〈UKFC on the Road 2025‐15th ANNIVERSARY‐〉が、8月9日、10日の2日間にわたりZepp Haneda(TOKYO)にて開催される。これはUKプロジェクトのレーベル部門とプロダクション部門に所属するバンドが一堂に会する夏の恒例イベントで、今年は2011年の初開催から15年目というアニバーサリーイヤー。この15年を総括するようなラインナップがすでに発表されており、熱い2日間になることは間違いない。
そんなUKFCの開催を記念して、特別企画を実施。初年度に『音楽と人』の誌面で行っていた対談の組み合わせの再現となるthe telephones石毛輝×BIGMAMA金井政人、POLYSICSハヤシヒロユキ×The Novembers小林祐介の対談を2週にわたってお届けします。今だから聞ける話から、UKFCがバンドに与えてくれたもの、そして今年の期待が高まる話まで、じっくりお楽しみください。
※the telephones石毛輝×BIGMAMA金井政人 対談記事はこちら
■POLYSICSハヤシヒロユキ×The Novembers小林祐介
初年度、初日の仙台の打ち上げ会場で、この顔合わせで対談してますが、覚えてますか?
ハヤシ「その日、小林くんがめっちゃ酔っ払って、奇声発してたのはすごい覚えてる(笑)」
小林「あの時、ハヤシさんとちゃんと喋るのが初めてだったんで緊張するって言ってたら、周りから『ちょっと呑んだらいいよ』って言われて。それで、なんかワーってなっちゃって(笑)。あれ以来あんな酔ったことないっす。大反省です」
ハヤシ「あはははは!」
そこで、「ハヤシさんは、戦後最大のヤバい人」という名言が、小林くんによって生まれました(笑)。
ハヤシ「そうそう。あともう1個、小林くんが付けてくれたあだ名があって。『正真正銘のインダストリアル野郎』(笑)」
あはははは!
小林「それも、めっちゃ覚えてます!(笑)。ハヤシさんが、夏にクワガタ捕まえた!って喜ぶ少年みたいなテンションで、『聴いてよ、聴いてよ!』って〈ウィン〉っていう金属系のノイズを携帯で再生して聴かせてくれて」
嬉々として金属ノイズを聴かせるUKFCの長兄(笑)。
小林「周りは〈えーっと〉っていう反応なんだけど、ハヤシさんだけ、『これ、何に使おうかな?』って、本当に嬉しそうで(笑)」
ハヤシ「1年目か2年目のUKFCの、確か福岡だったよね。誰かのシンバルが割れちゃって、それをローディーの人が削って直してたのよ。それ見て、〈この音録っておこう!〉と思ってレコーダー回したんだけど、その姿も小林くんに見られてた気がする(笑)」
小林「そうでしたね(笑)」

UKFCが始まるまで、ポリシックスもノーベンバーズも、あまり複数バンドが出るようなオムニバスイベントと縁のないバンドだったかと思うのですが。
ハヤシ「うん、なかった。周りに似たバンドがいなかったから、意図せず孤立してたというかね」
小林「仮に呼ばれたとしても、異種格闘技風な空気になっちゃう」
ハヤシ「そうそうそう。だから第1回の時、〈こういうのいいな、なんか楽しいな〉っていうのは思って(笑)。あと夏の恒例イベントになってるけど、あんまり夏フェスという感じではないところもいいなって」
小林「わかります! 僕は、UKFCがきっかけで、バンドマンの友達っていいなと思えましたね。あとテレフォンズのみんなは、その前からよく話しかけてくれてたんだけど、僕らが『おお、石毛くん!』って気軽に挨拶できる感じじゃなかったんですよ。でもUKFCがきっかけで、バンドマンの友達がちゃんとできました」
初年度は、〈夏フェスが開催されない土地を廻る〉という裏テーマのもと、仙台、新潟、福岡の3ヵ所で開催され、翌年はその3ヵ所に東名阪を加えた6ヵ所での開催になりました。特に初日の大阪は、東京から5バンドが1台の大型バスに乗り込んで移動しましたよね。車中、テレフォンズがうるさかったと当時聞きましたが(笑)。
小林「うるさかったです(笑)。県境になると騒ぎ出すんですよ。『どこどこに入ったぞ!』って」
あはははは。
小林「やっぱり同じ事務所、レーベルメイトっていうのは独特の関係性というか、仲いいバンドで集まってバスで行くのと違う……なんて言ったらいいんだろ? 普段遊んだり、つるんでるわけじゃないんだけど、親近感持った状態で同じ空気吸ってる感覚があって」
ハヤシ「そうだね、居心地は悪くないっていう。なんかちょっと特殊な感じ。でもあれも初めての経験だったな」
小林「あと洋平くん(川上洋平/[Arexandros]、ヴォーカル&ギター)の『愛してるぜ』っていう絶叫にはシビれたなぁ。もう本当、秒刻みで川上青年からロックスターになっていきましたよね」

そういえば、2年目の初日の大阪では、「愛してるぜ」バトンがありましたよね。
小林「ありましたねえ(笑)」
ハヤシ「その話する?(笑)」
説明すると、大阪のトップバッターだったテレフォンズのノブ(岡本伸明/シンセサイザー)が「愛してるぜ! ファイヤー!」と叫んで、それを受けた洋平くんが「愛してるぜ!」と華麗にフロアに言い放ち、そこからそれぞれのバンドがMCで「愛してるぜ!」を言う流れになりました。
ハヤシ「そう。その日俺らがトリで、もう『愛してる』って言わなきゃ絶対ダメでしょって空気になって。それこそ楽屋で、涼平(長島涼平/元テレフォンズ、ベース)とかが、俺にすごいニコニコしながら『愛してるって言うんすか? 言わなきゃダメっすよね〜』みたいなこと言ってきて! もう、うるせえなあって(笑)」
楽屋エリアでは、3番手のノーベンバーズの小林くんは言わないんじゃないか?っていう予想もあったけど、「そっと耳を澄ましたくなる音量で『愛してる』って言うのもいいのかな」と粋なMCをしたことで、俄然、ハヤシくんも言わないといけない流れになり(笑)。
ハヤシ「そうだよ(笑)。でもさ、小林くんは言えるのよ、やっぱ。ただ自分のニューウェイヴの教科書にそんなのないのよ」
小林「確かに『愛してる』っていうMCは、ニューウェイヴの教科書にはないですよね(笑)」
ハヤシ「そういうのをステージで言えない人たちが表現してる音楽だって、勝手に思ってるから、〈俺がそんなこと言うのかぁ? でも、そういう流れになっちゃってるしなぁ……〉ってすっごい葛藤したし、ほんとイヤだったもん(笑)」
でも、ちゃんとそのバトンを受け取りましたよね。それによって、より5バンドの連帯感が高まったと言いますか(笑)。
ハヤシ「ほんと緊張したよね。なんかもうロボットが言ってるみたいな感じで『ア、アイシテル』みたいな、しどろもどろで(笑)。『愛してる』なんてステージ上で言ったの、あとにも先にもあそこだけだよ」
小林「あはははは!」