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BUCK-TICK、素晴らしき舞台を完成させた『異空 -IZORA-』ツアーファイナル。息を呑む情景に観たもの

text by 石井恵梨子

【LIVE REPORT】
〈BUCK-TICK TOUR 2023 異空-IZORA-〉
2023.7.23 at 東京ガーデンシアター



傑作を携えての〈BUCK-TICK TOUR 2023 異空-IZORA-〉、千秋楽公演を見た。以前に彼らを見たのが4月19日、初日の八王子公演だったので、要するに私は、(1公演荒天により延期のため)全17ヵ所19公演を廻ったツアーの、スタートとゴールだけを見たことになる。途中にどんな試行錯誤や微調整があったのか、過程の話はわからない。ただ、はっきりしていたのは、初日と最終日がまったく違うものに見えたことだ。後方に映し出されるスクリーン映像は変わらず、セットリストもほぼ同じであったにも関わらず。


しいて言うなら〈新作お披露目演奏会〉と〈舞台〉くらいに違った。新曲を生で演奏するのがツアーの目的ならば、初日からそれは完璧に遂行されていたと思う。全14曲からなる『異空 -IZORA-』を、約2時間のコンサート用に再解釈。濃厚な昭和歌謡「THE SEASIDE STORY」と異色のシティポップ「無限 LOOP -LEAP-」を隣り合わせたり、本編のハイライト的な位置にある「太陽とイカロス」の手前には、テーマを同じにした「Jonathan Jet-Coaster」を持ってくることで過去曲との関連性を持たせたり。35年間ずっと継続と更新を続けてきたバンドだから、このような構成で見せることができるのだ、という話は初日のレポにも書いている。


そのうえで、何がどう変わると〈演奏会〉は〈舞台〉になるのだろう。5人の呼吸、新曲がどんどん身体に馴染むという慣れの問題は当然ある。ただ、とにかく抜きん出ていたのは櫻井敦司の表現力と演技力だった。


たとえば前半の「さよならシェルター」。ウクライナの現在を想像するところから生まれたこの曲は、ツアーを重ねるごとにはっきりと舞台化していった。櫻井は小さな子供を抱きしめ、安全な場所に逃し、飛び交う銃弾を避けては己も銃を手に応戦する。それらのシーンを唄いながら魅せるのだ。いわゆる振り付けとはまったく違う、本気の入り込み方。最終的にはマイクスタンドが本物のライフルに見える日が来るのだから恐れ入る。こうなると、スクリーンに映る淡い月明かりは、単なる視覚的効果を超えて、どうしても必要な背景になっていく。演出と演劇の違いである。


そこから曲は「Campanella 花束を君に」に続くが、「おとうさん、おかあさん、今夜も雨が降るよ。キラキラ光る金色の雨が……」とMCを挟むことで、今後ウクライナとロシアを飛び交うであろう爆弾のイメージが浮かび上がる。これが「極東から祈りを込めて、こんな歌を聴いてください」といったMCだったら、観客はここまで息を呑み情景に引き込まれていただろうか。本気で演じる。ひとつの事実を美しい夢に変える。虚実を飲み込み物語そのものになっていく。もはや歌を超えた唄い手が、ステージに君臨していた。


さらには中盤の「Boogie Woogie」。デビュー前の日々を切り取った1曲で、ツアー初日、直前のMCは「35年以上前のストーリーを再現する」というものだった。しかし最終日になると、言葉はこうも変わっている。


「いつまで続く……いつまで続くのかな? 死ぬまで? いや、死んでからも。亡霊になってもやってやる。あの子が待ってる! あの子が待ってる!」


懐かしい過去の歌が、終わらない未来の歌になった瞬間。どこまで走り続けても、今後どんな街に向かっても、BUCK-TICKを待ち侘びる我々(=あの子)は消えたりしないのだ。〈ブギウギ! シュビドゥバ!〉という記号的な歌詞が、大切な呪文のようにも響く。他に替えの効かないこの世界観は、肉体が消えて魂になっても残り続ける。そんな力強い宣言をしてくれたのは、作品完成直後の取材で、今ももがいている、生きるのもしんどいと、相変わらず鬱々とした心境を語っていた男、なのである。


櫻井に未来を語らせたのがこのツアーであることは間違いないだろう。そもそも『異空 -IZORA-』はここまでポジティヴな作品だったか、と考えるシーンがいくつもあった。孤独や戦争の歌であっても、それは真剣勝負で表現すれば、やりきることの美しさや尊さを運んでくる。そのうちカタルシスも生まれるだろう。本編のハイライト、死に向かってまっすぐ突き抜ける「太陽とイカロス」で、まばゆいスクリーンに向かい両手を広げた櫻井の、シルエットの神々しさが今も忘れられない。


アンコールは過去曲を4曲散りばめ、再び『異空 -IZORA-』の世界へ。好きな格好をしてお化粧しているだけなのに、顔の見えないみんなが笑う。そんな主人公「ヒズミ」の出口なき告白も、最後、「名も無きわたし」によってゆっくりと浄化されていく。スクリーンには一輪の白い花。途中から静かに花びらが舞い始め、衣装を肩に引っ掛けた櫻井がそれを大きく一振りした瞬間、極彩色の花吹雪が舞台に降り注ぐのだ。この動きも、思えば初日にはなかったもの。いわゆる視覚効果のひとつが、表現者のパフォーマンスと完璧なマッチングを見せることで、素晴らしき舞台を完成させていく。綺麗すぎて言葉も出なかった。これが、スタートとゴールの違い。〈演奏会〉と〈舞台〉の違いなのだ。


このように続いてきた35年目のアニバーサリー・イヤー。締め括りの日がいよいよ近づいてきた。公演後配られていた号外によれば、9月17日、18日の2日間、群馬音楽センターで開催されるのが〈BUCK-TICK TOUR 2023 異空-IZORA- FINALO〉である。一本のツアーでここまで進化するニューアルバムの世界。今なお進化中のBUCK-TICKオンステージ。その最終形態は、いかに。



文=石井恵梨子
写真=田中聖太郎


NEW ALBUM『異空 -IZORA-』
2023.04.12 RELEASE

■完全生産限定盤A/B(Blu-ray/DVD)
■通常盤
■完全生産限定アナログ盤
■完全生産限定カセットテープ

〈CD〉 ※完全生産限定盤・通常盤 共通
01 QUANTUM Ⅰ
02 SCARECROW
03 ワルキューレの騎行
04 さよならシェルター destroy and regenerate-Mix
05 愛のハレム
06 Campanella 花束を君に
07 THE FALLING DOWN
08 太陽とイカロス
09 Boogie Woogie
10 無限 LOOP -IZORA-
11 野良猫ブルー
12 ヒズミ
13 名も無きわたし
14 QUANTUM Ⅱ

〈Blu-ray/DVD〉 ※完全生産限定盤のみ
・「太陽とイカロス」MUSIC VIDEO
・「無限 LOOP」MUSIC VIDEO


〈BUCK-TICK TOUR 2023 異空-IZORA-〉
2023.9.1(金)日本特殊陶業市民会館フォレストホール(旧:名古屋市民会館)※振替公演

〈BUCK-TICK TOUR 2023 異空-IZORA- FINALO〉
2023.9.17(日)群馬音楽センター
2023.9.18(月・祝)群馬音楽センター

〈BUCK-TICK TOUR 2023 異空-IZORA- ALTERNATIVE SUN〉
2023.10.20(金)KT Zepp Yokohama
2023.10.26(木)Zepp Nagoya
2023.10.28(土)Zepp Fukuoka
2023.11.4(土)Zepp Osaka Bayside
2023.11.12(日)Zepp Sapporo
2023.11.19(日)豊洲PIT
2023.12.2(土)仙台GIGS
2023.12.9(土)Zepp Haneda


BUCK-TICK オフィシャルサイト

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