来年2月にデビューから30年を迎えるTHEE MICHELLE GUN ELEPHANT。バンドの記憶を可能なかぎり永遠に残したいという思いのもと始動したプロジェクト〈THEE 30TH〉に呼応した『音楽と人』2025年11月号の表紙巻頭特集に続き、本サイトでもTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTの歩みを振り返ります。これまで彼らが発表したアルバムの記事、11月号に再録したものとは別内容のものを順次公開。第2弾は、セカンドアルバム『High Time』リリース時に行われた、ギター・アベフトシの単独インタビューです!


(これは『音楽と人』1997年1月号に掲載された記事です)
ここんとこ本誌が猛烈に入れ込んでるミッシェル・ガン・エレファントだが、大疾走の傑作アルバム『High Time』を未だ聴いてない奴は早く聴いてくれ。土屋昌已さんに音を渡したら、帰英後FAXで「素晴らしい」との感想が来た。皆、急げ急げ。さて先月号でチバユウスケの「形から入って何が悪い!?」バンド観をフィーチュアしたが、今月は細身+長身+クールに映るギタリスト、アベフトシの登場である。やたら賑やかな性格(笑)のリズム隊と「バンドの顔」チバの狭間で、しかしその長身以上にミッシェルを支える殺気のギター・サウンドを支える彼は、「一匹狼」的な匂いがする。バンドに参加したのも彼が一番最近であるし、「別の個性」に興味を惹かれた私だ。しかし……全く別の意味で、彼もまた紛れも無い「ミッシェル・ガン・エレファント」だったのである。へえー。
全国プロモーション――頑張ってますかね。
「頑張ってますよ、かなり。ふふふ」
おいおい、目が怒ってるよ。
「え? 怒ってないですよ(笑)」
プロモーション・トークの方は。
「うん、結構喋りますよ。ふははは!」
(意外笑)例えば「今回のアルバムはどんな感じですか?」と訊かれれば?
「『最高ですね』」
……。
「それ以外言う事無いしねえ……いやでも、冗談交えて愉しく可笑しくやってますけどね」
言えば言うほど怖いな(笑)。恩に着せるわけじゃないけども、私もこの季節になるとラジオやTVや他誌で「今年の日本のロックを振り返って」「来年の注目株」をやたら訊かれるのですが、その都度『High Time』を堂々プッシュしてます。
「ああ……でもそれは、その通りですよ(笑)」
……あははは。さて今回のアルバムの特徴は何と言っても塊のような質感とスピード感なんだけども、これは個人的に制作前から意識してたとこなのか、偶然なのかという。
「あ、両方ありますよ、曲によってやっぱり。偶然弾いちゃったのもあるし、考えたまんま思ったまんまに出来たのもあるし。極端ですね」
例えば考える方面とはどんな。
「やっぱり音楽の事とか考えますよね。考えないのは、金使う時ですね(笑)。何っも考えてないですね(笑)」
バンドの在り方、見られ方、ポジション等に関してはどうですかね。
「イメージは周りが勝手に作るもんだから、凄い重要な事だけどそこまで気にして……ないですね」
バンド全体のみならず、アベ君個人の見られ方とかはどう? ヴィジュアルも含めて。
「ああ、ヴィジュアル系ですからねウチ!(笑)」
(笑)まあ「ロックは形から」大命題で考えると、確かにミッシェルは立派なヴィジュアル系ではあるけれども。
「やっぱりモッズスーツというか細身のスーツにしても、そうですよね。後はカール・コード。そういう見た目はやっぱり気にしますけどね」
確かに。あれだけ性急なステージ上でカール・コード使うのって、百害あって一利無しだもんなあ(笑)。
「見た目ですよね。自分がやっぱりロック聴いた時に見た目から入りましたからね、どうしても。ギターの選び方だってもう見た目ですよ。形ですよ。色とデザイン」
正しい。ミッシェルに参加したのは一番遅いんだよねえ?
「そうです、2年半……ぐらいですね」
ミッシェル加入前のバンドも、路線的にはパンクもしくはモッズ系だったんですか。
「うーん、モッズっぽくはないっスねえ全然。でも皆ドクター・フィールグッド好きだったから、そういう感じですね」
じゃあ、音楽性はミッシェルとは近かったと。
「大きく分ければ、まあ共通してるところはありますよね。ギター・スタイルがその頃から変わってないスから」
現在のミッシェルに出してない、自分の持ってる世界はどんな感じだろう。
「え、ミッシェルに無くて? 何だろうねえ……ミッシェルに無くて自分が持ってたもの……身長かなあ」
わはははは。オチつけるなよ。チバだと大スモール・フェイセズ及びザ・フー好きでありながら、モリッシーとかにも凄く愛情感じてたりしてて。そういう意外性というかさ。
「ああ、チバと聴いてきたものは似てますからねえ……何だろう……何でも聴くっていうとこっスかね。僕のギター聴くと凄く偏ってそうでしょ? でもね、本っ当何でも聴きますよ。浅く広く。本当に好きなのは深く追求するけど」
「好きは好き、嫌いは嫌い」的な頑固そうなキャラクター・イメージなんだけども、結構そうではないんだ。
「いや、好き嫌いは激しいです。ただ、試したり聴いたりしてから判断するんで――だから最初っから『もうこれは嫌いだから』と理由も無しにはないですね。ちゃんと嫌いな理由があるし、その理由がないと……うん」
過去に試して全く駄目だった例はある?
「えーとねえ……何だろうなあ……パっと浮かばないですね。という事は、結構受け容れてんですね、俺(笑)」
さあ(笑)。出身はどこなんですか。
「広島です。で、バンド演りに東京出て来て――」
しかしおもいきって上京しましたなあ。
「暇だったんですよ、マジで。演る事無いし、働くのも嫌いだし(笑)。高校もまともに行かなかったのに、大学行ってまた勉強するのも嫌だしなあ、なんて。第一、行ける大学無かったしね」
徹底的にマイペースみたいね。普段見てても思ってたけど。
「ああ、それはそうかもしんない」
ミッシェル入るまで東京生活結構長いけども、途中でやめようと思った事はないんですか。
「ないスねえ。働きたくない人だから、嫌な事は演りたくないから(笑)。自分が興味ある事好きな事しか演りたくないからね、極端に言えば。だからウダウダと粘ってたんですよ(笑)。アルバイトもいろいろ演りましたけど、ゴマカしながら適当に演ってて、居づらくなったら辞めるの繰り返しで(笑)」
確かにマイペースだわ。ミッシェル以前はバンマスとかだったんですか、やっぱ。
「いや、俺は人引っ張るタイプじゃないっスね。誰か居て、って方が」
二番手指向、ですか。
「うん、自分がリーダーシップ持って切り拓くとか、自分からメンバー集めてとか、一切しなかったっスね」
それは学習した結果ですか。それとも――。
「もう向かないと思ってて、幼い頃からの経験で(笑)。嫌いなんですよ俺、人の面倒見るの……人は好いんですけどね、自分で言うのも何だけど(笑)。人は好いんだけど、それ見破られるのが嫌なの(笑)」
(苦笑)良い人と思われたくないと。
「いや、良い人なんですよ」
ばはははは。
「良い人と人が好いのは違うじゃないですか。お人好しな部分が……ね、見られると嫌じゃないですか」
複雑怪奇な……という事は、自分がお人好しである自覚はあるわけね。
「ありますよ。優しいっスよ?(笑)。結構、イイ奴」
人好きそうに見えるのはいいじゃん、別に。
「いや! 何かねえ、変なんですよ俺。だからあんまりね、自分の事わかって欲しくないんスよ俺」
……面妖な奴だなあ。
「だから極端言ったら、メシを人前で食うのも嫌だもん。生活感や生活してるとこを見られたくないんです」
「ミッシェルのアベ」と「普段のアベ」を切り離したい、って事ですかね。
「いや、全然分けてないっスね。だけど、家に帰った時の姿はやっぱり違うでしょう。『あ、こいつ家でこういう事してんな』と明らかに見える奴居るけど、僕としてはそれは望ましくないですね」
自分の事を把握してるからこそ、かしら。
「あんまり把握してないと思う。インタヴューで『アベさんって〇〇な人ですね』と言われて『ああ、そういう風に見えてんのか』と思ったり。親は見破ってるでしょうけど(笑)」
(笑)じゃあ他人の事も気にならない?
「俺、パっと見たら他人の事観察しなくてもわかっちゃうんですよね、『あ、この人こういう人だろうな』って。大抵当たりますね。だから俺、他人の事はどうでもいいと思ってるんですよ。『俺は他人の事は何にも言わないから、周りも俺の事はほっといてくれよ』って感じだから(笑)」
他人を信用してないのかしら。
「信用してる人も居ますよ? でも……そんな信用出来る人って少ないでしょう」
うわー、この男に普段実は自分がどう見られてるかと思ったら、背筋が寒いなあ(笑)。
「うははははは」
でもそんな人間が、ミッシェルはバッチリだったんだ。事前情報も何も無かったのに。
「初めて逢った日に初めて音聴いて初めて一緒にギター弾いて――その瞬間『ああ、俺が演りたかったのはコレだなあ』『演りてぇーっ』と思いましたよ」
メンバーに対しては大丈夫だったの(笑)。
「いや、俺、凄くいいと思いましたよマジで。信頼出来る少ない中の人達ですよね」
じゃ凄いラッキーなわけだ。
「うん、凄いラッキーですよマジで(笑)。ミッシェル入ってここまで来たのは、もう本当凄いラッキーですよ」
あら、俺はてっきり「俺がそのうちミッシェルを牛耳ってやる」的な野心満々のクールな人かと思ってたんだけども(笑)。
「全然無い、そういうの(笑)。俺はもう『このバンドでギター弾けてりゃいいんだ』って思うぐらいで。それぐらい『おお!』と思いますからね、演ってて。俺一回信用したらとことん信用しますから! 納得してるからいいんです(笑)」
文=市川哲史
撮影=鳩博
2nd ALBUM(LP)
『is this High Time?』
2025.04.01 RELEASE

・LP1枚組 180g重量盤
COJA-9530 ¥4,950(税込)
https://lit.link/isthishightime
【SIDE A】
01.Baby, please go home
02.brand new stone
03.恋をしようよ
04.リリィ
05.bowling machine (motor pool version)
【SIDE B】
01.笑うしかない
02.blue nylon shirts (from balcony)
03.flash silver bus
04.sweet MONACO
05.シャンデリヤ
アナログ購入者特典 詳細:https://www.thee30th.com/news/159
アナログ購入者特典 応募フォーム:https://columbia.jp/thee30th/analogapply/

『High Time』
・リマスター及びハイレゾ配信
https://lnk.to/hightime
01.brand new stone
02.リリィ
03.恋をしようよ
04.sweet MONACO
05.シャンデリヤ
06.blue nylon shirts(from bathroom)
07.bowling machine
08.笑うしかない
09.flash silver bus
10.キャンディ・ハウス(texas style)
11.スロー
12.Baby,please go home〜wave’33
