NITRODAYのヴォーカル&ギター小室ぺいが、自身が気になったものを独自の視点で綴っていくWEB連載。今回は、初の歌集ついて、言葉を紡ぐ彼の思いを綴ります。
#19「歌の道は歌(カノミチハウタ)」
――31の長さの器に言葉を注ぎ込む。
蓋をきゅっと閉じればすべて輝きはそのままになる。――
この度歌集を完成することとなった。元来のきっかけは今年の頭の方にまで遡る。
ニ、ゼロ、ニ、ゼロという数字の並びに、歳が二十を数えたこともあって、なにかこの年は特別なような気がしていた。作品でも何でも残してやろうと、要するに意気込んでいたのだ。
短歌自体は高校で先輩や友人の縁があり少々馴染みはあった。が、自分の興味というものがずっと音楽の方面に傾いていたため、あまり深々とその道を見ることはなかった。
実に今回も当初は、その時既に取り掛かっていたアルバムの歌詞を考える手伝いにならないだろうかとの思いで短歌を作り始めることにしたのだ。実際しばらくぶりに短歌を作ってみる心地は新しい土地の空気を吸った時のような発見と郷愁に満ちていて、気持ちの良いものだった。
できるだけ些細でどうでもいいと感じるようなことを歌にした。重大なことは放っておいても覚えていられる。だがそうでない、忘れ去られそうなものたちは誰かがとっておかなければ無かったことになってしまう。野球の放送をハイライトで見る。大勢の人にインパクトのある重要な局面以外はそこにはない。抜け落ちたベースカバー、ファールチップ、あるいはその日までの練習、本当は存在していたのに。自分の命くらいはありたけ覚えていたいのだ。
そして作歌に対しいつからか抱くようになったイメージについて。
理科室の棚に並んでいたような細長いガラスの試験管。一見なんでもないような手のひらにおさまる普通の透明な筒。よく見ると五、七、五、七、七と目盛りが刻まれている。そこへゆっくりと言葉を注ぎ込み、蓋をする。すると不思議なものでその順番、分量、状態など条件が重なった時、中身同士の混じり合いは効果的な化学反応(マジック)を確かに見せてくれる。ただ短歌における反応式はあらかじめ神でさえ知ることはできない。それを見つけていくという喜びもまた少年の時のようであるのだ。
そんなことを思いつつやはり季節は過ぎてゆく。その大きな流れに身を運ばれ切ってしまわぬよう楔として2020年秋 、“イン・マイ・ヘッドセット”を残しておきたいと思う。
水彩の白の絵の具が切れたとき青春part.2が始まる
(本文より)
Information
小室ぺいによる「イン・マイ・ヘッドセット」(短歌48首+詩4篇)発売中。詳しくはこちらをご覧ください。
「人にやさしく/ホームラン!」が配信中。
小室ぺいが出演する映画『君が世界のはじまり』(原作・監督:ふくだももこ、主演:松本穂香)のタイアップ楽曲として、THE BLUE HEARTSの名曲「人にやさしく」をNITRODAYがカヴァー。「ホームラン」は、ミドルテンポでメロディアスなサウンドと決意表明とも取れる歌詞が印象的なNITRODAYの新曲。
NITRODAYの楽曲はこちらをチェック→ https://ssm.lnk.to/nitroday
NITRODAY オフィシャルサイト https://www.nitroday.com/