追求した結果、見事に対極的な構成となり、まさに〈異種格闘戦〉というイベント名にふさわしい一夜だったのではないだろうか。次の開催は11/7(金)。気になる対バン相手はminus(-)だが、このイベントによってDEZERTが進化していく様にも是非注目していただきたい。
文=宇佐美裕世
撮影=石井亜希