余暇を楽しんでる感覚に近いんですよ。これ楽しいよね、ってことをテーマにやり続けるのが、このバンドにとっては一番幸せ
それ聴いてどう思いましたか?
佐々木「めちゃくちゃ楽しかった(笑)。なんかメンバーからお題出されて、それにどうやって応えようかなって考えてるのが、大喜利みたいでした」
田淵「だからアプローチの仕方は変わっても、楽しみたい、面白いことやりたい、ってところは全然変わってない」
佐々木「みんな俺色があるのに、誰も俺色に染まれって思ってない(笑)。だからそのまま曲がどんどん転がっていく。どんな石が転がってても、それを磨いてカッコよくできるって信じれるから」
田淵「月に1回ライヴしたい、っていうのも、その日に遊べるな、楽しめるな、としか思っていなくて。めちゃめちゃ準備して、曲順はこうで、ここでMC 、そんな流れを一切考えない(笑)。余暇を楽しんでる感覚に近いんですよ。これ楽しいよね、ってことをテーマにやり続けるのが、このバンドにとっては一番幸せなのかなって」
同じバンドを長年続けていると、そういうことを忘れがちになることが多いですからね。
田淵「フラッドもユニゾンも、ここまでやってこれたのは奇跡なんですよ。たぶん根性なかったら、無理だった瞬間はあると思う。僕らはそこをくぐり抜けている。ここまできたらボーナスステージに入ったなって思うから、もうそんなに不満とかはないんです。でも10年目くらいって、〈これ、一緒にやってていいんだっけ?〉みたいな悩みは、人間関係も含めて絶対あることだから。仲がいいとか悪いとかじゃなくて、自分のライフワークとして続いていくべきものを、これ大丈夫かなって思う瞬間はたぶんあったと思う」
鈴木「みんないい意味で責任感を持たないというか、肩の力を抜いて向かうスタンス。僕もいろいろ経験してきたけど、気難しいギスギスした関係はすごく嫌だし」
だから、新井くんのやりたいことだったり、こんなふうにしたいっていうプロデュース的な意識がめちゃくちゃ高まってると思うんですけど、それはそれでこれは面白いし、有りだよね、っていう。
鈴木「このバンドでは、やりたい人がやりたいことをやるべきだ、と思ってるんで」
田淵「うれしいですよね。それと別に思うのは、さっき責任持たないって言いましたけど、最低限ここはやりたくなってしまう、そんなゾーンがみんなあるんですよ。僕はアルバムの枠組みと曲順にはこだわりたいけど、それ以外はなんでも良い。新井くんも今回〈ギターだけのレコーディングです〉〈時間をかけてもいいです〉ってなった時、たぶんやれるならやりたくなっちゃうであろうポイントがあったんですよ」
鈴木「ギター入れたら〈あ、このフレーズもあったらカッコいいかも。いちおう録っておこう〉ってなったんだろうね」
田淵「彼はレコーディングが好きなんですよ。TDしてても、楽器はもう弾き終わってるのに『このエフェクトかけたらどうですか?』って試してみようとする。でもそれが〈こうやってプロデュースして売っていこう〉ってマインドから来るものではなくて、彼が音楽でワクワクするためのモチベーションみたいなものなんですよね。それを試せる時間があって、誰にも邪魔されずにできちゃう。それがケバブスなのはすごくうれしいです」
佐々木「そもそも新井さんは、どんだけ実験的なことをやっても、絶対ポップでかわいらしくなりますから。チャーミングなものにするセンスがすごい。それは天然な部分と、狙ってる部分、どっちもあるんだろうなと思ったんですけど。どんだけ凝ったことをやっても、あれだけ速弾きとかねじ込んでも、絶対チャーミングさを忘れてない。あれは新井さんの必殺技ですよ。あとスタジオでスイッチが入ってる時の新井さんを見るのが楽しくて。それ、直接言うと照れそうだから、おとなしくレモンサワーを呑みながら、冷やかさずに見てます。新井さんが〈もっとこうかな?〉って感じで首を傾げてるところとか、たまらなくいいんですよ」
酒のつまみに(笑)。
田淵「ファースト・アルバムを出した時、〈田淵はケバブスで、新井弘毅をバンドに呼び戻したかったのではないか〉って言ってる人がいたじゃないですか?」
それは私ですね(笑)。
田淵「ですよね。それは確かにそうなんだけど、たぶん、僕たちが思っていた新井弘毅のこだわりと、本当に彼がこだわりたいところって、ちょっと違ってたんですよ。今年知った衝撃の事実は、彼は別に速弾きが好きなわけではなかった、ってことで」
佐々木「それ、毎日のように言ってますよね(笑)」
鈴木「めちゃくちゃ面白かった(笑)」
田淵「だってめちゃくちゃ驚いたんだもん(笑)。彼、速弾きをしたくないんですよ。舐められないためのスキルだったのかなんなのか、あんなに弾いてたからそれをやりたいんだと思いこんでた。彼は本来、リズムギターが好きなんです。だからそこにこだわりだすと、めちゃくちゃウキウキしてる(笑)」
佐々木「根っからバンドマンなんですよ。ギターヒーローとして前に行きたいわけじゃなくて、リズムがバシッと決まる瞬間が気持ちいいとか」
田淵「だから、ケバブスは楽しいことをやる場所だという定義であれば、僕たちが、新井に速弾きをしてもらおうと思って曲を作り続けていたら、彼は楽しくならなかったかもしれない(笑)」
いい加減にしろよ!って(笑)。
田淵「それがわかってよかった(笑)。ファーストの時は、せーので録って、気楽にバンドをやることが楽しかったからそれで良かったんだろうけど、今回はスタジオに割く時間があって、新井くんが舵をとっていい時間帯が増えた時に〈え、やっていいの? じゃあやっちゃお!〉って自分の我を少し出して。それを俺たちが面白がって、この曲がこんなことになるんだ!ってワクワクして、結果みんなハッピーになってる。これはけっこう今年大きな出来事でした」
だって「ラビュラ」みたいなバラードの名曲が出てくるとは、誰も思ってなかったですよ!
田淵「たぶん、ケバブスが急にバラードやり始めたらウケるよね、ってところから始まったと思うんですけど。別の曲ではそこに新井くんが、急にシンセ入ったら面白いんじゃない?と思って入れて、アレンジしていったらどんどん名曲になっていった。このバンドにはすごく可能性があるんじゃないか、って思えた。そうやって繋がっていったのかもしれないし、そこからケバブス第二期のストーリーが始まったと思えなくもない。まだまだやれることはあるし、音楽にワクワクできる。それがとてもうれしいんですよ」
佐々木「今、世の中が、ライヴがしづらいっていうことも含めて、ちょっとギスギスしてるところがあるけど、そういうのを感じれば感じるほど、ケバブス最高!って気持ちになるんですよ。存在価値があるなと思う。そういう思いもしないことを思いついて、ただ楽しく音を出して、自分が気づいてない一面にも気づいていく。そうなってるだけで、すごく最高じゃないかって思ってます」
文=金光裕史
NEW ALBUM『セカンド』
2021.10.20 RELEASE
■初回限定盤(CD+DVD)
■通常盤(CD)
〈CD〉
01 ロバート・デ・ニーロ
02 チェンソーだ!
03 ラビュラ
04 テストソング
05 おねがいヘルプミー
06 てんとう虫の夏
07 ジャンケンはグー
08 やさしくされたい
09 うれしいきもち
10 夢がいっぱい
〈DVD〉 ※初回限定盤のみ
「月刊 THE KEBABS 特別号」トーク番組風映像
ベガスでカジノ (Music Video)
うれしいきもち(Music Video)
チェンソーだ!(Music Video)
サマバケ(Music Video)
猫がなつかない!(Music Video)
Bチームでも(Music Video)
目覚まし時計のうた(Music Video)
THE KEBABS 学生※未発表ライブ映像
オーロラソース
ベガスでカジノ
ラビュラ
THE KEBABSは忙しい
猿でもできる
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