The Songbardsの作詞を担うヴォーカルコンビ・上野皓平&松原有志。
彼らの〈作詞力を向上させたい!〉という熱意に触発されスタートしたのが本連載。その名も「The Songbardsの描写探訪」。編集部が独断で決めたお題に沿って2人には作詞に挑戦してもらうわけですが、今回のテーマは〈侍〉に決定。まずは突拍子もないお題に対する2人の反応からどうぞ。
今回のテーマは〈侍〉です。
上野「えっ、侍ですか?」
松原「前回の〈催眠術〉といい、また予想もしないところから来ましたね」
今年の夏ってオリンピックが毎日のように話題になってましたよね。そこで、「侍魂」とか「侍ジャパン」って言葉を耳にする機会もあったじゃないですか。
2人「はい」
でも、実際のところ侍魂が何たるかって大半の人が把握しきれてないと思うんですね。
松原「まあ、そうですね……僕の場合、侍とかは日本史の授業でしか触れてこなかったし」
上野「何を持って侍魂と言えるのかはわからないですね」
ですよね。あと、やっぱりソングバーズのイメージから離れたところにあるテーマで作詞に挑戦していただきたいんです。そのほうが読者の方も見ていて楽しいだろうし。
上野「せっかくですしね」
松原「これを機に新しい扉が開くかもしれない……」
歌詞の登場人物の一人称が〈拙者〉になる可能性もありますか?
上野「ゼロではないんじゃないですかね(笑)」
松原「ちなみに、今回はどんな体験取材ができるんですか?」
日本刀に触れていただこうと思います。武道を通じて、礼儀だったり、己と対峙する強さを学びましょう。
★
というやりとりを経て、体験取材の前に2人が事前に書いてきてくれた歌詞がこちら。侍についての下調べは一切せず、自分の中にある侍像だけを頼りに書き下ろしてもらいました。
【上野】
サムライソウルと叫んでも
あるかもわからぬ我が魂
ついに居場所を見つけよう
言葉ではない真剣を
振りかざして震えたところ
そこがお前の在処だろう
【松原】
ボール蹴るサムライ
ひとを切るさむらい
聞こえる響きは同じでも
みえる文字と意味はバラばら
本当の侍どこいった
探しに行った
★
書いていただいた歌詞ですが、まず上野さんはどんな思いで書かれたんですか?
上野「侍魂が自分の中にはあるのか?って疑念を抱きまして……日常で〈俺って侍魂あるなあ〉って感じる瞬間なんて、早々ないじゃないですか」
そうですね。逆にそう感じる瞬間があったらビックリします。
上野「でも今回の取材で真剣を手にすることで、何かが自分の中に湧き上がってくるんじゃないかなと思って……その期待を込めて書いてみました」
ちなみに、真剣を手にするのは初めてですよね?
上野「初めてです」
松原「僕もです」
取材し甲斐があります。松原さんの歌詞は〈ボール〉って言葉とか、オリンピックを感じる要素もあります。
松原「そうですね。それこそ〈侍魂〉とか〈侍精神〉とかいろんな場面で使われることがありますけど、それによって本来の侍の概念みたいなものが薄くなっている気もして。それを今回の体験を通して見つめ直したいなと思いました」
なるほど。では、真の侍魂が何たるかを学んでいきましょう。