DOBERMAN INFINITYのヴォーカリストであるKAZUKIこと林 和希のソロ・ファーストシングル「東京」が届けられた。昨年5月にリリースされたファースト・ソロアルバム『I』に続く本作には、東京の街で忙しなく生きる中でふと思い出す、青春時代に対するほろ苦くも温かな感情を唄ったタイトル曲に加え、跳ねるビートに乗せてスムースで艶やかな歌声を聴かせる「Show me what you got」、DOBERMAN INFINITYの楽曲として初めて自身が書き下ろしたナンバーであり、「東京」に通ずるテーマを持つ「Sorry」の3曲が収められている。
自身の根底に流れるオーセンティックなR&Bサウンドを基調に、メロウな夜の情景が浮かぶ内省的な歌たちから見えてくるのは、アッパーなパーティーチューンでパワフルな歌声を聴かせるDOBERMAN INFINITYのKAZUKIとは違った表情をみせる彼の姿。また、あまりそのイメージを持たれていないところもあるが、実はグループ内でトラック制作から作詞作曲まですべて手掛けることのできる唯一のメンバーでもある彼が、ソロ活動を本格始動させるなかで表現したいものとは。シングル「東京」を軸に〈シンガーソングライター・林 和希〉をじっくりと掘り下げてみた。
和希さんは、LDH主催のヴォーカル・オーディション(VOCAL BATTLE AUDITION 2 〜夢を持った若者達へ〜)のファイナリストに選ばれて、それをきっかけにDOBERMAN INFINITYにヴォーカリストとして参加することになったわけですけど、いちアーティストとして作品を出したいという思いはいつ頃から持っていたんでしょうか。
「ソロアーティストとして作品を出したいという夢は、この世界を目指した時からずっとあったんですけど、最初は、いろんなことについていくのがやっとだったというか。慣れることに何年もかかってしまいましたし、まずDOBERMAN INFINITYが大成するために、やっていかなきゃいけないミッションがたくさんあって」
まずはDOBERMAN INFINITYのメンバーとして、結成時に掲げた〈全国アリーナツアー〉という目標に向かって邁進していた。
「はい。そこにまず100%の気持ちで取り組んでいました。ただその間も、日常的に自分用の曲を作ったりはしてたんですよね。なので、いつかそれを世に出したいと思いつつも、まずはDOBERMAN INFINITYのみんなで夢を叶えたいっていう気持ちでずっと活動していましたね」
そして2019年に全国アリーナツアーを敢行し、グループとしての夢を叶えたわけですが、翌年、コロナ禍となり活動が制限されるようになってしまったタイミングで、和希さんは〈歌ってみた〉と題した動画を定期的に公開しはじめましたよね。
「はい。コロナ禍で、グループの活動が止まってしまって……実は、アリーナツアー後にいろんなプロジェクトが計画されていたんですけど、どれも一旦白紙になってしまったんですよね。その時に、いろんなアーティストの方々の歌をカヴァーさせていただいて、その動画を公開していったんです。そこでたくさんの方々に自分の歌をしっかり聴いてもらえたことは嬉しかったし、DOBERMAN INFINITYみたいな熱い楽曲や盛り上げる曲ではなくとも、自分の歌声だけでも勝負できるぞって感覚を知れたところもあって」
動画を公開していくなかで、〈DOBERMAN INFINITYのヴォーカルのKAZUKI〉ではなく、林 和希として、今なら勝負できると自分の中で思えた。
「そうですね。あと、〈歌ってみた〉で自分の歌声が広まったところはあるけれど、曲も作っている身としては、それが自分の曲じゃないっていうのが、ちょっと辛かったりもして」
今回のシングルのカップリングの「sorry」をはじめ、DOBERMAN INFINITYの楽曲も和希さんがいくつか手がけていますもんね。
「はい。だから本来は自分が書いた曲を唄ってそれが広まっていくべきだよなって思ったし。そこもかなり大きかったかもしれないです」
去年リリースしたソロアルバムも、ほぼ全曲の詞曲をご自身で手がけていますよね。
「SWING-Oさんにトラックを作ってもらった〈Wow〉という曲以外は、ほぼほぼ全部自分でやらせてもらって。やっぱり1枚目は何としても自分の力で作ったものにしたいというのがあったんです。まあ、今聴き直すと、〈ああすればよかった〉〈こうすればよかった〉っていう反省点はすごくあるんですけど、とりあえず〈31歳の林 和希〉というものを表現できたのかなとは思っていますね」
ちなみに最初に曲作りを始めたのは、いつ頃になるんですか?
「18歳の時ですね。東京に出て、音楽の専門学校に行ったんですけど、そこで同期4人と一緒にヴォーカル・グループを組んで。いろんなイベントとかライヴに出たいと思ったんですけど、そういうのに出てる人たちは、ほぼオリジナル曲をやってるし、しかもお客さんがお金払って観に来てくれるわけじゃないですか。だからみんなでお金をかき集めて、自分の家に機材を置くことになって。それで必然的に僕が一番機材を触る機会が多かったのもあってか、気づけば自分が曲を作る担当みたいな感じになってて(笑)」
そこから曲作りをするようになったんですね。そのグループではどのくらい活動されたんですか?
「それがけっこうすぐ解散しちゃって。機材だけが自分の家には残ったんですよ、ラッキーなことに(笑)」
ふふふふ。でも、ソロアルバムや今回のシングルはDOBERMAN INFINITYのKAZUKI、というイメージで聴くと、その印象の違いに驚く人も多そうですよね。
「全然違いますよね(笑)」