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INTERVIEW
  • #焚吐

憎しみと怒りが渦巻く焚吐の最新作。なぜ今、負の感情を唄わなくてはならなかったのか

text by 金光裕史

いじめ。  
彼の音楽表現は、その過去からの救済と祝福だった。そんな過去を音楽を通して昇華し、多くの人との出会いを通して光に向かっていく。そんなストーリーが待っているのだろうとずっと思っていた。実際、昨年リリースされたミニアルバム『呪いが解けた日』は、閉ざしていた心が開かれ、笑顔を取り戻した喜びがテーマとなっている。  
しかし、そう簡単に過去は消せなかった。  
2月20日、22歳の誕生日にリリースされるセカンドアルバム『死にながら生きたい』には、彼をいじめてきたヤツへのどす黒い憎しみと怒りと恨みが渦巻いている。ポップなデジタルサウンドにも関わらず、聴くのにかなりの覚悟と気力が必要とされる。なぜ彼は今、こんな負の感情に満ちた歌を唄わなくてはならなかったのか。いじめられていた人、そして心にちょっとでも罪の意識を抱えた人に、彼のこの拭えない痛みを感じてほしい。


(これは『音楽と人』2019年3月号に掲載された記事です)



情念と怨念が、ポップな打ち込みサウンドに込められていて、聴くのにかなり気力が必要なアルバムですね。

「いろんな流れがありますけど、デビューから3年の間、スタッフやファンの人たち、多くの方と関わって、その人たちに対して不義理にならない自分でありたいと思ったら、自分をさらけ出して、思い切り弾けなきゃと思ったんです。それが一種の救いになればいいし、僕もそういう音楽に出会って、救われてきたので」

『死にながら生きたい』というタイトルは、矛盾しているんだけれども、焚吐くんの死生観がまさにはっきり現れていますね。

「それがアルバムの大きなテーマですね。〈愛しさ〉と〈憎悪〉って、わりと同居する感情じゃないですか。僕も去年の夏、すごく落ち込んだ時期があって。その時、死にたいけど生きたい、死にたくないけど生きたくない、って、4つの感情が同時に別軸で動いてる感じがしたんですよね。この矛盾した感情を、すべて出してしまいたかったんです」

何があったんですか。

「まあ……いろいろです(笑)。人生で初めて手のひら返しされた経験をしたというか……それがけっこうショックだったんですよ。例えば、自分に厳しいからこそ他人に優しくできる人って、どちらかをなくして、その人のことは語れないと思うんです。矛盾があって当然なのに、なぜこんなに嫌われなきゃいけないんだろう、っていうことがあって」

自分のある面を認めてくれなかった、っていうことがショックだったというか。


「生きててもいいことないなっていうか、すべて終わらせたい衝動みたいなものにかられちゃったんです。それが、中学校でいじめられて、毎日死ぬことしか考えてなかった時期と似てて。うわ、なんかこれ懐かしい感覚だな、と思って」


で、こういういじめられた時に沸き起こった感情が、楽曲に現れた、と。デビュー時からインタビューで何回も出てきてますけど、当時のいじめが焚吐くんの根っこにずっとあるんですね。


「比喩でも誇張でもなく、地面がガラガラって崩れ落ちるような感覚だったんですよ。例えば、ひどい言葉を投げかけられたあと、人間って即時的に泣くのではなく、まず思考がブラックアウトするんですよ。その生々しい感覚が今でも残っていて。これからたくさんの人を音楽で救えた喜びを得たとしても、その過去を忘れたくないし、許したくないんです。いじめを受けたことによって、いじめられた子に寄り添える歌を書けたとて、当時いじめをしてたヤツが偉いわけじゃない。それを乗り越えて歌にした僕が偉いのであって」


そうですね(笑)。

「お前らは、僕が背負った痛みと同じような罪悪感と、申し訳なさと死にたさみたいな感情を抱えて生きていけよって思うし。だから殺したいとか今すぐ消えてくれっていうより、けっこう長生きしてほしいんですよ(笑)」


憎しみが、生きる糧にすらなってると。

「もう消せないですね。あまりにも自分の中で大きすぎて。これを今まで真っ向から曲にしなかったのも、無意識に自分を抑圧していたり、ちょっと逃げてる部分があったんですよ。今回それが形にできて嬉しいです。こういうアルバム出して、嫌われてもいいし、恨まれてもいいから、自分の本心を出さないと、ミュージシャンとしてとかじゃなく、人として次に進めないと思ったんですよ。だから〈嫌われる覚悟〉をめちゃくちゃしました」

でも、音楽やっててよかった!というふうにはならないんですよね。

「ならないですね。僕にとっての音楽は、そういう意味では〈呪い〉みたいなものですから。今までそこから離れようと思ってたけど、そうはいかなかった」

「呪いが解けた日」は訪れなかった、と。

「今は幸せなこともすごく多いし、生きててよかったなって感じる瞬間も日々あるんですけど、手放しで喜べない感覚があるんですよ。いじめられたあの時の感情が、しこりみたいに残ってて。この仄暗い気持ちのまま死んでいくんだろうなって思うし、逆に僕が手放しで喜んで、あの頃の地獄のような思いを忘れちゃうと、あいつの中でも僕が成仏してしまうような気がするんですよ」

あいつ今幸せそうで良かったな……って罪を償ったような気持ちになられるのが嫌だ、と。

「そう。今幸せなんだから、中学の時のいじめも時効だよねって思われたら癪だし、これは絶対に許しちゃいけないなって。あと、大人になったら小さい頃いじめられたことなんてどうでもよくなるよ、みたいな論評をするコメンテーターがいるじゃないですか。ふ・ざ・け・る・な!」

お前にその苦しみがわかるのか、と。

「お前らがそうやっていじめを許して、忘れろよって言ってきたから、そこから生まれた歪みがこっちの世代にまで来てるんだって。あんたたちの世代が、何があっても許すことなく、いじめっ子は死ねっていうポーズを貫いていれば、僕たちはこんなに苦しまなかったはずだ、とも思っていて。だから僕は死ぬまでずっと、いじめヘイトを貫いていきますよ」

僕が抱えてる後ろ暗い気持ちと同じぐらい、お前も自分の行為が間違いだったと認めて、この後ろ暗い気持ちを抱えやがれ!って気持ちでいます

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