【Live Report】
a flood of circle presents A FLOOD OF CIRCUS 2019
2019年4月13日 at TSUTAYA O-EAST
4月13日、TSUTAYA O-EASTにてa flood of circleによるロックフェス〈A FLOOD OF CIRCUS〉が開催された。自分たちが根無し草なら、居場所を作ってしまえばいい。そう思い立って2016年にスタートし、3回目となる今回は総勢7組が出演。大熱狂のロックンロールサーカスが繰り広げられた。
メインステージとなるELEPHANT STAGEのトップバターは爆弾ジョニー。キョウスケ(ギター)はかつてa flood of circleのサポートギターを務め、前回のサーカスには佐々木亮介らと共にThe Hosomesとしても出演した経緯があり、その出演を心待ちにされていたバンドのひとつだろう。「骨折れてるけど行けますか!」とりょーめー(ヴォーカル)は、腰の骨折をものともせずステージを自在に動き回り「アメリカンマッスル」ではロマンチック☆安田(キーボード)と共に、腰に巻いたコルセットをネタにしたTV通販風の掛け合いで会場を笑わせる。ピアノのキラキラした旋律と颯爽としたメロディが人懐っこい印象の「キミハキミドリ」では、タイチサンダー(ドラム)が唐突にa flood of circleの「Summertime Blues II」をもじった演説(?)を始めるなど、一番手として存分にピエロ役を務めてくれた。りょーめーが「希望の歌」と言った「HOPE」や、その後メドレー形式で披露された新曲たちはどれも優しさや希望を連想させるもので、バンドの空気がそのまま投影されているようだ。ラストは「キョウスケが作った曲を」と「イミナシ!」を演奏。フロアを巻き込んでの大ジャンプで締め括った。
そしてフロアの上手側に設けられたもう一つの舞台・TIGER STAGEでは黒い衣装に身を包んだ4人組が物々しい雰囲気を醸し出している。彼らの名はTHE KEBABS。佐々木亮介(ヴォーカル&ギター)、新井弘毅(ギター)、田淵智也(ベース)、鈴木浩之(ドラム)によって昨年突如として結成されたロックンロールバンドだ。圧倒的技量による演奏と佐々木のしゃがれ声がマシンガンのごとく襲い掛かる「メリージェーン知らない」や、田淵の獰猛なベースラインが牽引する「台風ブンブン」など強面のロックンロールナンバーがフロアを飲み込む。そうかと思えば、肩の力が抜けたオルタナ調の「すごいやばい」や、思わず口ずさみたくなる懐かしいメロディーの「ピアノのある部屋で」などの意外な面も。俺たち自由しかないぜ?と言わんばかりの振る舞いも楽曲もサーカスの場を体現している様で実に痛快だった。
そしてELEPHANT STAGEの二番手には、THE BAWDIESが登場。タイトなスーツにチェルシーブーツをカッチリ着こなす出で立ちとは裏腹に、そのステージは爆音かつ汗だくだ。1曲目の「NO WAY」からJIM(ギター&コーラス)が大振りなアクションでギターを掻き鳴らし、観客たちを躍らせていく。「YOU GOTTA DANCE」ではROY(ヴォーカル&ベース)が、サーカスを祝福するべく「みなさん打ち上げ花火になれますか!」とジャンプを誘い、フロアを揺らす。陽気なダンスナンバーにおだてられ、すっかりお祭り気分も出来上がってきたところで束の間のMCタイムへ。ROYいわく、実は彼らとa flood of circleはいずれも2009年4月にメジャーデビューを果たした同期とのことで、出会いの場がルーキーとして出演したFUJI ROCK FESTIVALの会場だったことも明かした。ROYは緊張のあまり顔面蒼白で白菜のようになっていたというが、それは横にいた佐々木も同じだったようで、「佐々木くんが僕よりちょっと水気を含んでたんで白菜の漬物みたいな状態でいて……」と観客たちを笑わせた。その後も「HOT DOG」演奏時にスターウォーズのモノマネ寸劇を披露するなど大いに会場を沸かせ、ラストはROYのロングシャウトが炸裂した「TWISTIN' ANNIE」でロックスターぶりを見せつけた。
舞台変わってTIGER STAGEに現れたのは滋賀県出身の若きガレージロックバンド・climbgrow。「よろしくどうぞ、俺たちが日本のロックンロールバンドclimbgrowです!」と杉野泰誠(ヴォーカル&ギター)が一吠えし、裏ぶれたブルース「LILY」で始める。硬質なロックナンバー「RAIN」では闘争本能に支配されるまま、憤りをマイクに叩きつけながら怒鳴るように唄う杉野。まるで狂犬だ。しかし近藤和嗣(ギター)のフレーズがメロウな「SCARLET」では、杉野もセクシーに唄い上げる。決して言葉数の多いバンドではないが「こんなんだから生意気になることが多いんですけど、めちゃくちゃ謙虚にロックしてます」という杉野MCには確かにロックンロールへのリスペクトが感じられた。毎年大晦日に開催されている〈ROCK'N'ROLL NEW SCHOOL〉然り、ロックンロールを継承する若手を巻き込んでいくのもa flood of circle流といったところだろう。
イベントもいよいよ折り返し地点に差し掛かり、賑やかなパフォーマンスが続いていたELEPHANT STAGEの空気を一転させたのは、日本を代表するオルタナの旗手・the pillows。先に登場した2バンドと比べれば、年齢も演奏スタイルも大きく異なる。「おじさん、おじさん、おじいさんでバンドやってます」「今日は50代のロックバンドのテンションの低さを見せつけてやる!」と山中さわお(ヴォーカル&ギター)も自虐ネタで笑いを取るが、演奏が始まれば有無を言わさずロックスターの顔になる。その証拠に「About A Rock'n'Roll Band」のイントロを掻き鳴らした途端、フロアからは大きな歓声と拍手が沸き起こり、続く「Funny Bunny」では、明るくなった照明に照らされた観客たちの顔をぐるりと見渡しながら演奏する3人に、無数の手が伸ばされた。MCでは、バンド結成30周年を記念して制作される映画『王様になれ』のライヴシーンにTHE KEBABSが登場し、書下ろし曲を披露すると発表。集まった観客たちは思わぬ朗報に歓びをあらわにした。こうしてサーカスの出演バンド同士の縁が繫がっていくのも嬉しい。ワンマンライヴかのごとく会場をひとつにしたままバンドを代表する名曲「ハイブリッド・レインボウ」を経て、ラストは「Locomotion, more! more!」をロックに決めた。
そしてTIGER STAGEは最後の出演者へ。タイムテーブル発表以降ずっと「????」のまま伏せられていた最後の一組は、2016年9月から無期限の活動休止をしていたDOES。開催当日の発表にも関わらず、彼らの復活を少しでも間近で目撃しようと押し寄せた観客たちでステージ前はこの日一番の人口密度になっていた。SEが流れると共に始まった手拍子に迎えられ、3人が登場。氏原ワタル(ヴォーカル&ギター)がザラついたギターを鳴らし、森田ケーサク(ドラム)がドスンと重たいビートを刻み「明日は来るのか」で、DOESは蘇った。飛び交う歓声をほしいままに続けた「曇天」では、ブランクを感じさせないザクザクと切れ味の鋭い演奏を披露し、観客たちも狂喜乱舞。MCでは赤塚ヤスシ(ベース)が昨年、爆弾ジョニーのキョウスケと同じくThe Hosomesとして出演した際、佐々木亮介に「DOESで出ろバカヤロー!」と言われたと明かし、「出たよバカヤロー!」と1年越しの応答をした場面には思わずグッと来た。「修羅」から「バクチに踊れ!」と「バクチ・ダンサー」を潔く鳴らし、次の約束がないまま再び彼らはステージから姿を消した。けれどあの場にいた誰もが「バンドっていいな」「またやりたくなっちゃうね」と言った氏原の言葉を信じて待つに違いない。時間にしてたった30分。それでもDOESは死んでいない。そう確信するには十分なステージだった。
まだ外が明るいうちから始まったフェスも、いよいよフィナーレへと向かう。ELEPHANT STAGEは、満を持してこの夜の首謀者・a flood of circleを迎えた。まずはこのサーカスのテーマソングとして誕生した「Flyer's Waltz」を挨拶代わりに投下。夜はこれからだと言わんばかりの「ミッドナイト・クローラー」、次々と拳が突き上がった「Dancing Zombiez」では渡邊一丘(ドラム)とHISAYO(ベース)のリズム隊が、安定感と躍動感を併せ持つ鉄壁のグルーヴで魅せた。続く「Sweet Home Battle Field」では、ギターを置いた佐々木亮介(ヴォーカル&ギター)がフロアに乗り込んで熱唱。「行ってこいテツ!」と佐々木に指名されたアオキテツ(ギター)も、ステージギリギリのところで渾身のプレイを披露する。今までは佐々木がひとりで先陣を切っていく印象だったこの曲のパフォーマンスも随分変わったな、と思う。ソロ活動を通じても磨かれたラップスキルが、歌唱表現にしなやかさを与え、フロントマンが飛び出した後のステージは、リズム隊による守りの場ではなくアオキの見せ場としても機能する。先日発売したアルバム『CENTER OF THE EARTH』について、佐々木は「メンバーに輝いてほしかった」と語っていたが、折に触れてメンバーの名前をコールしたりコーラスを多く取り入れたりと、その思いがステージでも如実に現れているようだ。
冒頭から続いた灼熱のターンを終えると、爪弾かれる柔らかなフレーズに乗せて佐々木がおもむろに話し始める。「毎日最高がいい、でも俺は知ってる。毎日最高じゃない時もあるよね」「行けるヤツは行け。ダメなら休め。いつでもロックンロールを鳴らしておくから」。だから、いつでも戻ってこい。そのために俺は〈A FLOOD OF CIRCUS〉を続けていくから。そう言っているかのようだった。それゆえこの言葉は、会場に集まった観客たちに伝えているようであり、この日の出演者たちに向けての言葉のようにも思えた。そして「ここにいる俺たちの可能性にかけて……。人間は月にだって行ったことあるんだからさ!」と前置いて、オフマイクで佐々木が唄い出したのは「Honey Moon Song」。柔らかなメロディに包まれて、頭に大切な人たちの姿を思い浮かべながら聴き入る。「待ってても奇跡は起きないんで、自分たちで起しにいきます」と佐々木。サーカスも佳境を迎え、感慨もひとしおなのだろう。溢れる想いのままに饒舌になる。「もういなくなっちゃった奴のぶんまで……とか真顔で言うぜ。行こう、新しいもん観に行こう!」と演奏されたのは、4月24日発売の新曲「The Key」。冴え冴えとしたギターが道を切り開いてゆくような力強いナンバーだ。
「The Beautiful Monkeys」で再びドシャメシャモードへ舵を切って、「ハイテンションソング」「美しい悪夢」で本編は終了し、アンコールへ。「今日のお前がサイコーってことにして進んでいこうぜ」と「Center Of The Earth」、そして「シーガル」の2曲を披露。「シーガル」ではキョウスケが乱入し、フロアへダイブするサプライズもあり最後の最後まで観客たちを楽しませ尽くしてサーカスの幕は閉じたのだった。
〈A FLOOD OF CIRCUS〉は、フラッドの居場所としてのフェスからロックンローラーたちの帰るべき場所へと確実に変わり始めた。もしかしたらこれは、ありとあらゆる苦境に立たされても前だけを見続け、その背中で多くの仲間を巻き込んで命を繋がれここまで来たフラッドだからこそできる、ロックンロールバンドへの恩返しの形なのかもしれない。アンコールでは佐々木が、「DOES(復活)という野望が叶ったんで、予言してもいいですか? 絶対帰ってくるんで僕はプリティを待ってます」と、初回のサーカスに登場したgo!go!vanillasのベーシストで、交通事故による怪我の治療のため療養中の長谷川プリティ敬祐へエールを送る場面があった。そう、帰ってくる者のため、共に戦う者のため、そしてa flood of circleのためにサーカスはこれからも続いていくのだ。
文=イシハラマイ
写真=新保勇樹
【SET LIST】
■爆弾ジョニー
01 終わりなき午後の冒険者
02 KEN・KYO・NI・ORA・TSUKE
03 アメリカンマッスル
04 キミハキミドリ
05 HOPE
06 MELODY
07 メドレー(123 356~緑~賛歌)
08 かなしみのない場所へ
09 イミナシ!
■THE KEBABS
01 THE KEBABSのテーマ
02 すごいやばい
03 メリージェーン知らない
04 Bad rock'n'roll show
05 ピアノのある部屋で
06 Cocktail Party Anthem
07 台風ブンブン
08 ガソリン
■THE BAWDIES
01 NO WAY
02 SING YOUR SONG
03 YOU GOTTA DANCE
04 EMOTION POTION
05 HOT DOG
06 IT'S TOO LATE
07 JUST BE COOL
08 TWISTIN' ANNIE
■climbgrow
01 LILY
02 RAIN
03 SCARLET
04 mold Hi
05 ラスガノ
06 風夜更け
■the pillows
01 Rebroadcast
02 Blues Drive Monster
03 MY FOOT
04 About A Rock'n'Roll Band
05 Funny Bunny
06 この世の果てまで
07 サード アイ
08 ハイブリッド レインボウ
09 Locomotion, more! more!
■DOES
01 明日は来るのか
02 曇天
03 KNOW KNOW KNOW
04 三月
05 レイジ ー ・ベイビー
06 修羅
07 バクチ・ダンサー
■a flood of circle
01 Flyer’s Waltz
02 ミッドナイト・クローラー
03 Dancing Zombiez
04 Sweet Home Battle Field
05 Honey Moon Song
06 The Key
07 The Beautiful Monkeys
08 ハイテンションソング
09 美しい悪夢
Encore
01 Center Of The Earth
02 シーガル
※記事初出時、climbgrowの曲名に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。