玲央さんがいなかったら、僕は今ここまでやれてないと思う。lynch.を20年やれてることに対する恩義、それはずっと変わらないかな
それを条件にしたのは?
「デスゲイズにいた時、曲を思うように作れなかったのが自分的に悲しかったんですよ。そしたら『そのつもりだよ』って言ってくれたんで」
で、晁直くんにも声をかけ、lynch.が始まったと。そこで具体的な展望ってありましたか?
「や、何も見えてないです。当時バンドのことは玲央さんが考えてくれてたんで」
はははは。
「だから当時の僕としてみれば、〈なんでだろう?〉って疑問に思うことが多くて。例えば雑誌の取材を全部断るとか」
あえてね。
「そうそう。雑誌で名前を売ってナンボみたいなバンドが多い中、逆に取材を受けないバンドが口コミで話題になるほうが目立つというか。僕は若造でそういう意図がわかってないから、〈雑誌に載りたいのに……〉みたいな(笑)」
あはははは!
「あと、みんな事務所に入ってるのにlynch.は入らないのも謎でした。で、聞いたら『自主で地道にやっていったほうがいいと思うんだよ』って言われて。〈事務所とか入りたいのに〉って(笑)」
世間知らずだったんですね(笑)。
「曲に関しては自由にやらせてもらったけど、最初の頃はよく怒られてましたよ。『いつもすみません』ってメールで謝ってたな」
例えばどんなことで?
「いろいろですよ。覚えてるのは……打ち上げで片膝立てて呑んでたら怒られて」
礼儀作法がちゃんとしてる人ですからね。
「とにかく人として筋を通すことの大切さ、みたいなものを玲央さんから学んだ気がします。例えば……バンドのことで何かアイディアを思いついたとして、それをメンバーに言う前にブログに書いちゃって『相談もなしに書くな』って怒られたり。もちろん今はそんなことしないけど、当時の僕はバカだったんで(笑)」
イノセントってことにしておきましょう(笑)。
「でも楽曲に関しては、当時から自由にやらせてもらってました」
今回の作品って、その頃書いたものがほとんどですか?
「ほぼ全部、その時に作った曲です。ディスク1とディスク2の曲は、2005年までに出してますね。たぶん〈ここで頑張れば売れるかもしれない〉って気持ちだったんじゃないですかね」
だからといって売れることを意識した曲作りをしていたわけでもなく。
「全然考えてないですよ。今振り返るとヤバいヤツですね(笑)」
どれだけ無邪気なんだ(笑)。
「自分がカッコいいと思うものを信じる力はめちゃめちゃ伝わってきますけど、これで売れようっていう意志がまるで伝わってこない(笑)。打算的なものが何もない」
それでも玲央くんからは何も言われることなく?
「そう考えると、ありがたいですね。それぐらい僕のことを信じてくれてたっていう」

そんな当時の自分になんて声をかけてあげたいですか?
「まぁ……『そのまま頑張れ!』ですかね(笑)」
当時の玲央くんと葉月くんの関係性って、今とはずいぶん違いますよね。
「全然違いますね」
少しずつ変わっていく中で、自分の発言力とか存在感みたいなものが大きくなった時期っていつだと思います?
「たぶんですけど、ある時期から玲央さんのスイッチが切り替わったんじゃないですかね。最初は〈こいつは俺が育てなきゃ〉みたいなモードから、〈葉月が言うなら任せよう〉みたいに思ってくれたタイミングがあるというか。たぶんけっこうあとだと思うけど。結成して10年ぐらい?」
個人的には「EXODUS-EP」を出した頃から、葉月くんがバンドを背負うようになった印象があります。
「2013年か。ちょうどそうですね。〈EXODUS-EP〉ぐらいから、〈こうすればこうなる〉みたいなことは経験値としてイメージできるようになった気がする。若い頃の勢いとか純粋さだけじゃなく、ちゃんと理論的に物事を捉えたり説明できたりするようになったのもその頃で。で、任せてもらえるようになったのかもしれない」
初めて取材したのは2011年だけど、あの時のインタビューは、全然ダメだったから。
「え、けっこう自信あったんだけどな(笑)」
カッコばかりつけて、中身がスッカスカのことしか言えなくて(笑)。
「当時からけっこう考えてはいたんだけどな。それこそインディーズ時代から〈インタビューはこうするもんだ〉みたいな」
どうせ形からでしょ?
「そんなことないですよ。〈まずはあえて否定から入ってみたほうがいい〉とか」
やっぱり形からじゃん(笑)。
「そうか(笑)。でも可愛いじゃないですか」
じゃあ今でも玲央くんとの関係性において、変わらない部分はありますか?
「あるかな……全然思いつかないけど」
同級生とか同い年で組んだバンドじゃなくて、それこそ出会った頃は憧れのバンドマンだったわけで。先生と生徒とか親と子とか、そういう関係っていくつになっても変わらなかったりするのと同じで。
「あぁ……それで言うと、ちょっと綺麗事みたいで嫌なんですけど、やっぱり恩ですよね。〈僕と一緒にやってくれてありがとうございます〉っていう気持ち。もちろん玲央さん以外のメンバーにもその気持ちはあるけど、一番デカいのは玲央さん。やっぱりきっかけの人だから」

今の自分がいるのは彼のおかげだと思います?
「玲央さんがいなかったら僕は今ここまでやれてないと思うんで。lynch.が始まったきっかけもそうだし、それを20年ずっとやれてることに対する恩義は感じてて。そこだけは変わってないのかな」
その言葉を聞けてよかったです。でも今回、葉月くんの昔話を聞いて思ったけど、もし玲央くんと出会うことなくバンドをやってたら、千秋(DEZERT/ヴォーカル)みたいな傍若無人なヤツになってかもしれないですね。
「あ、それはほんとそう。彼は玲央さんと出会わなかった僕ですよ(笑)」
はははははは!
「だから彼と話してても、すごく気持ちがよくわかるというか。ヴァイブスが合いますね」
それこそ人によっては恩義を忘れたり、自分の立場でしかものを言えなかったりするわけで。でも20年経ってもそうならないところが、葉月くんのいいところ。
「ありがとうございます。そういうことを言われると恥ずかしいです(笑)」
最後に、無邪気だった当時の自分を愛おしく思えますか?
「そうっすねえ……ひとつあるとすれば、好きなものに対しての熱がすごくあるところですかね。そこは自分のことですけど評価しますね」
その気持ちは今でも大事にしてます?
「そこが一番大事だなって思う。好きって気持ちこそが才能なんだなって最近思います。好きだから歌のことも曲のこともずっと考えるし、鍛錬もするし。で、そこまでやってない人とどんどん差がついていくわけで。そういう力は、20年前の葉月さんにも、すごいありましたから」

文=樋口靖幸
RETAKE ALBUM
『GREEDY DEAD SOULS / UNDERNEATH THE SKIN』
2025.04.30 RELEASE

[DISC 1:CD]『GREEDY DEAD SOULS』
- VERNIE
- QUARTER LIFE
- 矛盾と空
- 59.
- らせん
- REW
- SLEEPY FLOW
- UNKNOWN LOST A BEAUTY
- DISCORD NUMBER
- ラティンメリア
- PULSE_
[DISC 2:CD]『UNDERNEATH THE SKIN』
- THE WHIRL
- ALIEN TUNE
- MELT
- LIZARD
- ABOVE THE SKIN
[DISC 3:CD]『GOD ONLY KNOWS』
- GOD ONLY KNOWS(新曲)
- A GRATEFUL SHIT
- STUCK PAIN
- STARZ
- 無題
- DIZZY
[DISC 4:Blu-ray]
・GOD ONLY KNOWS(新曲)MUSIC VIDEO
・GOD ONLY KNOWS(新曲)MUSIC VIDEO MAKING
XX act:5 TOUR’25「UNDERNEATH THE GREED」
5月15日(木)札幌Bessie Hall
5月16日(金)札幌Bessie Hall
5月18日(日)青森Quarter
5月20日(火)仙台darwin
5月30日(金)福岡DRUM Be-1
5月31日(土)熊本B.9 V1
6月5日(木)名古屋ElectricLadyLand
6月7日(土)高知X-pt.
6月8日(日)岡山IMAGE
6月13日(金)長野CLUB JUNK BOX
6月15日(日)新潟GOLDEN PIGS RED STAGE
6月20日(金)Spotify O-EAST
XX act:6 lynch. Presents「BLACK BEAUTY BEASTS」
9月15日(月)Zepp DiverCity(TOKYO)
9月21日(日)なんばHatch
9月27日(土)名古屋COMTEC PORTBASE
XX act:7 「LIMITED 3 DAYS」
10月13日(月)Spotify O-WEST<MEN’S ONLY>
10月14日(火)Spotify O-WEST<WOMEN’S ONLY>
10月15日(水)Spotify O-WEST<SHADOWS ONLY>