WEST.のメンバー7人が全員で主演を務める映画『裏社員。-スパイやらせてもろてます-』。 複合商業施設建設のためにシャッター商店街を取り壊すミッションを受けて商店街に潜入した“裏社員”と、個性豊かな商店街の住人たちを中心に描く、笑いあり人情ありの痛快アクション・コメディーだ。WEST.とは今作が15年ぶりの再会だったという瑠東東一郎監督に、映画の見どころを教えていただきました。貴重な撮影秘話が満載です!
(これはQLAP!2025年5月号に掲載された記事です)
本作はオリジナル作品。監督が映画を作る上で大切にしたことは何でしょう?
制作する上で一番こだわったのは、WEST.7人の絆が伝わる映画にしたいということです。グループですから活動を続ける中で絶対にいろいろと大変なこともあったと思うんです。ジュニア時代から数えたら、皆さん20年近く一緒の時間を過ごしているんですよね。その関係値を役に乗せてほしいということをメンバーには度々伝えさせてもらいました。例えば「ありがとう」「さよなら」という何気ないやりとりだけを取っても、会ったばかりの関係性と10年以上一緒にいる間柄の「ありがとう」「さよなら」というやりとりの雰囲気は全然違いますから。
作品でそういう雰囲気を出したい場合、撮影前にキャストの方たちを含めて食事に行く時間を作ったりして関係値を構築していくことが多いんですが、WEST.の場合はそういった時間を作らずともすでに濃密な関係性が築かれているので、何気ない会話のシーンでもすごく豊かで。
そして、7人とも特に笑いのシーンに関してはすごくこだわりを持っていて、「このシーンはどういうアプローチにしましょうか?」とか「こういうアプローチの方がいいんじゃないですか?」とか一つひとつ丁寧にコミュニケーションを取りながら撮影していきました。観てくださる方を笑顔に、そして元気にする映画になったと思います。

脚本作りで意識したことや、監督から見たWEST.7人の役者としての印象を教えてください。
WEST. 7人の関係性や普段の雰囲気をできるだけ作品に乗せたかったので、アドリブを入れやすい脚本を意識しましたね。アドリブは単に自由ということではなく、ちゃんと役として存在していたら自然とアドリブが生まれて会話が続いていくような脚本の構造、土台を作る事が重要で。虚実が曖昧なドキュメンタリー性を特に意識しました。そういう点においては7人はとても達者でした。
(桐山)照史くんが演じた宴はどんどんツッコんでいくキャラクターなんですが、彼はツッコミが本当にうまい。なので、彼の持ち味が生きるようなセリフ回しを彼にチョイスしてもらっています。(中間)淳太くんと(藤井)流星くんは2人とも川端建設の裏社員役。淳太くんが演じたジンは最初もうちょっとオラついた感じだったんですが、淳太くんが演じることで品が出ましたね。笑いだけでなく、2人は不器用ながら胸に熱いものを秘めている部分をしっかり表現してくれました。
阿川建設の裏社員役の照史くんと神ちゃん(神山智洋)と濵ちゃん(濵田崇裕)のバランスもすごく良くて。とぼけた感じの神ちゃんとひょうひょうとボケる濵ちゃんに照史くんがツッコむっていう、WEST.にしか出せない絶妙に心地良い空気が流れています。
商店街の住人役のシゲちゃん(重岡大毅)と小瀧(望)くんは熱い友情の部分を担っているんですが、彼らが積み上げて来た年月、経験がにじみ出た良いシーンになっています。実力、人間力を兼ね備えた2人だからこそですね」。



コメディーシーンでこだわったことはありますか? 監督のオススメシーンも教えてください。
コメディーのテンポ感っていうのは大事に撮影していきましたね。コメディー作品でしっかり笑えるシーンが細かく良い形で盛り込めると、一気に感動するシーンにいっても照れ臭くならずにスッと入り込めるんですよ。笑うことで心が緩み、伝えたい感情がストンと落ちやすくなる。WEST.の7人はそのあたりも絶妙にうまく表現してくれるんです。
オススメのシーンを挙げると、淳太くん演じるジンがビンタを受けるシーン。7人がわいわいアイデアを出してくれて、みんなでゲラゲラ笑いながら現場で作り上げて。彼らの中にしか生まれない空気が本当に心地良かったです。ピュアで真っ直ぐで、シンプルにおもしろいモノを作ろうとする時間がとてもクリエイティブでステキでした。

アクションシーンの撮影はいかがでしたか?
WEST.のメンバーはこれまでに、そこまでアクションシーンの経験がなかったらしいんですが、今回はがっつりやらせてもらいました。難易度の高いアクションシーンを盛り込みましたが、けっこう苦労しながらもむちゃくちゃ良いものになっています。全員すごく動きが良いです。キレもあるし動きがカッコいい。そして熱量が高い。
神ちゃんは美しく舞うように戦うし、濵ちゃんはそもそも運動能力が高いということもありますが、動きが軽やかでキレがある。『濵ちゃん、めちゃくちゃアクションうまいやん!』って思いました
文=小松香里
瑠東東一郎監督
るとう・とういちろう/1979年3月20日生まれ。関西テレビのバラエティー番組からキャリアをスタートさせ現在はドラマや映画の演出を多数手掛ける。近年の作品は映画『Gメン』、ドラマ『ビリオン×スクール』、『マイダイアリー』など。
『裏社員。-スパイやらせてもろてます-』
(松竹配給/5月2日より全国ロードショー)
出演:重岡大毅、桐山照史、中間淳太、神山智洋、藤井流星、濵田崇裕、小瀧 望 ほか
(C)2025「裏社員。-スパイやらせてもろてます-」製作委員会