3月22日に発売となったgo!go!vanillasの映像作品『LIVE FILM -My Favorite Things-』は、昨年9月30日の日本武道館公演、9月24日の大阪城ホール公演の模様を収録した合計238分の超大作。
ポップでありつつも、ロックバンドの佇まいを崩さず成り立たせるセットや照明による演出。そして近年の楽曲を中心に構成されたセットリストからは、自分たちの今を見てもらいたいという思いと同時に、その姿で武道館という大きな会場を引っ張っていく自信も垣間見える。さらに、井上惇志(キーボード)、手島宏夢(フィドル)、ファンファン(トランペット)という3名のゲストプレイヤーを迎えたことも大きかった。7人で一心同体。お互いの立場を意識せず、ただ音楽を楽しむ姿が会場をひとつにしていた。
今回は、〈My Favorite Things〉に参加したゲストプレイヤーの3名にインタビュー。映像作品のライヴ本編映像(日本武道館公演)から、お気に入りの楽曲を1曲選んでもらい、当日の思い出やバンドへの思いとともに語ってもらった。3人との演奏にメンバーは何を求め、どんな思いで大阪城ホールと日本武道館に挑んでいたのか、ゲストプレイヤーの言葉からぜひ感じてもらいたい。また、音楽と人2022年12月号に掲載されたメンバーによるアフターインタビューも再掲載。
井上惇志/キーボード
ヴォーカリスト根津まなみとのユニットshowmoreのキーボーディスト兼プロデューサーとしても活動。SIRUP、ZINなど多くのアーティストのプロジェクトに参加している。
■My Favorite Song「Do You Wanna」
僕がgo!go!vanillasの楽曲に初めて参加したのは、「アダムとイヴ」のレコーディングです。『PANDORA』のエンジニア兼プロデューサーのillicit tsuboiさんに声をかけていただいてスタジオでメンバー全員と対面しました。事前に音源を聴いた印象では尖ってる人たちなのかな?と思っていたんですが、実際に会ってみたら4人ともめちゃくちゃウェルカムで。すごく居心地のいい空気を作ってくれていたのを覚えています。僕がレコーディングしている間もメンバー全員が聴いてくれていて、その様子が本当にみんな音楽が大好きなんだなという印象でした。
そこから「RUN RUN RUN」「LIFE IS BEAUTIFUL」「青いの。」のレコーディングを経てどんどん仲よくなっていって。2022年のフジロックでgo!go!vanillasの出演が発表された時も自分事のようにうれしくて、牧に電話で「スケジュール空けたから観に行くわ!」と言ったら、「実は一緒に出たいと思ってる!」とオファーをもらい、フジロックで初めてライヴでサポートすることになったんです。そこから〈My Favorite Things〉ツアーも参加することになりました。
日本武道館のライヴの中で一番印象に残っているのは、メドレーセッションからの「Do You Wanna」ですね。アレンジやアイディアなどでも大きく関わらせてもらったんですけど、タイトな16ビートやマイナー9thコードのループをベースにしたアダルトな雰囲気で、普段のgo!go!vanillasとは一味違った切り口で見せることができたかなと思います。セッションという自由度もありつつ同期出しや曲入りのタイミングがかなりシビアだったため、全員の集中が空気を通じて伝わってきてステージ上ではかなり痺れました。そういう緊張感を映像からも感じてもらえたらうれしいです。
あと、僕は開幕映像のSEも牧と一緒に制作させてもらったんですよ。夏の暑い日に僕の部屋で牧と作業してたんですけど、録音する部屋にエアコンがなくて。灼熱の状態で5時間くらい缶詰作業が続いて、最終的にはふたりとも上半身裸でレコーディングをしてましたね(笑)。そのおかげでSEもすごくいいものができたと思ってます!
go!go!vanillasは、みんなが予定調和をよしとせず常に進化や挑戦をしたいという気持ちを強く持ってるバンドだと思うんです。僕自身、そのための刺激として呼ばれたと感じたので、ただ演奏のサポートをするというよりも、もっと能動的に会話していくイメージで彼らと関わっていきました。だからこそ「Do You Wanna」のメドレーセッションを提案したりしたんですが、特にプリティとセイヤのふたりはやり慣れてないアイディアなのにも関わらず、「面白い!」と言って積極的に関わってくれてうれしかったです。
そうやって音楽に対してはすごくストイックでライヴの時間も刺激的なんですが、楽屋ではずっと雑談してたり、みんなでゲームしたり、お互いの誕生日を祝いあったり。出会ってからの時間が長くなくても、あっという間にファミリーとして迎え入れてくれる。全員、人間的な魅力に溢れた究極の人たらしだなと思います(笑)。そういうところも彼らの魅力だし、楽曲の親しみやすさにも表れている気がしますね。
僕は今廻っているツアーにも参加させてもらっているんですけど、これからもたくさんの時間をgo!go!vanillasの4人と過ごせたらいいなって思うので、〈一生楽しく音楽やろうね!〉ってメンバーには伝えたいです。