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  • #マカロニえんぴつ
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マカロニえんぴつの横浜アリーナ公演で見た、あの頃の後悔と音楽に託した希望

text by 竹内陽香

【LIVE REPORT】
マカロニえんぴつ「マカロックツアーvol.11〜いま会いに行くをする篇〜」
2021.05.23 at 横浜アリーナ



マカロニえんぴつのメジャーファーストEP「愛を知らずに魔法は使えない」のリリースツアーは、全公演ソールドアウト。それを受けて横浜アリーナが追加発表、昼公演も加わるという全部盛りで、ファイナルを迎えた(正式には、延期していた6/17の大阪公演をもって全日程終了)。横アリの夜公演は、感染防止対策のため前後左右をひと席空けた状態で行われたが、余分な空席はほとんど見られず、コロナ禍でも多くの人が彼らのライヴを求めていたことがよくわかる。


「生きるをする」で幕が上がったステージ。昼公演を終えたあとだからか、メンバーはアリーナという規模にも肩肘張ることなくドシッと構え、むしろ硬くなっている客席に燃料を投下するように、初っ端からパワフルな演奏が続く。マスク着用、声出しNG。注意事項の多い客席にあった緊張感が少しずつ緩み、音楽に身体を預けられるこの時間を全力で堪能しようと、たくさんの手が挙がり、目を輝かせながらステージを見つめている。「眺めがいいね」の前に、はっとりが「眺めがいいね〜」と言ったのは、曲タイトルに引っ掛けたものではあるだろうが、心からの言葉だっただろう。


ステージ上にはEPのジャケットにあるハートのオブジェが置かれ、メンバーの背後には大きなLEDスクリーンや、「メレンゲ」では雪に見立てた羽が舞う演出もあった。それらはアリーナという大舞台を華やかに彩る一方、その演出にも埋もれない強靭なバンドのリアリティも浮き彫りにしていた。別れゆく切なさが描かれた「恋人ごっこ」や、臆病で怖がりな主人公がいる「春の嵐」。胸の奥がざわつくような哀愁ある曲を、エモーショナルかつ、気持ちよさそうに演奏する4人。はっとりの伸びやかな歌声と、自由でありながら、その歌を力強く支えるような田辺、高野、長谷川のプレイ。メンバー紹介で自らを「ロックスター」と称したはっとりだったが、この3人が隣にいるからこそ、彼はロックスターになれるのだろう。中盤演奏された「mother」は、柔らかくも逞しいサウンドが響いた。これまでは愛情を求めてばかりだったはっとりが、多くの人に愛された実感を持てたからこそ唄えた優しい曲であり、仲間を思い描きながら紡いだ歌。そこには、誰かからもらった勇気や優しさを、今度は目の前にいる人たちへ渡すような温かさが滲んでいた。


しかし、いつまで経っても、どんな大きな舞台に立っても、はっとりには拭えない染みのようなものも残っている。それを感じたのは、この日初披露された新曲「八月の陽炎」だった。〈地平線の向こう 八月の陽炎 きっとずっと十代の自分が居る 見たくない真っ黒のそれに生き先を尋ねてた〉という歌詞が飛び込んでくる。漠然とした不安、愛されたい欲求、恥ずかしさ、焦燥感、追いつけない理想――忘れたくても忘れられない、こびりついて離れない影のような10代の頃の自分の幻影。ラストに向けてテンポが早くなるその曲は、止まれない人生のようで、さまよったまま居場所を見つけられない、いつかの自分が重なるようだった。


でも、あの日の自分を嘆くだけじゃない。客席と一体になってハンズクラップした「ルート16」や、エレクトロニックかつサイケデリックなサウンドに自然と身体が踊った「カーペット夜想曲」。「音楽は生きる希望」「このステージが生きがい」とはっとりが口にしたように、これまでに置いてきた後悔を拾ってくれるような、掬い上げてくれるような、力強さもたしかにあった。漠然と抱えた不安や、あの日に置きっぱなしにしてきた後悔。そういった拭えないものがあるからこそ、はっとりは、マカロニえんぴつは、それを音楽で希望に変えようとしてくれるのだ。最後の「ミスター・ブルースカイ」が始まる。抱えたままの割り切れない感情に〈いつか届け〉と願いを込めた曲が、大きな会場に広がっていく。あの日の思いが音楽に溶け合い、ステージも客席もひとつになる。まばゆい照明に照らされたその景色は間違いなく、生きる希望だった。


「いいお客さんに愛してもらいましたよ」「手放すなよ! 捨てるなよ! 必要なくなったら捨ててもいいけど……あとで取りに戻ってきてくださいね」


アンコールは、そんなはっとりの言葉を残して、最後の力を出し切るように「はしりがき」が演奏された。「はしりがき」インタビュー時、彼はこう話してくれた。


「(「はしりがき」は)16、17の時の自分がこっち側を見てるような気がするんですよね。カッコいいロックバンド像を持っていて、こうなりたいっていうイメージが強くあって。その時期に比べたら今は遥かに満足いくものを作れてるんだけど、どうも過去の理想に引っ張られてるような感じがして」


大切な仲間や愛してくれるお客さんがいる。でもあの頃の自分もどこかにいる。そのどちらも抱えたまま、マカロニえんぴつはまた走り出す。拭えない後悔や恥ずかしさ、人が離れていく寂しさも消えることはない。だから「あとで取りに戻ってきて」と、少しこまった顔ではっとりはお願いしてしまうのだろう。でも、そんな彼だからこそ、誰かの後悔に寄り添い、音楽に希望を託せる。そして強がったり、ウソで自分をごまかしたりできない、そんなはっとりのことがみんな好きだし、これからも全力でおっかけていきたいんだ。


文=竹内陽香
写真=酒井ダイスケ


【SET LIST】
01 生きるをする
02 遠心
03 眺めがいいね
04 溶けない
05 恋人ごっこ
06 STAY with ME
07 春の嵐
08 mother
09 メレンゲ
10 八月の陽炎
11 ルート16
12 ノンシュガー
13 ブルーベリー・ナイツ
14 カーペット夜想曲
15 ミスター・ブルースカイ

ENCORE
01 はしりがき


NEW DIGITAL SINGLE「八月の陽炎」
2021.05.28 RELEASE


Download/Streaming


マカロニえんぴつ オフィシャルサイト https://macaroniempitsu.com/

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