幕張で締めくくられた彼らの20周年。ステージの4人と会場を埋め尽くすファンがお互いの思いを確かめ合うような光景は今でも忘れられない。そんなライヴの模様を映像化したLIVE DVD & Blu-ray『21st ANNIVERSARY ROCK BAND 2019.01.19 at Makuhari Event Hall』がリリースされる今回のタイミングで、ホリエがファンとの絆を口にしたインタビューをWEB上に再掲載することにした。この時すでに彼はファンへの思いを歌にした新曲「スパイラル」を作り始めていたわけで(現在発売中の2019年5月号インタビューを参照)、それを踏まえたうえで本稿とライヴ映像を堪能していただきたい。
(『音楽と人』2018年11月号に掲載された記事です)
ファン投票+新曲+メンバーが1曲ずつセレクトした計30曲がふたつの作品にまとめられた2枚同時発売のベストアルバム『BEST of U-side DAY-』『BEST of U-side NIGHT-』は、エントリーアイテムとしてのベストというよりも、バンドとファンの相思相愛な関係が見えてくるエモーショナルでコアな作品になっている。ストレイテナーはもともと2人体制の頃からファンというか目の前のオーディエンスに自分たちをおもねるようなライヴをするバンドではなかった。どちらかというと相手を突き放し、自分たちのやりたいことをやりたいようにやるスタンスで戦ってきた。でもそんな彼らとファンの間で培ってきた特別な思いが、このベストには溢れかえっているのだ。ここまで深くバンドのことを愛し、理解しているファンがいることについて、当の本人たちはどう思っているのかを知りたくて、ホリエアツシと話をした。
ファン投票によるベストという企画はどういう経緯で浮上したんでしょうか。
「そもそもベストを出すのはこれで2回目なんですけど、前作はシングルコレクションだったんです。で、あれからオリジナルアルバムは3枚出しているから、今作で新たに選曲に加わってくるとは思ったけど、自分たちで考えだしたらキリがないというか」
難しいでしょうね。
「しかもここまで長くやってると、ある程度空気を読みがちになってくるんで(笑)。〈これは入れておかないとダメかな?〉とか考えてしまう。しかも5年前のベストも『シングルを並べただけでベストではないよね』というファンの声もあったんで、だったらファンに丸投げしちゃうほうがいいのかなって」
昔のテナーだったりホリエくんのイメージからすると、ベスト盤を周年に、しかもファン投票の選曲で出すっていうのは、まず想像できないことで。
「そうかもしれないですね。でも5年前の武道館もファン投票でセットリストを組んだりして、そういうこともあの頃から全然アリになってますよね」
それは自分が丸くなったってこと?
「ていうか、もはや自分たちでは曲のことを語れなくなってきてるんですよ。1曲1曲については語れるけど、ストレイテナー全体の中で曲のタイプについての話だったり、時代時代においてどの曲が一番大事かっていうのはもはや選べなくて。質問でよくあるじゃないですか、『転機になった曲はどれですか?』とか。でもバンドの転機なんていっぱいあるし、時代に限らずいろんなタイプの曲があるし。そういうのを1曲1曲見つめなおしても、どの曲がベストかなんてわかんなくなっちゃうんで」
それだけテナーの曲が自分だけのものじゃない、いろんな人のものになってるっていう感覚が強いと。
「曲がそれぞれの人の思いに染まってると思います」
実際そういうベストになってると思いますけど、自分ではどう?
「例えばこのベストには『TITLE』から8曲も入ってるところとかにそういう感じがします。『TITLE』って当時リリースした時には自分たちの想像していたほどの手応えがなかったんですね。これでバンドが一気にブレイクした、みたいなことは思ってなかったんですけど、後々いろんな人から『あのアルバムがきっかけでした』とかバンドで『コピーしてました』っていう話を聞いたりして、バンドの歴史の中では大きなステップアップのアルバムだったのかなって今は思うようになってるけど、それにしても8曲も入っちゃうのかっていう(笑)」
俺もこのアルバムは思い出深いです。テナーが3人になって、その時のクアトロのワンマンが超良くて。『TITLE』が出て「めちゃくちゃいいじゃん!」って。
「そうだったんだ」
だからこの選曲見て、〈ファンも俺と一緒だ!〉ってちょっと嬉しくなりました(笑)。
「はははは。でも『TITLE』が8曲入ったことによって、惜しくもこぼれた曲っていうのもあって。ベストだからどうしてもバラエティに富んだものというか、あますところなくストレイテナーの魅力を押さえてるものになってほしいじゃないですか。でもやっぱり、そうはなりにくいので」
ファンに委ねるってことはそういうことで。だからそれをあえてやるっていうのは、ファンとの信頼関係がないとできないと思うわけです。
「どこか答え合わせみたいなところはありますよね。でも昔の曲ばっかりじゃなくて、ひとつ前のアルバム(『COLD DISC』)の新しい曲までガッツリ入ってたり。そういうところは本当にファン投票にしてよかったなって思えるところ。あと、〈シンデレラソング〉が入ってくるとは思わなかった」
これは確かに意外。
「だって1人1曲しか選べないシステムで投票してるのに、あえてこの曲を選ぶ人がいることにビックリしますよ。あとはランキングの上位に〈SIX DAY WONDER〉とか〈Lightning〉みたいなピアノのバラードが入ってくるところも意外でしたね」