滝 善充 Interview
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滝さんにインタビューさせていただくのは、昨年の日比谷野音ライヴの前にやらせていただいた時以来なのですが。
「えぇーっと……なんか思い出せない(笑)。記憶がぽやーんとしてますね」
ケガとかがあって今期はダメだったけど、来期に向けて絶対にいい曲を作る、と。その勢いは溜めてるし、実際できてると。
「あ、やっぱりそれを話してましたか!(笑)」
(笑)そうそう。だからこのインタビューは、やっぱりそこから聞かないといけないんですよ。
「そうなんですよ。今回のアルバムの曲で野音以前にフルオケがあった曲が何曲かありますけど、すげー明るく聴こえるなぁと。で、野音以降の曲は、わりと重たい感じの曲になってるんだなぁって、あとから聴くとそんな気もする、そんな出来事でしたね」
野音のライヴ自体は、覚えてますか。
「野音は……もうあんまり覚えてないです。どういう状態だったのか、あまりわからないんです。2014年の末のライヴで骨折したけど、調子も戻ってきて、〈よっしゃいくぞー! 次のアルバムすごいものにするぞ!〉っていうテンションですごい勢いで曲書いて、〈次の野音絶対いいライヴにしてやるぞ〉ってやたらめったら練習してみたいなことをやってたところで、結局倒れてしまいました。それからはシンセサイザーも投入しながらライヴをやったけど、結局は一旦ライヴを休もうっていうことになり、現在に至ります」
ハタから見てても、やはり最近の9mmは危うい感じがしていました。
「そうですね、自分自身、骨折してからは正直ずっと辛いなっていう感じでしたし。まあ野音で事故ったことと、アルバムを作るぞってなったことと、もうどっちが先だったかはわからないですけど、去年の夏以降は実家に帰ってけっこう休んだりしてて。実家になんと父と一緒にちっちゃいスタジオを作りまして」
おお、やっぱりお父さんもそうなんですね。何でも自分でこしらえちゃう(笑)。
「そう、なんでも手作りのDIYハウスなんで、滝家は(笑)。そのスタジオは去年の3月くらいからちょこちょこ作ってて、ちょうど野音で事故った直後くらいに完成したんです。ちゃんと防音してたのもあったので、そっからドラムも入れてアンプも入れて、レコーディングもできるようにプロフェッショナルな機材を入れて、みたいなことで、アルバムの続きを作っていったんですけど。まあ自分のスタジオって楽しいんで、いるだけで元気になるというか。……それでもギターを弾き過ぎたりしないようにとか、休むことも気にしながらやってました。そこでのんびりマイペースになれたっていうのが、また良かったかなと思って。マイペースって言ってもけっこうバキバキにやってましたけど (笑)」
ようは滝さんのペースだ(笑)。
「はい。やっと自分のペースが戻ったなって感じで。自信失くしてる状態と、次に向けて自分のペースでいろいろなことができたっていう状態と、どっちもある1年間でした」
さっき卓郎さんにインタビューしたんですけど、本人としてはそんなつもりはなかったけれど、バンドをやめる、休止するっていう選択肢があってもおかしくない状況だっておっしゃってたんですけど。
「そうですね。普通は活動休止する、という選択が行き着く先だったんだろうと私も思います。本当に自信を失くしてた時期だったし。でも、アルバムを完成させたいという気持ちが大きくあり、できる、と思ったんです。休養を発表する前はみんなですごい考えて、話し合いして、だからこそアルバムに対する迷いはなくなったかなと思います。こうなったらアルバムを全力でやるしかないかなって。実際けっこう頑張りましたし(笑)」
じゃあ、9mmを脱けるっていう発想はなかったですか。
「それはないですね。だったらバンドごと一回休止したほうがいいんじゃないか、と」
良かった。勝手ながらけっこう本気で心配してたんで。
「すみません、ご心配おかけしまして。ライヴは休んでもできることはやる。前に言ったかもしれないですけど、デビュー当時は『バンドの目標なんですか?』って聞かれて、大した目標なんてないよって思っていたから適当に『バンドを続けることです』って言ってたんです。でも本当にそれがバンドを続ける最大の目標なんだと思えてきて。いつの間にか本当の目標が『バンドを続けること』になってるなと」
うん。
「それは、心の底から思います。だからバンドをやめるってことは発想のどこにもないし、できることはなんだってやる、手段は選ばん!くらいの感じであった気持ちの結晶かな」
それがこのアルバムである、と。
「そうです。やってやったぞ感はけっこうありますね」
実際、その意気込みに足るアルバムができていると思います。バッキンバッキンですね。
「ありがとうございます。もうバキバキです(笑)」
そのバッキンバッキンに凶悪なサウンドの曲なのに、卓郎さんから湧き出てきたのは非常にセンチメンタルでイノセントな歌詞で。これこそ9mmだな、と。
「そうですね。これぞ9mmだっていうところが逆に見えやすくなったのかなと思います。実は、内容的には今まで作ってきた曲の何倍難しいんだかわからないくらい演奏内容が難しいんです(笑)。まったく新しいものを作ってしまえ!って思って作ったけど、できあがってみると〈これぞ9mmですね〉みたいな気持ちに私も今なってますね」
なるほどねえ。これ、9mm初登場の時の衝撃に近いんですよ。曲と詞、このアルバムの聴き応え。
「あ、わりとそう思ってくれる人がいるらしくて。卓郎も『みんな〈Termination〉を初めて聴いた時みたいな気持ちになるんじゃないか』みたいなことをライヴのMCとかで言ってるみたいで、自分もそんな感じだなって思います」
その卓郎さんの歌詞についてはどう思います? リスナーとしちゃあ非常に泣けるもので。
「泣ける感じです。歌詞に対してもいろいろ話してて、私からのイメージで曲にいろんな時代とかいろんな設定を置こうって。それぞれの時代においてのうまくいかないこと、喜び悲しみ、みたいなことが歌詞になっていればいいなってところを伝えたんですね」
ああ、卓郎さんもそこ、おっしゃってました。
「卓郎もいろいろそこで考えてきてくれたし、〈こうきたか!〉みたいなふうにも思ったし。〈こうきたか!〉ってやつは2曲目で」
「Story of Glory」。
「はい。これもある程度イメージがあって、〈青春、メロディックパンク〉みたいなことを伝えてたんですけど、完成した歌詞を見ると、青春を謳歌してる若者みたいな歌詞じゃなくて、青春を思い出してる私たちくらいの世代のやつらの気持ちを唄ってるなって。で、自分のことがいつもよりもガンガン出てきてるんじゃないかなって思って。だからすごいズシンってくるところもあるし」
「Story of Glory」って剥き出しのタイトルがまずいいですよね。
「すごいですよね(笑)。だから〈青春だ! メロディックパンクだ!〉って思ってた者としてはタイトル見た時点でイメージバッチリじゃんって思ったけど、中身はちとひと癖つけてきてるなって。思い出してる青春で、そこで〈終われない〉って書いて次に繋がる部分を見せてくれるのはいいですね。やっぱり心にくるものはありますよね、さすがだなって思う。これを聴いてるみなさんは曲だけの歌詞のない状態を聴くことはないけど、もともとは歌詞がなかったものに歌詞をつけるってことなので」
滝さんにとってはそうですよね(笑)。
「歌詞の入ってないものを何十回、何百回と聴いて作ってきて、歌詞がつく瞬間とか今でもやっぱりドキドキしますけど、でも今作、卓郎の歌詞を見ただけで〈これ完全にハマってるな〉って部分はなんとなくわかって。私が曲を作ってた時点から、〈実はもう入ってたんじゃないか〉っていうくらいの歌詞もあるし」
滝さんの作る曲はこういうものを引き出す曲なんですよ。驚かせて、興奮させて、センチメンタルにさせるんです。
「いやぁ……どうでしょうね。自分ではわかんないですね(笑)。逆にまとめてもらってるかなっていうところもあるし、広げてもらってるかなっていうところもあるし」
ともあれ、未来は少し広がりましたね、このアルバムで。
「そうですね、未来は広がってるなって感じはしますね」
これができなかったらちょっと危うかった。
「そういうことだと思いますよ。これを作って……ロックバンドだとよく言われる話なんですけど、アルバム作ってツアーまでやって完成だ、みたいなことをよくみんな言うじゃないですか」
引っ提げて、なんて言いますからね。
「うん。ただ俺はここで完成させておかないとダメなんです。リリースの時点で自分がやり切ったって思える状態に持ってかないといけないなって思ってたから」
ライヴを休養している今、滝さんがやるべきことはそれだと。
「そうです。私はライヴを休養してるけど、武田さん(武田将幸/HERE、ギター)がサポートで入って、メンバーがアルバムの曲をライヴでやってくれたら、また新しいものが見えるだろうし。バンドの未来ってそこにしかないと思います。曲を作って演奏していくこと以外に未来はないので、そうやって今はやっていけたらいいなと」
ただ、やっぱりステージに立つのは滝さんであってほしいと思うんです。もちろんサポートの現在の貢献は素晴らしいけれど、9mmのギターはやっぱりあなただと思う。
「リハビリを兼ねてできることをやってます、今の私の腕の状況ではそっからかなって思うし。短期間のライヴ出演みたいなものに今いろいろ呼んでもらったりしてて、5分とか10分、15分くらいから始めてて。それができるとまた自信になるんで、逆に積極的にやりたいですけど、ただ30分以上の演奏やワンマンっていうのはまだすごく遠いです」
なるほど。
「でもどっかで見えてくるだろうし。9mmでもワンポイントだけとかで出れるところがあるのかないのか、そういうことはつねづね考えてますし」
そうですね。
「ライヴのことを考えると、まだまだ状況は良くないですけど、とりあえずできることを頑張っていれば、あとから〈あれがあったからこれができるようになった〉〈また次に進める〉って思うようになるんじゃないかと思います。とにかく焦らなくていいって周りのすべての人に言われてるし、自分でもそう思うので、焦らずに待ってていただけたらと思います」
文=柳 憲一郎
写真=神藤 剛
NEW ALBUM
『YOU NEED FREEDOM TO BE YOU』
2024.10.23 RELEASE
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- Baby, Please Burn Out
- 叫び -The Freedom You Need-
- Mr. Foolの末路
- カタルシス -Album ver.-
- 幻の光
- Fuel On The Fire!!
- それは魔法
- Domino Domino
- 新月になれば
- 朝影 -The Future We Choose-
- Brand New Day -Album ver.-
BEST ALBUM
『THE ULTIMATE COLLECTION -20Years, 20Bullets-』
2024.07.31 RELEASE
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- 太陽が欲しいだけ
- Black Market Blues
- The Revolutionary
- キャンドルの灯を
- Punishment
- Talking Machine
- Discommunication
- 光の雨が降る夜に
- 黒い森の旅人
- ハートに火をつけて
- ロング・グッドバイ
- Supernova
- 名もなきヒーロー
- Scenes
- スタンドバイミー
- ガラスの街のアリス
- 生命のワルツ
- Mr.Suicide
- Brand New Day
- One More Time
〈9mm Parabellum Bullet Tour 2024-2025
「YOU NEED FREEDOM TO BE YOU」〉
2/22(土)[東京] Zepp DiverCity(TOKYO)
3/1(土)[愛知] Zepp Nagoya
3/2(日)[大阪] Zepp Osaka Bayside
〈「YOU NEED FREEDOM TO BE YOU」Extra〜カオスの百年vol.21〜〉
3/17(月)[神奈川] KT Zepp Yokohama