6月4日。豊洲PITで行われたThe BirthdayとTHE GROOVERSの対バンライヴ。誰が呼んだか“巌流島決戦”(笑)。藤井一彦とフジイケンジ。この兄弟の邂逅は、ステージで共演する姿含め、非常に興味深いものだった。そこで後日、このライヴの感想も含め、禁断の(笑)兄弟対談を敢行。彼らの地元、福山と近い街で育った同世代の編集長を司会に、知られざるふたりの過去も含め、赤裸々に語り合った。
(これは『音楽と人』8月号に掲載された記事です)
では昔の話から始めたいと思います。
一彦「子供の頃の話とか絶対面白くないから!」
じゃあ福山市民会館のおたまコンサートの話からしますか。
一彦「え………なんで知ってんの?」
ケンジ「懐かしい。あったなー、それ」
僕、観てますから。
ケンジ「うそでしょぉぉぉぉ!」
一彦「えええええええええ!」
一彦さんはダッシュで、ノイズがケンジさんのバンドだったと記憶してますけど。
一彦「そのバンド名出すな(笑)」
じゃあGAS(一彦が最後期にサポートメンバーだった広島の伝説ハードコアバンド。初期メンバーはBAREBONESの後藤達也)の話からします?
一彦「やめんかい!(笑)」
その話はまた詳しくしますが、先日の対バン最高でした。一彦さんが「中3の時に初めて買ったギター」って、ケンジさんのグレコのテレキャスを指差すシーンにグッと来ました。
ケンジ「あれ、中2じゃないの?」
一彦「あ、中2か! じゃあ中3の時に譲ったのかな?」
ケンジ「そうそうそう。僕は兄貴のおさがりをずっと大事に使ってました(笑)」
一彦「おさがりっていうか、売りつけたからね。1万5千円じゃなかったっけ(笑)」
ケンジ「そう。お正月に俺のお年玉を持っていったの。ひどくない?(笑)」
一彦「でも十分元は取っただろ(笑)。安いじゃんね」
しかし対バンはもちろん、まさかお互いのバンドにゲストで参加するとは思いませんでした。
一彦「俺もケンジも兄弟ってことをネタにされるのが好きじゃなくて、ある程度、距離感持ってたほうがいいだろうと、ずっと思ってたんですよ。でもコロナでこういう状況だし、客が観たいものをやっていいんじゃないか、って。最初、クアトロで企画された段階では、対バンはするけどセッションはどうかな?って思ってたけど、延期が決まってから、自分の中でも、やっていいんじゃないかなって」
ケンジ「グルーヴァーズのステージにあのテレキャスを持っていけたのは嬉しかったですね。あのギター、すげえ喜んだだろうなって。だってあいつも、あのステージで兄貴と立ってたかもしれないわけで」
一彦「俺が売らずに持ってたらね……どうだろうな(笑)」
ステージではチバに「福山の名産品!」と連呼されて(笑)。
一彦「お土産かよ(笑)」
名産品かどうかはともかく、兄貴は広大附属福山高校卒という、地元の名門校出身じゃないですか。
一彦「学校名も出すな!(笑)」
俺の中学の同級生が、高校で一彦さんと同じクラスだったんですけど、ズボンの後ろポケットにデンマンブラシと赤いバンダナ突っ込んで、粋がって廊下歩いてた、って。
一彦「はははは。今日もその赤いバンダナ、持ってる」
ケンジ「俺はその高校に落ちたんですよ。あの挫折感たるや(笑)。凹みましたよ。同じ塾に通ってたんですけど、受かったの、兄貴だけですからね」
ケンジさんはお兄さんのことどう見てましたか?
ケンジ「いろんな気持ちがあるけど、でも、いろんな面で導いてくれた人ですよ」
一彦「歳も離れてないからね」
ケンジ「嫌でも影響される。強引に(笑)。兄貴が中2で俺が中1の時、家にドラムセットが搬入されてきて、部屋でバンドの練習をし始めたんですよ。ウチ、普通の民家ですよ(笑)。俺は隣の部屋だったんだけど、いきなり爆音でRCサクセションのコピーが聴こえてきて」
一彦「田舎だから、街のリハーサルスタジオに入るのって、それなりに上手くないとダメだ、って思ってたんですよ。だからリハスタに入るためのリハーサルをやって(笑)」
ケンジ「ビックリしましたよ。何が始まったんかなって(笑)。あと附属福山はけっこう自由だったから、中学の文化祭でバンドやるのが許されてたんですよ。それを観に行ったんですけど、あのライヴは忘れられないですね(笑)。衝撃的でした」
一彦「RCのカヴァーやった時?」
ケンジ「そう。始まりも、ドラムが最初、ひとりだけステージ出てきて、ビートを刻みだすような演出があって(笑)」
一彦「あれはRCの81年、初武道館を意識してたんだよ(笑)」
ケンジ「あれは俺の中でのウッドストックでした(笑)」
そりゃ自然と兄貴の影響を受けて、楽器やバンドに興味を持ちますよね。
ケンジ「そうですね。そういう意味じゃ、周りよりもちょっと早かったかもしれない」
で、福山にはおたまじゃくしという楽器屋さんがあって。音楽やりたい奴らは、そこにみんな集まってたんですよね。
一彦「おたまじゃくしが一番大きかったかな。学校とか学年違っても、そこが溜まり場みたいになるから、みんな顔見知りみたいになっていくんで」
ケンジ「俺らの学年はめっちゃ多かった。不良の巣窟(笑)」
一彦「そこで知り合った先輩から、自分の知らない洋楽の入ったカセット貸してもらうんよ。俺は長男なんで上がいないから、そういうのを貴重な情報源にしとったけどな(ニヤリ)」
ケンジ「その、お前は楽でええのぉ、みたいな言い方、やめてえや(笑)」
一彦「次男ってそういうもんじゃろ(笑)。生きるのうまいよね、第二子以降は。上の兄がやって怒られることをやんなきゃいいんだから」
ケンジ「でも兄貴、怒られないんですよ」
一彦「コソコソやるからな(笑)」
そのへんが上手いんだ(笑)。
ケンジ「うん。でも兄貴の部屋から聴こえてくる曲を聴いて、これいいなって思うことはよくあった」
一彦「コイツはズルいんよ。例えば俺がビートルズを仕入れてくるとするじゃん? でも〈ブラックバード〉を弾けるようになるのは、こいつのほうが先なんよ」
ケンジ「いやいや、そんなことはない!(笑)」