華やかな祝祭ムード漂うポップなサウンドに、口ずさみたくなるコーラス・ワークも新鮮な、UNISON SQUARE GARDENのニュー・シングル「kaleido proud fiesta」。新しいけど、どこか懐かしい雰囲気もするのは、この曲が、かつてアニメ『TIGER & BUNNY』のオープニングテーマとして書き下ろされた「オリオンをなぞる」の続編のような意味合いもあるからなのだろう。この曲を鳴らして、ユニゾンの物語はまた次のタームへと突入する。変わらないユニゾンらしさはそのままに、まだまだ彼らと私たちは未来を夢見ることができるんだとワクワクするような仕上がりが嬉しい。
ラフでミニマムなアンサンブルに、シンプルかつ良質なメロディが沁みるカップリングの「ナノサイズスカイウォーク」のことや、今のバンドの状態についてもたっぷりと、今回は斎藤宏介と田淵智也の2人に語ってもらった。
(これは『音楽と人』5月号に掲載された記事です)
1年越しとなった、アルバム『Patrick Vegee』のツアーを終えて、今のユニゾンは一体どんなモードでしょうか。
斎藤「そうですね、今は新曲をイベントやテレビ出演でちょこちょこ演奏し始めているので〈新曲楽しい期〉ですね(笑)。ずっとライヴをし続けているバンドなので、変わったところは大してないんですけど、自分で新鮮になれるような何かを探して、自分で勝手に新鮮になりながら活動しています」
田淵「同じくですねえ(笑)。でも『Patrick Vegee』のツアーが終わったので、ようやくニューアルバムの呪縛から解き放たれた感じがしています。そういう意味では次に進んだ感があるかな」
ロックバンドはライヴをやり続けるんだ、という意志のもと、昨年は4本のツアーを行なっていたわけですが、お客さんたちの、ライヴに来るからには徹底してルールを守ろうとする姿勢も、素晴らしかったですね。
田淵「我々はこういうルールでライヴをやっていきましょうっていうのを協議して決めて。そのインフォメーションをしっかりやって、気持ちがちゃんと伝わっているから、ライヴができるんだなというのは思いました。やり方は人それぞれですけど、丁寧に説明すればわかってくれる人はいる。そう考えた時に、やらなきゃいけないことの中のひとつが、なるべく丁寧に伝えましょうってことだと思ってて。〈これをやっちゃいけない〉じゃなくて、〈こうすれば楽しめる〉ってことをアナウンスする。そこは、ここ数年の変化かもしれないですね」
斎藤くんはここ2年、ステージからお客さんの様子を見てどんなふうに感じていましたか。
斎藤「僕らはコロナ禍でライヴがしづらくなってから動き出すのが、わりと早かったし、当時の緊張感はすごかったですけど、〈こういう状況下でもこうすれば楽しめるよね〉ってことを徹底して伝えたり、実践していくことで、今は僕らもスタッフもお客さんもコロナ前と何ら変わりない空気感でやれてるなっていうところはありますね。何ならコロナ前よりむしろ快適かも、と思うこともあるかも」
というのは?
斎藤「人がグチャグチャになってしまうようなライヴが僕はあまり好きではないので(笑)」
田淵「そういう世界がなくなったのは大きいよね」
斎藤「もちろんそういう文化で育っているので、尊重はしてるんですけど。でも今は、一音一声、全部を受け止めてくれる環境があるなと思っているんですね」
なるほど。
斎藤「そういう意味で、楽しめる熱量はコロナ禍前と同じだと思っているし、音楽を楽しむ環境としては個人的にはむしろ悪くないなと思っています。あとステージに立ってる自分から、フロアにいる一人一人がよく見える環境でもあるので、誰に対してライヴをしているのかも見失わないところもあるし」
ユニゾンのバンドとしてのタフさがあらためて浮き彫りになったここ数年だったとも思います。そして今回、自分たちで新しい未来を掴みに行こうとするようなムードが漂うシングルを出して、さらに次に進んで行くわけですが、「kaleido proud fiesta」に関して、制作におけるキーワードなどありましたか。
田淵「これはもう、10年前にアニメ『TIGER & BUNNY』のオープニングテーマとして書き下ろした〈オリオンをなぞる〉の第2弾として正しくあるように、言葉もメロディも書きましたね。〈オリオンをなぞる〉は、タイアップであることとかあまり考えず、普通に曲を作ったんですけど、それが今も、自分たちの名刺がわりの1曲になっているわけで。ということは、その時みたいに、いつも通りの曲作りをすれば、作品に対するメッセージにもなるしバンドとしてのアティチュードにも見えるような曲になるでしょう、と」
『TIGER & BUNNY』への恩義みたいなものがあるんでしょうね
田淵「そうですね。ただ、バンドの金字塔みたいになった曲って絶対に越えられないものだとも思ってるので、それを越えようとして書くのではなく、ただただ正式な続編として聴いてもらえる曲にするために書いていって。僕なりの〈オリオンをなぞる2〉ができたなとは思ってます。まあ、今の作曲技術と編曲技術でやったら、きちんとアップデートされたものにはなるでしょ、ぐらいの感じでしたけど」
イントロのクリーンなギターの音色も新鮮でした。
斎藤「ありがとうございます。音楽が流れた瞬間のインパクトは常に大事にしているし、僕はアニメにあまり詳しくないですけど、自分が視聴者だった時に一番大事なところって何かなと思ったら、やっぱり掴みだから。そこでキラーンとしたギタープレイができたらいいなと思って」
さっき〈新曲楽しい期〉と言ってましたが、斎藤くんが「kaleido proud fiesta」を演奏してて楽しいところは、ずばり何でしょう?
斎藤「曲がいいからじゃないですかね。例えばギタープレイに関して言うと、意味のある1個1個のフレーズすべてが、バチンと繋がって一筆書きみたいになるのが気持ちいいんですけど、そういう〈ハマった!〉って感じが、この曲にもあって。さっき〈オリオンをなぞる2〉って田淵が言いましたけど、10年前にお話をいただいた時は『TIGER & BUNNY』も立ち上げタイミングだったので、どんなアニメになるのかも想像つかなかったし。でもそこで〈オリオンをなぞる〉を書けた田淵の嗅覚の良さってすごいなと思うし、UNISON SQUARE GARDENらしさを作れたとも思っているので。そのきっかけとなった作品に向けて、今だからできるユニゾンの王道を、という気持ちで作ったら、これだけすごい曲ができたっていう。その気持ち良さもありますね」
先日のイベント〈TIGER & BUNNY 2 ‐Precious EVE‐〉では、会場中にペンライトが灯される中で演奏されてましたよね。あの光景はかなり新鮮でした。
斎藤「正直なことを言うと、10年前はああいう状況に戸惑ってたんですけど、こないだはものすごく気持ち良かったですね(笑)」
ああいう場に立つことも含めて、大きな出会いですよね。
斎藤「はい。やっぱり僕らにとっても『TIGER & BUNNY』は特別な作品なので」
田淵「だから〈kaleido〜〉は10年越しに『TIGER & BUNNY』が帰ってきたから、〈みんなでおかえりって言おう! 祝祭だ、イエーイ!〉っていう曲になっています(笑)」
はい(笑)。