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【特集】吉井和哉20th × 音楽と人 | AL『WHITE ROOM』INTERVIEW(2005年4月号)

text by 青木優

2023年にソロデビュー20周年を迎える吉井和哉。ここでは『吉井和哉20th × 音楽と人』と題して、『音楽と人』の過去のアルバム記事を特別公開していきます。先日公開した『at the BLACK HOLE』に続き、今回は二作目『WHITE ROOM』のインタビューを公開。

(これは『音楽と人』2005年4月号に掲載された記事です)


彼が自らの手で失くしてしまったものは、あまりにも大きかった
でも、自分という存在をいまいちど確かめるためには、他に手段などなかったのだ
ブラックホールに押し潰されそうになった時、彼は神に助けを呼んだ
自分の心を照らすひと筋の白い光――『WHITE ROOM』
強い、凛とした決意をもって、ふたたび彼はあてのない旅に立つ――


★


苦みばしっている。生々しすぎる。YOSHII LOVINSONの『WHITE ROOM』。ここには全身キズだらけになり、足の皮さえズルむけた男がはいつくばってでも前進しようとする、そんな痛みが埋め込まれている。身体を張った――いや、命をかけた、そう言いたくなるほどの重たさとメランコリーに満ちたアルバムなのだ。

彼は冒頭の「PHOENIX」で、鼓舞するように唄う。〈今打ち放て PHOENIXが太陽に/飛ぶぞ〉と。〈羽ばたけ 羽ばたけ 羽ばたけ/元気出せ 元気出せ/もう恐れること勿れ〉と。しかしそうした言葉を解き放つのは、空元気のロックなんかではなく、痛々しいマイナー・コードだ。アルバム自体はアメリカ制作の空気感があふれ、また盟友エマの参加もあってか、前作よりオープンな質感が向上。しかしトータルではネガとポジがゴッチャになっている感が否めず、吉井はやはりここでも逡巡を続けている。海に向かって気持ちを吐露してみたり、今までを振り返りながら、どうにか清算しようとあがく。その心情のアップ&ダウンが、異様な熱を放っているのである。

この男のか細い肩に、ザ・イエロー・モンキーという巨大な存在は、いつしか重すぎるものになっていたのだろう。それを断ち切ろうともがいた日々は、さぞ過酷であっただろうと……いや、いまだにもがき続けているとも言える。新たな航海への期待と同時に不安も、それに、孤独感だってあるはずだ。さらに年齢が自らに知らしめるのは、精神と肉体の限界という現実――。しかし彼はそうしたひとつひとつの事象を逃げることなく認め、この場所から再スタートしようとしている。その静かな語り口には、強固な感情が、しっかりと植わっていた。

一日がかりの撮影とインタビューの間、目の前で優しく微笑む吉井に、思わず僕は過去の残像を何度か重ね合わせていた。12年前にライヴハウスで、10年前に日本武道館で舞っていたデカダンな雄姿を。西武球場で、東京ドームで叫んでいたグラマラスなロックスターの輝きを。あの頃を思うと、ここにいる彼のたたずまいは、ずいぶんとシックである。表現の仕方も、かぐわしいメイクの艶やかな香りから、身体中に刻まれた古キズからにじみ出る血の色に、シワの間からこぼれ落ちる汗の熱さに、大きく変容した。だけれども……続いている何かは、間違いなく、あると思う。  絶望と希望がない混ぜになった感情こそ、今の彼のリアリティなのだろう。素顔に近い吉井和哉。その歌から伝わってくるのは、一度とことんまで落ちた人間だからこその勇気、気高さ、優しさだ。これからの彼の歌は、さまざまな困難や現実に向き合おうとしている人たちの心に、そっと白い光を照らすような――そんな勇気を、きっと与えてくれるのではないだろうか。



初めまして。


「よろしくお願いします」


はい。今日は吉井さんの現在形と、願わくば今後のことに関して聞きたいと思います。


「はい」


で、まずはアルバムのことから入ろうと思うんですけども。僕は『WHITE ROOM』をとても愛聴しています。


「あ! ……それはそれは(笑)」


はい。前のアルバムもすごく好きだったんですけど、違う意味で心に迫ってくるものがあります。きっとかなり心境が違う中での制作だったと思うんですけど。どうでしょう?


「うん……えーと、ファーストの時はけっこう時間をかけてしまったんで。制作期間を」


丸3年ですね。


「はい。そこで……ま、長年溜まった自分のアク抜きというか、そういうことをやって。あと、まだイエロー・モンキーが活動休止だったんで……こう、変化つけようと思っちゃってたんでしょうね。やっぱりまだバンドがあるってことに対して、妙な意識をしてしまったんじゃないかなと。それで……3年かかって。で、今回のはもう昔の――曲ができたらすぐ演奏して、録って、すぐ出すっていう慣れてるやり方でやったから、そういう違いはありますね。あとはもうライヴをけっこうイメージしてたんで」


ああ、そうなんですか。


「はい。ファーストん時は正直言うと、ライヴはあんまり演りたくなかったんですよ」


演りたくなかった? それはなぜですか。


「……わかんない。自分でもわかんない」


人前に出たくなかったの?


「うん、それもあったし……まだ出ちゃいけないんじゃないかなって……思ってたんですよね。ただ、まあ……混沌としてたのは事実ですよね。イメージは決まって、できてるんだけど、なんか煮え切らないなっていう状態っていうか……うん……それは強かったなぁ」


いや、そこがファースト・アルバムのキモだったと思うんですよ。その煮え切らなさ、葛藤してるさまが、刺さってきたというか。


「すべてが煮え切らなかったね! 世の中のことに対しても、自分のことに対しても、自分が……これからもっと歳を重ねてって、新しい音楽をやることにしても。すごく、しっかり……しっかり基盤を作らなければいけないし、ちゃんと考えなきゃいけないなっていう時期だったな。あの作ってた3年間は」


はい。今思うと、ちゃんと考えられたと思います?


「いや、まだ全然……そんなに状況は変わってないと思うんだけれども。まあ、しょうがないですよね(笑)、進むしか」


で、先々月号で、今度のアルバムを作ってすっきりしたとおっしゃってたんですけど。


「うん。今自覚してることは、ファーストの時は、まだエゴの固まりだった。ミックスも自分でやった曲もあるし。ましてやドラム以外は自分で全部……ほとんどやって。で、結局それによって、当然ミックスとかでも腑に落ちなかったりするんですよね。でも『WHITE ROOM』は、ちゃんと他人に任せるとこは任せて、これは自分しか絶対できないってとこは自分でやって。ギター・パートにしても、楽器の演奏にしても、そう。それで……去年、引っ越しをしたんですよ。ま、引っ越しをしながらアルバム作るって大変なんですけど(笑)。でも今回はすごくプラスに作用したと思ってて。ほんとに心身ともに引っ越したっていうか。ちょうど引っ越しの日が、バンドの解散発表の日だったり」


えっ、そうなんですか?


「偶然に。で、今回のには、ファーストで入れようとした曲も混ざってるんで。とりあえず……あの混沌とした3年――もはや5年くらいになりますけどね――を、1回これでリセットできたなっていう気持ちはあります」


そうですか。あの、最初、ご自身の中にアクが溜まってたっておっしゃったんですけど。そのアクって何なんでしょう?


「……うーん。まあ、すごく…………贅沢な悩みというか。バンドがデカくなりすぎた。デカくしたくてやってきたんだけど……〈ここはデカくなりたいんだけど、ここはデカくなりたくなかった〉っていうとこがあって(笑)。だから………………〈俺、そういうんじゃないんだよ〉っていうか……もっと守んなきゃいけない部分を、もっと守りたくなったっていうか。その守りたいものっていうのは……ま、ヘンな話……やりたいことはやりたいし、やりたくないことはやりたくないじゃない?(笑)。それがロックだと思ってるから……うん。まあ、でも……これからそういうのは守ってけるかなぁと思ってるんですけど」


そのやりたくないことがバンド後期は大きかったと。


「大きかった」


その中で一番やりたいことを見失いがちだったってことですか。


「……うーん。あのー、何て言うかな……………………こう……温室くさくなっていくのがすごくイヤだったんだよね。『先生、こっちです!』とかさ。それに『んっ!』なんつっちゃって。そういうのが耐えられなくなってきたっていうか。温室というか……〈もっと危機感持ってやろうぜ〉って」


ある種、過保護気味な。


「あ、そうそうそうそう。だから……すごくやりたいことを追求してね、ストイックにずっとやっていきたかったんだけど……〈ストイックじゃないよなぁ〉って。〈もうツラいばっかりじゃん〉みたいな感じになってくると、バンドってほら、運命共同体だから、みんなと同じような危機感と………………うーん、危機感かな。とか、向上心……つったらヘンですけど、そういうものを持ってたいなあって。俺もだから、おかしくなっちゃってたし、すごく」


はい……なるほど。


「うん。だから休みたかったというか。ま、最初は『辞めたい』って言ったんだけど」


引退したいってことですか?


「いやいや、解散したいってこと。まあ解散したいっていうか、『辞めたい』って言った。だから、いきなり…………ま、疲れたね、すごく(笑)。疲れました」


予想もしないくらいのストレスでした?


「うん」


でも吉井さんって昔のロックに対する憧れがすごく強いじゃないですか。


「強いですね」


そういうの、僕たちもさんざん見たり聞いたりしてきたじゃないですか。その過程で〈あ、ロックスターってこのぐらい大変なのか〉とか〈自殺しちゃう人もいるくらいしんどいんだろうな〉みたいなのって――。


「いや、ま、そんな、海外の往年のロックスターのようなツラさは味わってないけど(笑)」


そうですか?


「うん。たださ…………その、スタート地点っていうのがすごく素朴じゃないですか、ロックなんて。その素朴なスタート地点をずっと守りたいんですよ。それが守れなくて海外のミュージシャンとかドラッグに手を出したりね。あげくの果てにはそれでおかしくなって……っていうことがあるんだろうけど。それはすごくわかるんですよ。だから、いきなりデカくなったバンドをブッ壊して、また素朴に戻るソロ・アーティストもいっぱいいたと思うし。まあ僕はそっちを選んだのかな……っていう(笑)」


じゃあバンドが活動休止になったあとは、どうしたいと思ってましたか。


「もう自分のひたすらやりたい音楽……なんとなくおぼろげにあったし、うん。それでアルバムが定期的に出て、ツアーができて、で……生演奏じゃなければ歌番組に出ないで。そういう……子供みたいなイメージというか(笑)。それでいい音楽を残していきたいなあって思いましたね」


そこで、ひとりでやったのはなぜですか? つまり、また別のバンドっていう発想には――。


「ああ、それはもうイエロー・モンキーのメンバーとの、あうんのグルーヴがあったから、いきなりほかの人とはちょっと。ま、その時、解散じゃなかったし。なんかストップがかかっちゃったね、自分の中で。いきなりほかのミュージシャン呼んできて演奏ってのは、ちょっと俺にはリアリティがなくて」


なるほど。ただ、それに3年もかかったのはすごいことだなと思いますけど。


「(笑)でも3年、毎日やってた訳じゃないし。レコーディング、まあ半年空いた時期もあったし。とにかく、あとは、その……もう自分が嫌いで嫌いでたまらなかったですよ」


はあー。自分が嫌い?


「……顔からしぐさからふるまいから何から、もうすごくイヤで。それをとにかく消したくて消したくて。だから真剣に、冗談抜きで普通にアルバイトしようかなぁと思ったし」


(笑)ほんとに?


「(笑)いや、笑うんだけど、みんな、言うと。だからガソリンスタンドとかで働いてみようかなとか……。いや、〈だったらやってみろよ〉って世界ですけど(笑)。それぐらいの、いわゆる普通のことをして、消してしまいたかったですね。まあカッコ良く言やぁ、それで生まれ変わりたかった。だから名前も変えたし……『変え方に難あり』って言う人もいますけど」


ははははは。


「ははははは! ま、そこも俺だし(笑)」


イエロー・モンキーという看板を背負った吉井和哉がツラかったということですか。


「うん」


ゼロにしたかったというのは、そういうことなんですね。


「ね? 怒られちゃいますよね? わがままで、そんなの(笑)。さんざん好き放題やってきて。ただ、やっぱり……うん、すごい人をキズつけただろうなって思うんですよ。調子に乗ってってね、チヤホヤされて。知らないだけで、たくさんキズついた人もいるだろうなとか。まあ歳のせいか、そういうことも……異様にツラくなった時期がありましたね」


すごい自己反省したんですか。


「そうそう(笑)。もうほんと! 滝に打たれたい気分だったね(笑)」


でも思うのは……その3年の間の重みを想像するだけで、ツラそうだなって。


「ああ……うん。ただ……ま、プータローしながら、たくさんの音楽をまた聴いたし……。プライベートでもね、すごくいろんなとこに行ったし。ほんとにひとりの人間として……〈早く音楽がやりたいな〉って思うようになるまでは、何もしないで。ただ、休んで1年目ぐらいから、曲はだんだん出てきましたね。最初のうちは……ちょっと様子見ながら曲作ってたんですけど。とはいえ、デビュー曲の〈TALI〉とかは、わりと休んですぐできたし。あとは……そうだなぁ………うん、釣りしたり。…………………あと、引っ越ししたくなった。で、住む場所を探したり、住む土地を探したりね。田舎のほうで。めっちゃくちゃ具体的に言ってるし、俺(笑)」


なるほど。あの、新しく引っ越した場所というのは、どんなところなんですか。


「もう森です。森。森ロッカー!(笑)」


(笑)それは人里離れたところですか。


「いや、そうでもないけど。ただ、野性の動物はいっぱい出るかな(笑)」


何でそんなところが良かったんですか。


「はは、『何でそんなところ』って(笑)。最初はね、毎日釣りしてたいなぁと思って(笑)。あとは、もうほとんど俺、酒も呑まないし、呑みにも行かないし。買い物もべつに、レコードしか買いに行かなかったし……東京に住んでる意味ないんですよね、あんまり。会社にも行ってないし、ほとんど自宅での作業だし。で、もう住んじゃおっかっつって、うん。住んじゃいました。あと、東京に住んでたらいろんなファンとか来て、すごく周りにも迷惑かかっちゃって。もう田舎のほう行こうかなと思って。もう来ないでねと(笑)」


あの……「CALL ME」で〈枝切られる/都会では両手を伸ばせない〉というくだりがあるのですが。


「あっははははは! そこでそれ出されると……! 振り返るしかねぇよ(笑)」


はははは。


「まさに、うん。だから……まあ年齢年齢つって申し訳ないけど、年齢のせいもあるけど、東京で生活するのが、もうツラくて」


へえー。


「うん。〈俺の求めるロックは、もうここにはないな〉と思っちゃったというか。ただ便利なだけで。……ひとりでね、気ままにこう、いろんなガールフレンドがいて、しょっちゅう夜中まで遊んでて――だったら、もう最高な場所だろうけど、そういうんじゃないし。なんか……もっと人間として、自由にいろんなところを伸ばせるところで音楽がやりたいなぁと思ったというか。東京に住んでる時に〈俺、何でこんなに毎週釣りに行ってんだ?〉と思ったら、べつに釣りが好きっていうよりも、自然に行きたかったんだなって今よく思うんですよ。というのは何でかっていうと、引っ越したら釣り行かないのね(笑)」


(笑)なるほど。


「うん。結局、キレイな空気が吸いたかったんだと思うんですよ。水を見てたりとか、自然の中にいたかったんだなと。だから……たぶんこれから作風も変わってくると思うし」

やっと混沌としたところから抜け出したのかな、なんて思ってほしくないから

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