佐々木亮介(ヴォーカル/a flood of circle)、新井弘毅(ギター)、田淵智也(ベース/UNISON SQUARE GARDEN)、鈴木浩之(ドラム)の4人からなるTHE KEBABSのセカンド・アルバム『セカンド』がリリースされた。今回のアルバムは1年前のファースト・アルバム『THE KEBABS』とは少し変わった。前回がすべて一発録りのロックンロールだったのに対し、今回は楽曲のタイプにも幅が生まれ、ギターを重ねたりシンセを入れた曲もある。これは新井の覚醒によるところが大きい。そこでこの取材では、新井以外のメンバーにインタビューを敢行。そして新井には音楽と人12月号(11月5日発売)でソロインタビュー。どちらも併せてお楽しみください。
今回のジャケは全員がスーパーヒーローなんですね。
佐々木「誰かがヒーローってキーワードを出したんですよ。それをデザイナーさんが面白がったんじゃなかったっけ?」
田淵「やっとイラストでのアー写が作れて、わたくし的にはうれしいです。写真撮られるの得意じゃないので。あと4人が揃って撮影できる日がないから、絵にしようってなったんじゃないかな」
なんてケバブスらしい理由(笑)。この『セカンド』は、1枚目とはかなり変わった部分がありますよね。
田淵「感想聞きたいな〜」
今回の取材は、ウェブではこの3人、音楽と人の誌面では新井くんひとりで行うわけですけど、それはこのアルバムに、かなり新井くんのカラーが強く出ていたからです。
田淵「お、鋭い(笑)」
ていうかケバブスって、細かいことを気にせず、4人で集まってせーのでレコーディングして、バンドを楽しむ、そんな存在だと思われてますけど、今回はいろんな音が入ってるし、ギター重ねてるし、シンセまで導入してる。かなり細かく作り込んでますよね。少なくとも一発録りではない。
鈴木「確かにファーストはせーので録ったから、細かいところは直せない。でも、これはこれでカッコいいからいいよね、って感じだったんです。でも今回は、スケジュールの関係もあって、レコーディングがバラバラになっちゃって。せーのだったらセッションしながら作れるけど、たぶんそれができなかったせいもあるんじゃないかな。逆にみんな、それはできないけど、どうやったら楽しくできるか考えたことが、この作品に表れた気がします」
佐々木「そう。ケバブスは、シンプルなことがテーマだったんじゃなくて、反動だったんだってことです。新井さんは、プロデュース業をたくさんやっていく中で、またバンドをやりたいと思った。逆に俺や田淵さんは、同じバンドを長く続けてきて、アイディアを形にするのにどうしても時間が必要な時があるから、その閃きをすぐ形にしたかった。それがケバブスの始まり。複雑じゃないことをやりたい反動があったから、前回はシンプルになったと思うんです」
田淵「〈バンドでどれだけ素早く面白いことを思いつけますか競争〉なんです(笑)。検証することなく、それ面白いからすぐやろう。じゃあ明日レコーディングして、明後日に出そう、みたいな。面白いけど準備が必要だから2年後に……じゃ、面白くないんですよね」
なるほど。
田淵「でもなかなか4人が揃えない。さっき浩之さんも言ってたけど、今年の頭から半年〈月刊 THE KEBABS〉って企画を始めたんですね。毎月新曲出してたら面白くね?って(笑)。でもそうすると、6ヵ月連続でレコーディングしなきゃいけない。すると当然、みんなの日程は合わない。バラバラにレコーディングすることになるけど、毎月出すことが楽しいから、それはそれでいい。それでレコーディングしてみると、新井くんは〈ひとりでギター録るなら……あれもこれもできるじゃん〉ってなって、プロデューサーの血が騒ぎ出し、凝りだしたというか」
誰が〈月刊 THE KEBABS〉をやろうって言い出したんですか?
佐々木「その名前を言ったのは俺だった気がするけど、アイディアは田淵さんです。それこそライヴができなくなるのが嫌だったし。曲を覚えておくにはリハじゃなくてライヴをやり続けたほうがいいから、毎月新曲やるぐらいやっちゃおうか、って」
鈴木「で、お題も募集してた」
田淵「確か去年の12月だったかな。配信ライヴみたいなことをやったんですよ。ライヴはちょっとやりづらいけど、配信でもけっこう面白くできたんです。だから、とにかくできる時にライヴをやろう、って決めて。年明け、1月の浜松が最初のライヴだったんですけど、その時に〈さて、今年ケバブスは何をやりましょうか〉って話になって。その中で、毎月新曲出して、それを物販で売るのがいいんじゃないか、って言い出したんです。要するに、地方にもライヴで行きたいけど、この状況だとまったく利益が出ない。それでもやりたいから何か方法ないのか考えてたら、じゃあ物販で新曲売れば、地方行けるんじゃないか、って。そういう現実的な話と同時に、僕、共犯関係をみんなと結びたかったんです」
共犯関係?
田淵「ユニゾンでもこういう表現するんですけど、みんなでこのプロジェクトを楽しもうとしている、そんな空気にしたかった。だから〈月刊 THE KEBABS〉は毎月配信して、ファンから出してもらったお題をテーマに曲を作って」
で、それをレコーディングしようと思ったら、4人でスタジオ入れない。
田淵「スケジュールが合わなくて」
佐々木「それに、もっとドライな感じだったはずのケバブスも、1年やって、ツアーが飛んで、その代わりにやれることをやっていくうちに、一緒にいる時間も増えてきて、思いもしなかった信頼関係みたいなものが出てきちゃって(笑)。もちろんミュージシャンとして信頼してるけど、人としてももっと。こないだ北海道行った時とか、新井さんが『俺、今めちゃくちゃ忙しいんだけど、これでいいのかな……どう思う?』って、マジな悩みをポロッと言ったりして(笑)」
ははははは。
佐々木「そんなこと言われたら『俺も最近、こういうこと考えてて』って、今まで以上に腹割って話して。みんな提案しあえる関係になってきてるから、もう1歩攻めてもいいんじゃないかって」
鈴木「たぶん、みんな気楽に楽しくやろうよ、って感じが大前提にあると思うので、今回たまたまそういう方向に進んだだけかな」
田淵「あと、知らない引き出しをみんないっぱい持ってるから、勉強になるなって気持ちで参加できる。ヴォーカル3回録って、その3つを全部重ねる、そんな曲やっていいんだ、とか(笑)。でも面白ければそれでいい。新井くんがレコーディングで試したいろんなことや、TDやマスタリングでのアイディアを勉強して、今度別の現場でそれを偉そうに言うから(笑)」
はははははは。だから今回、レコーディングは4人バラバラでも、面白くやれたと。
鈴木「あ、ドラムとベースは一緒でした」
田淵「そう。僕と浩之さんのスケジュールが合う日を優先してスタジオに入って。その日に佐々木が来れる時は来るけど、来れない時は別の日に歌入れ。新井くんはスタジオ入れる日にまとめてギターを録っておく。レコーディングの後半はとくにそうでしたね」
佐々木「だからヴォーカル入れる頃は、ほぼ曲が仕上がってるんですけど、毎回びっくりするんですよ。シンセ入ってるし、ギターはめちゃくちゃ重なってるし、ドラムソロもいっぱい入ってて、知らないうちに曲が進化してる(笑)」