MAN WITH A MISSIONのニューアルバム『Break and Cross the Walls Ⅱ』が本日リリースとなった。『音楽と人』6月号では、MAN WITH A MISSIONを表紙巻頭で特集していますが、その特集内からトーキョー・タナカへのインタビューをWEBでも公開します!
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普段語ることがないトーキョー・タナカへのインタビューを試みた。筆談によって行われた彼との一問一答は、今回のアルバムのみなならず、被災地への支援活動を積極的に行う彼自身のことや、バンドに対する思いについて、とても有意義な内容を引き出すことができた。彼もまたジャン・ケン同様、自分以外の誰かの存在を強く思いながら、歌を唄っているのだ。以下、編集部で翻訳してお届けします。
(これは『音楽と人』6月号に掲載された記事です)
今回のアルバムはタナカさんにとって、どんな一枚になりましたか。
「カミカゼ・ボーイ(ベース)とジャン・ケン・ジョニー(ヴォーカル&ギター)の2匹がコロナ禍でいろんなことを考えた末に、〈音楽を通して何を伝えるべきか?〉というのを今まで以上に考えて作ったアルバムだと感じています。僕の場合、考えるよりも先に行動を起こしてしまうタイプですが、彼らは世の中が置かれた状況や、ライヴに来れないお客さんに対していろんなことを考えながら作ったアルバムではないかと」
今の答えはタナカさん自身のことというよりも、バンド全体を俯瞰したものですが、常にタナカさんはそういう視点でいることが多いのですか?
「そうですね。我々のスポークスマンはジャン・ケンであり、音楽的なリーダーシップはカミカゼ・ボーイであり、僕はバンド全体を俯瞰だったり客観視する立場にいることが多いと思います。バンドの裏方的存在だったり、時にはユーザー目線で捉えることだったり」
それがバンド内での自分の役割であり、立場であると。
「そうですね。あとバンドマンとして、自分はそれ以上にはなれないだろう、と思っていて。このバンドの10年というのはジャン・ケンやカミカゼが作る楽曲によって確立されたものであり、それに対して自分を主張することがバンドにとって正解なのか……ということを考えると、そうではないのかなと」
興味深い考察です。バンドのフロントマンがここまで主体性を排してバンドを客観視した発言をするのは、もしかしたらタナカさんが初めてかもしれない(笑)。
「そうだと思います(笑)。でも、バンドとして目指す方向が一緒であれば、それでかまわないと思っています。さらに言うと、自分たちが好きなことをやりたいようにやるだけでは、伝えたいことがそのまま伝わるわけではないと思っていて。どう伝えるか、どう見せるか、どう届けるか。そういった術をトータルで考えられるバンドが世に出て行っている印象があるので。ただ、これがバンドではなく〈トーキョー・タナカ〉という1匹のオオカミとして言ってることだったら〈オマエ何を言ってるんだ?〉という話になると思うんですが(笑)」
ソロ・アーティストだったらそうですね。まずは主体性あっての表現ですから。
「自分のやりたいことはそういうことではなくて。それよりもMAN WITH A MISSIONというバンドのトーキョー・タナカとしてやりたいことは、バンドをトータルで見る役割や、バンドを好きと言ってくれるお客さんに対して自分がすべきことで。あと、一番はやっぱりライヴをやることですね。ライヴだけは別物というか、自分が気持ちいいと思うことやカッコいいと思うことしかやってないので」
確かにステージでのタナカさんは、バンドを俯瞰するような冷静さや裏方のようなスタンスではなく、むしろフロントマンとして激しいパフォーマンスを繰り広げている印象があります。
「ライヴになるとスイッチが入るんですよ(笑)。なのでライヴができないことは自分にとってとてもストレスになります」
さらにタナカさんは支援活動などでも人並みはずれた行動力を発揮されています。これについてはどう説明されますか。
「まず単純に、何かあった時にすぐ動くようなバンドマンへの憧れという部分もありますし、あとは客観的に〈トーキョー・タナカが動くことでよりその活動が広がるのであれば〉という、それだけのことでしかないというか。11年前の東日本大震災の時に10-FEETの支援活動の手伝いをさせていただいて、〈10-FEETが動くというのはこういうことなのか〉というのを目の当たりにして、もし自分もそういう立ち位置に立つことができたら、是非それは率先してやりたいと思ったからです」
そういったタナカさんの行動原理はいったいどこから来るものなんだろう?と思っていたんですが、今回のアルバムには答えがあると感じました。というのも、ジャン・ケンさんとお話しして確信したのですが、このバンドは自分たちの欲求だとか不満だとか承認欲求だとか、そういった自分本位の表現が軸にあるのではなく、むしろ自分たち以外の存在に対する思いによって存在していると言いますか。そう言われてみて、タナカさんはどうですか?
「そうですね……まず、我々はオオカミですが、誰か困っている人がいたら助けるのが人間として当たり前でしょ?っていうのがあって」
その通りですね。
「まずそれがひとつ。もうひとつはメンバー全員が思っていることでもありますけど、我々はどこかで常に〈やらせてもらっている〉という感覚があって」
バンドを、ということですか?
「はい。世間に対しても、お客さんに対しても、そういう気持ちがあって」
どうしてなのでしょうか? ここまで大きくなったロックバンドが、そのような謙虚さを今でも持っているのはとても不思議な感じがします。
「それはやっぱり、我々が音楽に助けられた、バンドという存在に救われた、という思いがずっとあるからだと思います。そういった存在に対する憧れや敬意がずっとあって。だったら僕は音楽以外のことでも世の中にできることはやりますし、音楽においては〈ロックってやっぱりいいよね〉〈バンドってかっこいいよね〉って一人でも多くの人にそう思ってもらえるキッカケになるような、シーンにおける中間管理職的役割でありたいというか(笑)」
(笑)つまり、ロックやバンドに対して深い恩義を感じてる、ということですね。
「そういうことになりますね。やっぱり助けられましたから、いろんなロックバンドには」