今年の春に放送されたドラマの続編となる『劇場版 ACMA:GAME 最後の鍵』が間もなく公開。99本集めるとこの世の全てを手にすることができる “悪魔の鍵”を軸に、世界の運命をかけた最終決戦を描く本作の見どころや撮影裏話を、佐藤東弥監督に伺いました。主演を務める間宮祥太朗をはじめ、SixTONESの田中 樹らキャストの撮影秘話も必見です!
(これはQLAP!2024年10月号に掲載された記事です)
『週刊少年マガジン』に連載された漫画『ACMA:GAME』が今年の春にドラマ化、そして間もなく映画版も公開になります。まずは、佐藤監督が本作の制作に参加した経緯や人気漫画を実写化する上で大切にしたことを教えてください。
漫画『ACMA:GAME』を実写化するにあたって、ドラマと映画を同時製作するという企画を聞き、ドラマだけではスケール的にも視覚的にも語りきれない作品を作るという試みがとてもおもしろいと思い、参加させていただきました。
原作は、ゲームの緻密さや性善説を体現する主人公・照朝(間宮祥太朗)のキャラクターがとても魅力的な作品。そうした原作の魅力や世界観を大事にしながら、春に放送したドラマでは、99本集めるとこの世の全て手にすることができる“悪魔の鍵”をきっかけに、照朝が『アクマゲーム』に巻き込まれ、仲間と力を合わせて謎の組織・グングニルの正体に迫るまでを描きました。
映画では、ドラマのラストで実はグングニルのトップだったことがわかった父との決着をつけた照朝が、“悪魔の鍵”を全て破壊するべく、悪魔との最終決戦に立ち向かう姿を描いています。仲間との絆や人間としての成長、キャラクターの連続性を意識しながら作り上げたので、ぜひ劇場で照朝たちの大きな物語のゴールを見届けてもらえたらうれしいです。
主人公を演じる間宮祥太朗さんをはじめ、ドラマ版から引き続き続投する田中 樹くん、古川琴音さん、竜星 涼くん、嵐 莉菜さん。皆さんの役者としての魅力や撮影現場での印象とは?
全ての“悪魔の鍵”を壊すために旅をする主人公・照朝を演じる間宮祥太朗くんは、1シーンごとの設計を事前に考えて現場に持ってきてくれる方。座長ではありますが、自分が中心にというタイプではなく、「僕はこう演じるので、どう受けるのかはお任せします」という姿勢で現場を引っ張ってくれました。
照朝の幼なじみかつ親友であり、ベンチャー企業の社長・初役の田中 樹くんは、仕事に向き合う姿がすごく真面目。 芝居においては、演出側の意見が欲しい方なのかなと。でも彼は何でもできてしまうので、僕はあえて「頑張って!」と少し突き放していたのですが、見事に期待に応えてくれましたね。
初と同じく照朝の幼なじみで、優秀なAIプログラマーの悠季を演じる古川琴音さんは、とてもプロフェッショナルな女優さん。間宮くんの芝居に臨機応変に対応して、さらには変化球も投げてくれました。
常にスリルを追い求める天才ギャンブラー・潜夜役の竜星 涼さんは、自分の中にしっかり役を落とし込む方。 現場では潜夜のように明るく振る舞っていたのですが、陰で血のにじむような努力をしているのだろうなと感じましたね。
“悪魔の鍵”の力で人気に火がついたアイドル・紫役の嵐 莉菜さんは、役者経験が少ないのですが、成長が著しかったですね。演出の意味をしっかり考えて動いてくれていたのも印象的です。
映画では、過去のゲームで培った5人の力を合わせて最終決戦に挑むのですが、ドラマの撮影を経てからの撮影だったので、信頼関係も出来上がっていて、映画にもその関係性が生きていると思います。
映画では新たなキャラクターも登場。照朝とともに『アクマゲーム』に挑む兄妹役を演じる金子ノブアキさん、志田未来さんの魅力を教えてください。
金子ノブアキさんは、とある目的のために“悪魔の鍵”を集めるカルト教団の司祭・黒田光輝役。金子さんはカリスマ性のある人間を自然に演じられる稀有な方ですね。光輝と照朝は対立する立場ですが、実は共通した過去を持つ光と影のような存在で、その対比をしっかりと見せることができたと思っています。
人の心を読む力を持つ光輝の妹・蘭役の志田未来さんは、お芝居が抜群に上手。難しいかなと思うセリフもシーンも絶対に何とかしてくれてとても頼りにしていました。物語の鍵を握る兄妹が、照朝らとどう関わっていくのかも見どころの一つです。
撮影はカンボジアを中心に行われたそうですが、ロケ地をカンボジアに決めた理由とは? また、物語の舞台が海外だからこその注目シーンはありますか?
映画の舞台は、“悪魔の鍵”の発祥の地であるキルタン王国。映画ならではのスケール感を意識しつつ何カ国かロケハンに行ったのですが、 カンボジアは古代遺跡が多く作品の世界観に合うなと感じて、カンボジアでロケを敢行しました。
カンボジアは長く内戦で苦しんだ国であり、内戦を経験した方の話を伺ってみると、今作を通して伝えたいテーマに近いものがあって。やはり多くの人が傷付く争いはなくなってほしいし、平和な世界であってほしい。カンボジアでロケを行ったことでそうした願いがより作品に内包できたのではと思います。
また、物語が世界規模になり、間宮くん、田中くん、古川さんは外国語を話すシーンもあります。間宮くんはクメール語を習得してくださったのですが、話す芝居自体がとても上手。言語がわからない僕からしたら、 全てが完璧に聞こえましたね。ドイツ語のセリフに挑戦した古川さんは、発音が本当にキレイでした。田中くんは、スペイン語のセリフに苦労されていて何回か撮り直したので、撮影後には「あぁ、終わった!」とやり切った様子でしたね(笑)。映画ならではのシーンとなっているので、ぜひ注目してみてください。
本作の最大の見どころである、究極の頭脳戦×極限の心理戦ד悪魔の力”を駆使した究極のデスゲーム。最終決戦の見どころとは?
照朝は父の遺言通り、欲望の元凶となる“悪魔の鍵”を全て破壊しようと、人間が実際の駒となり、人類の存亡かけた極限のサバイバルゲーム『冥王剣闘士(ザ・グラディエーター)』に挑みます。 ただ、世界を救うためには、ある残酷な決断をしなくてはいけない。一番の親友である初は、照朝が決断できないことをわかっていて背中を押すんですよね。また、傷ついているはずの潜夜もクールに背中を押す。
そして照朝が、『アクマゲーム』を仕切る悪魔“ガド”に対してあるセリフを言うのですが、それがこの作品の見どころでもあります。 僕は照朝がそのセリフを言うために、ドラマと映画があったのだと思っていて。きっと間宮くんもそこにかけていたと思うし、 ゲームに挑む5人それぞれが集中した芝居で思いをぶつけてくれて、仲間を思う気持ちや友情が伝わるとても印象的なシーンになりました。
追い詰められたとき、仲間の絆はどう試されていくのか、緊迫した頭脳×心理バトルにぜひご注目ください。
最終決戦以外には、どんな『アクマゲーム』が登場するのでしょうか? また、新たな『アクマゲーム』の撮影で苦労したことはありますか?
映画には、5文字で好きな能力を定めて相手の的を射る『五字戦闘(ファイブスペルサバイバル)』、 爆発物を載せた車に乗りながら相手のウソを見破る『落下真偽心眼(ダウントゥルーオアフォールス)』など、単なる頭脳戦ではない新たな『アクマゲーム』が登場します。
『五字戦闘』は照朝と光輝が銃や剣で戦うのですが、映画となると、僕も銃撃戦を撮りたくなるんですよね。 間宮くんも金子さんもアクションが上手なので、楽しんで体を動かしてくれました。『落下真偽心眼』では、鍵の力で人類を支配しようとするグングニルの幹部・崩心(小澤征悦)と照朝がカーチェイスをしながら心理戦を繰り広げます。 撮影のために公道を封鎖したのですが、実は天気の都合で全然撮影ができなくて、撮影に至るまで半年もかかりました(笑)。迫力満点の肉弾戦は映画ならではなので、 そこもぜひ楽しんでいただきたいですね。
文=室井瞳子
佐藤東弥監督
さとう・とうや/1959年4月11日生まれ、東京都出身。数々の人気ドラマ、映画の演出、監督を務める。近年に手掛けた作品は、ドラマ『クレッシェンドで進め』、劇場版『奥様は、取り扱い注意』など。
『劇場版 ACMA:GAME 最後の鍵』
(東宝配給/10月25日より全国ロードショー)
監督:佐藤東弥
出演:間宮祥太朗、田中 樹、古川琴音、竜星 涼、 嵐 莉菜、金子ノブアキ、志田未来、小澤征悦 ほか
(C)2024劇場版『ACMA:GAME』製作委員会 (C)メーブ・恵広史/講談社