はい、来ました、こういうの。〈こういう〉に入る言葉が愛すべきおバカなのか、知性のカケラもなさそうな人たちなのか、まぁそこは人それぞれだが、ちょっと待て、意外に〈そういうのだけじゃない〉バンドなのである。2021年、コロナ禍真っ只中に関西で結成され、昨年末にファーストアルバムをリリース。ライヴハウスで話題が広まる現在、間髪入れずに配信EP「最高更新」を発表する22歳のスリーピース、からあげ弁当。一聴すると陽キャ押しの青春パンクのようではあるが、聴き進めるほど見えてくる切ない歌心や一本調子ではない楽曲の幅は、もしかするとこれ、きっかけ次第でポーンと飛躍するんじゃないかと思わせる輝きをまとっている。ギター&ヴォーカルの焼きそば初インタビュー。当然なんでその名前なの、という話から始まるわけだが、見えてきたのはちょっとだけイメージと違うナイスキャラなのだった。
(これは『音楽と人』2024年6月号に掲載された記事です)
焼きそばと名乗る方にインタビューするのは初めてです。
「いやー、二回目やったらびっくりします」
ははは! これは、バンドをやるって決めてから考えたステージネームのようなものでしょうか。
「からあげ弁当は最初から決まってたバンド名で、焼きそばは途中からですね。名前は別に何でもよくて、最初はアーティストネームとかもなかったんですけど。でもUKプロジェクトと組むことが決まって、あらためて『名前どうするの?』ってなった時に、からあげ弁当、みたいなノリで、つい焼きそばって言っちゃったんですね」
みんな好きですよね、焼きそばもからあげ弁当も。それくらい愛されるものになりたいという気持ちがあった?
「……あー、もちろんありますけど、だからその名前を付けたわけじゃなくて。後々になって考えたら、みんなに愛されてる食べ物やなぁ、俺もそうなろうかなぁ、くらいの感じ」
後々考えたってことは、最初、なんでからあげ弁当に?
「それもねぇ……深く聞けば聞くほど浅いんすけど(笑)。ほんまにノリと勢い。親が子供の名前を考えるくらい深く考えたわけじゃない。『バンド名なんて何でもええやろ、からあげ弁当でええよ』みたいなノリで決めちゃったんすね」
それでよかったことと、後悔したこと、それぞれ教えてもらえますか。
「よかったことは、やっぱ話のネタになる。この名前だとどんな人と会っても一発目にこの話になるから。会話はしやすい」
だと思います(笑)。
「あと、悪かった点かぁ。んー……たぶん、聴かず嫌い、見ず嫌い、みたいになる人もめっちゃおるやろうなと思いますね。『名前だけ聞いて、なんか青春パンクっぽいと思ってたけど』ってよく言われますもん。そらそうっすよね(笑)。でもそれもいい意味で裏切っていきたいですね」
確かに、1曲目を聴くとおバカなパンクっぽい人たちかと思うんだけど、5曲を通して聴くと全部違って。
「ありがとうございます。それが一番聞きたかった感想!」
幅の広さは見せたいところなんですね。
「そうですね。ぶっちゃけ言うとまだまだこんなものじゃないとも思ってて。今後アルバムやったりEP作るタイミングが来たら、もっとポップな曲、手拍子が似合うような曲、あとはピアノとかも入れてみたりしたい。よくも悪くもジャンルに囚われへん音楽をずっとやっていきたいなと思ってるから」
ロック一辺倒で来たわけじゃないと。
「うん。最初は男性アイドル聴いてたし、メロディとピアノだけ、みたいな曲とか大好きで。今はエド・シーランもよく聴いてます。正統派のロックだと、ワンオク(ONE OK ROCK)にまず出会って、そこからどっぷりでしたけど」
あの……ワンオクどっぷりでこういうバンドになる?
「あー、確かに。ねぇ? ワンオクなんてカッコよく見せてナンボのバンドで。それに憧れた人たちがからあげ弁当って〈ほんまに影響受けてんのか?〉って話やと思うんですけど(笑)。でも僕はTakaの生き方がめっちゃ好きで、だから逆にからあげ弁当って決めても揺らがないというか」
や、今の「逆に」はちょっとわからない。
「ははは! いや、彼らも昔のアルバムと比べたら今は180度くらい違う音楽やってるじゃないですか。どんな意見があってもやりたいことやってはるし。だから、Takaやとしたらたぶん名前にはこだわらんし、自分の生きたいように生きるやろうな、と思うんですよ。僕もあの人間性に影響されながら生きてるから、だから誰に何言われてももう変える気はないんですね、自分らで考えたこのバンド名は」
あぁ。ウケ狙いとかじゃない。強い意志なんだ。
「うん。ウケ狙いは全然なかったです。俺よう言うんですけど自分らのバンド名が食べ物やとはもう思ってなくて。自分らが作った名前、くらいに思ってます」
新作の曲にも力強い言葉が並んでますよね。「22」にある〈この次はきっと俺の時代だ〉とか。
「うん。もうそのまんまっすよ? この次は俺の時代。次とか言うてられへんのですけどね。今にせないかんのですけど。でも、時代が来るぞー!っていうのを伝える歌詞です」