2007年以降にリリースされたシングルのカップリング曲を2枚のディスクに集約させた『続B面画報』は、タイトル通り2007年に発表されたカップリング集『B面画報』の第2弾。いわゆるバンドの〈裏ベスト〉的なアイテムであるのは間違いないが、これが思っていた以上にクオリティの高い作品なのだ。バンドの名刺がわりとしての使命を持つ表題曲に対して、カップリングはバンドがやりたいことやそのまま形にする自由な場所であるぶん、バンドの本質が露わになる。つまりPlastic Treeの〈らしさ〉が詰まっている濃厚な作品なのだ。そんなアルバムの取材を本誌3月号で有村竜太朗に行ったわけだが、ここではさらにメンバー全員で本作について語ってもらうことにした。ちなみに3月号の取材後に長谷川正も加えての呑み会が行われ、さらにはナカヤマアキラの誕生日の祝いの場にまで乱入したことは誌面でも触れたが、まさか自分がそこでもインタビューをしていたとは……(記憶ナシ・以下参照)。ちなみにこのインタビューは全員シラフです(笑)。
この作品は以前リリースされた『B面画報』の続編ということですが、そもそも前作に『B面画報』というタイトルをつけた経緯って覚えてます?
長谷川正(ベース)「ひと言で言えばカップリング集なんですけど、カセットテープやレコードの時代にはカップリング曲のことをB面と呼んでいたので、そこからタイトルをつけたんですよ。〈B面〉とか〈画報〉っていう言葉に、アナログ感というかレトロ感があるんで、それってこのバンドには似合うかなと思って」
今回はその続編であると。
長谷川「そうですね。『B面画報』を出してから12年くらい経ってるし、その間にシングルのリリースも結構あり、カップリング曲もだいぶストックされてきたので、このタイミングでもう1回カップリング集を出すことになったんですけど、タイトルも前回を受け継ぐ形にしようってことになりました」
ちなみに〈画報〉っていう言葉は?
有村竜太朗(ヴォーカル)「それは正くんが言ったんだよね? たぶん……『仮面画報』から持ってきたんじゃない?」
長谷川「正解です。『仮面画報』が好きだったんで」
寺山修司ですね。ただ、メンバーの中で世代的に〈B面〉も〈画報〉も知らない人がいると思われますが。
佐藤ケンケン(ドラム)「はい。俺、CD世代なんで(笑)。『仮面画報』も知らないです」
有村「俺はレコード世代のギリ最後のほうだと思うんだけど、〈カップリング〉より〈B面〉っていう言葉に馴染みがあって。レコードのB面ってワクワクするんですよ。意外とA面よりバンドの本質が出てたりするし」
いわゆるカップリング集って「裏ベスト」みたいな言い方もされますが。
長谷川「シングルのカップリング曲って、制作過程だとちょっと冒険した感じというか、実験的に作ったものが多かったりするんだけど、いざできあがってみたものを聴いてみると、タイトル曲に負けない説得力のあるものになってて。そこが面白いところですね」
まさにこれがそうで。カップリング集とか裏ベストって、どこかマニアックだったりコアファン向けっていう印象があるけど、むしろこれをプラの入門編として聴いてもらってもいいぐらいだと思いました。
有村「確かに〈裏〉っていう感じはしないですね。やっぱりシングルの表題曲と同じ時間軸で作ってるからなのか、表題曲と一緒にできた曲っていう感じ。しかもカップリングのほうがバンドっぽい感じもするし」
なるほど。で、この作品でクレジットに名前が一番載ってるのはアキラくんなんですよ。
ナカヤマアキラ(ギター)「あ、そう?」
正くんとアキラくんのクレジットがそれぞれ9曲。次はケンケンで8曲。竜ちゃんは6曲でした。今まで自分の曲が9曲もアルバムに入ったことは……。
ナカヤマ「なかったかもしれないねぇ。でもさ、これって言い方はちょっとアレだけど、いわゆる在庫整理みたいなもんなのよ」
酷い言い方だ(笑)。
ナカヤマ「でも実際こういうのってバンドの意志と関係なくメーカーさんが勝手に出したりすることもあるでしょ? つまりカップリング集っていわばアーカイブの整理というか、倉庫でバラバラに置いてあったものをわかりやすい場所にまとめて保管するようなものなんですよ。で、そうすると倉庫に眠ってた曲がまた日の目を見るわけで。ありがたいし、俺は自分の曲だろうがなんだろうがそういう機会をもらって単純にラッキー…………っていうか、この話ってこないだ呑んだ時にしたでしょ」
え、こないだって……いつ?
長谷川「あぁ、ナカちゃんの誕生日の時だ。竜ちゃんの取材のあと呑んでて、その流れで合流して」
……そんな話したっけ?(笑)。
ナカヤマ「したよ!(笑)。だって『今日は竜ちゃんインタビューでいいこと言ってたけどオマエはどう思ってるんだ』的なこと言い出すから『わかった、じゃあ真面目に話すからよく聞いてくれ』って言ったら、ウンウンって頷きながら俺の話聞いてたよ」
そのやり取りは薄っすら覚えてるけど、どんな話をしたのかはまったく……。
ナカヤマ「ははははは! じゃあその時とおんなじ話をするけど、こっちはアルバムだろうとシングルだろうとカップリングだろうと一生懸命作ってるわけですよ。でも買う人にとってシングルのカップリングなんてもんはそれを商品として成り立たせるための付加価値でしかないというか、オマケみたいなもんだと思うの」
そういう捉え方をする人もいるかもしれない。
ナカヤマ「でもこっちとしては作ったものに愛情があるんだから、こんな機会をビクターさんが与えてくれてありがとう!……っていう話をしたの」
説明、ありがとうございます(笑)。
長谷川「そもそもレコード世代の俺らもB面ってあんまり期待して聴く感じじゃなかったし。でもそのぶん〈お!〉って思うような出会いがあると嬉しいというか」
それこそカップリングの醍醐味だと。
長谷川「でも最近のリリース形態だとシングルも1曲で良かったりするんだけど、そうなるとこういうカップリング集みたいなのはできないし」
しかもこれ、正くんが言ったみたいに〈お!〉って思うような曲だらけになってると思います。
ナカヤマ「全力で作ってるからね。それは表題だろうとカップリングであろうとみんな一緒。そうじゃなかったらこうやって集めてみたところで面白いものにはならないでしょ?」