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オレンジスパイニクラブ、ツアー完遂。パンク精神を貫く4人の先に見えた未来

text by 宇佐美裕世

【LIVE REPORT】
1st Full Album Release LIVE TOUR「アンメジャラブル」
2021.12.16 at 恵比寿LIQUIDROOM



「これからも卑屈な歌を唄っていくので」


ラストに放たれたこの言葉は、彼らの根っこにあるものが変わらないことを確信させてくれるには十分すぎる一言だった。


オレンジスパイニクラブが12月16日に開催した、ファーストフルアルバム『アンメジャラブル』リリースツアーのファイナル公演。会場は、彼らがステージに立つ日をずっと夢見ていたという恵比寿LIQUIDROOM。しかも、チケットはソールドアウト。憧れの場所が多くのファンで埋め尽くされる光景は、ファイナルということを抜きにしても胸に迫るものがあったのではないだろうか。そしてそのファン層だが圧倒的に若年層が多く、「キンモクセイ」がSNSでバズったことをきっかけに、彼らの名が瞬く間に世に知れ渡った事実をより色濃く感じさせた。


念願のステージであろうと、超満員の観客を前にしようと、彼らは会場の雰囲気に呑まれることがないどころか、最初から最後まで全員がベストコンディションを保っていた。スズキユウスケ(ヴォーカル&ギター)の堂々とした力強い歌声を筆頭に、スズキナオト(ギター&コーラス)、ゆっきー(ベース&コーラス)、ゆりと(ドラムス)の息づかいがダイレクトに伝わってくるような気迫溢れるプレイに、思わず一瞬でも目を逸らすのが惜しいと思ってしまうほど。この日、彼らは緩急のあるセットリストで観客の心を魅了していたが、中でも「キンモクセイ」「ガマズミ」のゆったりとしたテンポの曲のあとに、「東京の空」「急ショック死寸前」と続く流れには度肝を抜かれた。心の琴線に触れるような甘酸っぱい曲も、パンク精神を掲げた挑発的で大胆な曲も、気持ちを入れ替える間も無く立て続けに披露してしまうのだ。そして、そのどちらも熱量が一瞬でも弱まることはない。ときめきと狂気を難なく両立する光景に、思わず〈違うバンドを見ているみたいだ〉と馬鹿げたことを何度も思ったが、オレスパとはそういうバンドだ。ジャンルに囚われず、フレキシブルに鳴らしたい音を追求し続けたいという強い意思を秘めている。


その強い意思は、天邪鬼なところと紙一重だとも思っている。天邪鬼であることは彼らの大きな魅力だが、この日はそれを垣間見る瞬間が多かったように思う。例えば、MCで自分たちの新曲がドラマの主題歌に起用されていることを話題に上げたものの、「最終日なのでアンコールでその曲を披露しようと思ったけど……しません」と突き放してみたり、その代わりに披露されたのは、「みょーじ」というインディーズの頃から唄い続けている曲であったりと、メジャーシーンに居ながらもお決まりの流れを一蹴し、一筋縄ではいかないバンドの姿勢を容赦なく見せつけていた。ちなみに、「みょーじ」はオレスパの真骨頂とも呼べる、鬱屈とした感情を如実に堪能できる曲である。


〈君のみょーじも変わったから/歌もやめるよ 歌う意味がない〉
〈まだずっと昔の夢を見てる/君のみょーじを変えるのは僕だけ〉
〈やっぱもう少し歌は続けるよ/君のためじゃなく僕を歌うよ/君と彼の関係終わるような〉
〈そんな卑屈な歌を歌ってく/すでに嫌だとしても歌ってく〉


この曲で綴られているのは非常に私的な感情で、万人が頷くような共感性の高い内容ではない。だが、それこそ彼らが目指すべき音楽なのだ。以前、『アンメジャラブル』リリース時のインタビューで自分たちが影響を受けたバンドについての話をしていた際、ユウスケとナオトはこのように語っていた。


「共感とはちょっと違って〈これは俺だけがわかればいい〉みたいな。俺もそういう歌詞を書きたいと思うようになった」
「傍から見たらなんのこと言ってるのか全然わからないような曲でも、〈これ俺の歌だ!〉って共感してくれる人が、どっかに一人でもいればいい」


彼らの技量の高さ的に、もっと器用に、わかりやすく売れそうな曲だけを作ることだってできるだろうし、ライヴのセットリストだって耳なじみのいいミディアムチューンだけで統一することもできるだろう。それでもそこを目指さないのは、ごく私的な感情が綴られた曲――彼らの言葉を借りるとしたら〈卑屈な歌〉に彼ら自身救われた過去があり、同じように自分も誰かを救いたい気持ちがあるからだろう。


きっかけはSNSでバズったあの1曲だけだったのかもしれない。それでも、フロアにいた観客全員がこの日披露されたすべての曲に魅了され、真剣に聴き入ったり、時には熱狂している姿を見て、オレスパは多くの人にとって気持ちの代弁者的存在になる日もそう遠くはないと実感した。美しいものだけで完結できないリアルな感情にも、自分たちの色を大切にしながら寄り添ってみせる――そんなバンドの気概が強く表れていた一夜だった。


文=宇佐美裕世
写真=三吉ツカサ


【SETLIST】
01 退屈かも知れない
02 Worst of myself
03 スリーカウント
04 37.5℃
05 日和見の暮
06 アイヘイトマイバースデー
07 イヤーワーム
08  Cho ru ryo
09 タルパ
10 バカのしりぬぐい
11 キンモクセイ
12 ガマズミ
13 東京の空
14 急ショック死寸前
15 ハクビシンのユメ
16 睫毛
17 ringo
18 モザイク
19 理由
20 敏感少女
ENCORE
01 パープリン
02 まいでぃあ
03 みょーじ

■1st Full Album Release LIVE TOUR「アンメジャラブル」SET LIST
https://orangespinycrab.lnk.to/1stALtoursetlist


FIRST ALBUM『アンメジャラブル』
2021.10.20 RELEASE

■初回限定盤(CD+DVD)
■通常盤(CD)

〈CD〉 ※初回限定盤、通常盤共通
01 ガマズミ
02 退屈かも知れない
03 ハクビシンのユメ
04 日和見の暮
05 バカのしりぬぐい
06 アイヘイトマイバースデー
07 イヤーワーム
08 ringo
09 Worst of myself
10 Cho ru ryo
11 睫毛
12 理由

〈DVD〉 ※初回限定盤のみ
2021/3/29 @ 横浜BayHall One-man Live Tour 2021「パイン vol.10」より
01 みょーじ
02 駅、南口にて
03 パープリン
04 急ショック死寸前
05 37.5℃
06 眠気
07 コーヒーとコート
08 タルパ
09 キンモクセイ
10 モザイク
11 東京の空
12 スリーカウント
13 ドロップ
14 リンス
15 たられば
16 敏感少女
17 イージーゴーイング

購入&Download / Streaming


オレンジスパイニクラブ 公式サイト

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