目黒 蓮主演ドラマ『トリリオンゲーム』の続編が映画化。大胆な作戦でビジネスの世界をのし上がってきた“世界を覆すハッタリ男”のハル(目黒 蓮)と“凄腕エンジニア”のガク(佐野勇斗)は、1兆ドルを稼ぐという野望のため、 日本初のカジノリゾート開発事業に乗り出すことに。だが、そんな2人の前に“世界一のカジノ王”の存在が立ちはだかる...! 劇場版ならではの見どころや撮影秘話を村尾嘉昭監督にたっぷり伺いました。
(これはQLAP!2025年1月号に掲載された記事です)
2023年7月期に放送されたドラマの続編を完全オリジナルストーリーで描く劇場版『トリリオンゲーム』。映画化のきっかけや物語の舞台にカジノを選んだ理由を教えていただけますか?
ドラマでは、学生時代の友達であるハルとガクが資金ゼロの状態から“トリリオンゲーム社”を立ち上げ、駆け上がっていく物語を描きました。最終話は、2年後に2人が再会するシーンで幕を閉じたのですが、その時点で映画化したいねという話が出ていて、劇場版を制作することになりました。最終回の直後から始まる物語となりますが、原作を飛び越えたオリジナル展開だけに、脚本作りには正直苦労しましたね(笑)。
劇場版の題材にエンタメ性が高いカジノを選んだのは、ハッタリを利かせながらとんでもないことをしでかすハルのキャラクターとの相性の良さもありましたし、 稼ぎ切った後の2人がさらに上を目指す姿と、まだ誰も見たことがないけれど、近い未来に現実となる日本のカジノの物語を組み合わせることに魅力を感じたんです。もちろん、そういった題材を扱うことには神経を使いましたが、原作の魅力はまさに、エンタメでありながらも現実味があること。現実に起きた話や起こり得る話の中で活躍するビジネス界のヒーローの姿が、徹底したリサーチを経て描かれています。
“自分に正直にワガママに生きる大切さや、信じられる仲間がいる強さ”をこの映画を通して感じてもらえるとうれしいですし、成長したハルがどう動いていくのかぜひご注目ください。
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ドラマに引き続き、主人公・ハルを目黒 蓮くん、ハルの相棒・ガクを佐野勇斗くんが演じています。2人の芝居の印象や、監督が感じるそれぞれの役者としての魅力とは?
ご本人もおっしゃっていましたが、目黒さん自身の中にハルと重なる要素はあまりないらしく、ドラマのときは撮影に入るまで少し苦労なさっていました。でも、リハーサルや撮影を重ねながらキャラクターに寄せていき、みるみるうちにハルになっていきましたね。劇場版ではもう、何も言う必要がないくらい完璧なハルでした。今回特に感じたのは、陽キャなハルと真面目な目黒さんのバランスの良さ。普段はおちゃらけているハルがふと見せる真剣な表情に、目黒さんは自然な説得力を持たせてくれるんです。ハルがピンチに陥ることもあれば、シリアスな展開も待ち受けている劇場版では、それがより効果的に感じられました。
一方、佐野さんは賢くて、お芝居が上手。ハルとのバランスを考えながら、ガクの芝居に強弱をつけてくださっています。天才肌なんでしょうけど、努力も怠らないステキな役者さんですね。観客目線に近いガクがいるからこそ、ハルの型破りな行動を見ている側も楽しめますし。
そして、バディを演じる目黒さんと佐野さんの相性も抜群。ハルとガクのような信頼関係が2人の間で出来上がっているし、兄と弟みたいな雰囲気もあって、撮影中もすごく楽しそうでしたね。
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ハルの永遠のライバルである才色兼備の社長令嬢・キリカ役の今田美桜さんや、ハルとガクを支える心強いサポーター・凜々役の福本莉子さん、ゲームクリエイター・桜役の原 嘉孝くんなど、ドラマで活躍した面々も登場。それぞれの印象を教えてください。
キリカ役の今田さんは圧倒的な美しさと説得力で、今回もキーパーソンとして存在してくれましたね。福本さんの芝居も、相変わらず素晴らしかったです。劇場版ではガクとの関係が少し発展することもあり、堅物なだけじゃない成長した凜々を難なく表現してくれました。桜役の原さんも、独特の雰囲気を持ち込んでくれていますね。この作品のテーマでもある“友情”は、目黒さんと原さん自身の絆ともリンクするもの。劇場版での再共演となったお二人がうれしそうで、僕まで胸が熱くなりました。
また、劇場版には、もちろんトリリオンゲーム社の人たちも登場します。会社が大きくなってオフィスが広くなり、社員も増えてにぎやかになった分、撮影はちょっとしたお祭りみたいになっていました。社員一人ひとりがセリフを言うカットがあるのですが、本当に最高のコンビネーションで。そういったカットがスムーズに撮れるのも、ドラマでの時間があってこそだと思います。
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ハルとガクの“最強バディ”を楽しめる注目シーンや、アクションシーンの裏話もありますか?
ハルとガクのバディ感は、海外を舞台にした冒頭のシーンから感じていただけると思います。初っ端から2人で元気に走り回っていて、アクションが絡んでくるシーンもあるのですが、そこでの彼らのコンビネーションも見どころの一つですね。撮影自体は本当にスムーズで、お二人が完璧すぎて何も言うことがありませんでした。あの相性の良さは、ドラマで苦楽を共にしたからだと思います。連続ドラマは撮影スケジュールがハードだったこともあり、劇場版の撮影では肉体的に大変なシーンでも、「ドラマのときに比べたら全然平気だね」と楽しそうにやっていました(笑)。
そして、ハルのアクションはもう、「カッコいい!」の一言に尽きます。1日にも満たない練習時間だったのに、本番を軽々とやってのけてくれて。そこはまさに、目黒さんの才能ですね。とにかく脚が長くて、ハイキックがすごい。キレイだし、勘がいいし、アクション監督の田渕景也さんも絶賛していました。しかも、目黒さんの場合はアクション中の表情もいいんです。動きに役の気持ちがきちんと伴っていて本当に素晴らしかったので、ぜひ注目していただきたいです。
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ハルのポーカーシーンも見どころの一つかと思います。心理戦となるポーカー対決を描く上ではどんなところを大事にしましたか?
ポーカーのルールに詳しい日本人は決して多くないため、知らないルールのゲームを見てもらうにはどうすればいいのか、ポーカーシーンの見せ方に関してはすごく悩みました。見ながら理解できる演出を意識して、優勢か劣勢か、ゲームの状況をカットごとにきちんと示していくことを大事に撮影を進めていったのですが、目黒さんの繊細なお芝居に助けられた部分も大きいです。“あ、今のハルはピンチなんだな”なんてことが、説明しなくても表情やしぐさを見ればしっかり伝わってくるので。
ポーカーシーンでは、役者さんたちが素晴らしい表情の芝居を見せてくれましたし、目線のやり取りなど、会話ではなく表情で物語っていくのは、ポーカーにおける心理戦そのもの。撮っていておもしろかったですし、いいシーンになった手応えも感じていますので、ぜひ緊張感が走る心理戦の芝居合戦を楽しみながら、ハルの戦いを見守っていただけたらと思います。
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ライバルであるハルとキリカ、そしてハルを支えるガクと凜々の関係にも、それぞれ変化はあるのでしょうか?
2組の関係が変化するのかしないのかも大切なポイントです。原作者の稲垣理一郎さんが言っていたのですが、とんでもないビジネスの話が進む中、ガクと凜々という普通の2人が普通に会話をして、恋愛をすることが大事なんですよね。そんな2人を邪魔するハルがいるわけですが、ドラマのラストで3人がハグをするシーンを撮り終えた目黒さんが、「僕、わかりました。ハルにとって、ガクと凜々は弟と妹なんです」って言っていて。でも、 劇場版では2人の仲をあまりにも邪魔するから、本当にそうなのか?とも僕は思い始めていますね(笑)。ぜひ、ガクと凜々の恋の行方を見守っていただけたらと思います。
一方、ハルとキリカはすごくお似合いなのに、交わることはないのではないかとすら思える2人。ただし、それでも何かを思い合っているのだと感じさせるシーンが劇場版にあり、目黒さんと今田さんといろいろ話し合いました。それぞれが考えるキャラクター像を大事にシーンを 作り上げてくれて、すごくいいシーンになったと思っています。
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最後に、衣装や髪形、小道具などビジュアル面でこだわった部分を教えてください。
新しいハルに一番似合う服を着て、カッコ良く登場してもらいたい。そんな願いから、劇場版のハルのスーツはバージョンアップして、オーダーメイドで作ってもらいました。シックな紫色がハルによく似合っているし、激しいアクションにも耐えられるものになっています。そのほか、タキシード姿のシーンもあり、実は裏地がカジノ柄になっていたりと、細かい部分までこだわりを詰め込んでいますね。
あとは、ドラマのときより後ろ髪が少し短いことにも気付かれるかもしれません。目黒さんを見て、誰もが“ハルだ!”と思う状況はドラマのときに確立できましたから、劇場版では原作のビジュアルから逸脱しすぎない程度によりカッコいいハルを目指しました。スポーツカーも赤から黄色になっていたりするので、ドラマからの変化を楽しんでいただけたらうれしいです。
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文=渡邉ひかる
村尾嘉昭監督
むらお・よしあき/1982年1月24日生まれ、大阪府出身。近年に手掛けた作品は、Netflix『忍びの家House of Ninjas』、ドラマ『リバース』『アンナチュラル』『最愛』など。劇場版『トリリオンゲーム』が映画初監督作品となる。
劇場版『トリリオンゲーム』
(東宝配給/2025年2月14日より全国ロードーショー)
出演:目黒 蓮、佐野勇斗、今田美桜、福本莉子、吉川晃司 ほか
(C)2025 劇場版『トリリオンゲーム』製作委員会
(C)稲垣理一郎・池上遼一/小学館