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CRYAMYの新作「GUIDE」。どうしようもない男が唄う、あの日の記憶と感情について

text by 金光裕史

このバンドが放つ切なさは、自分のことが嫌になって泣いた、あの日の感情に似ている。そして彼らは、どんなに自分に絶望して、もう死にたいと思っても、「生きててよかった」と喜びを噛みしめる日がきっと誰にでもあることを、クソまみれの姿で教えてくれる。綺麗事なんかじゃない、人間の嫌な部分を誰よりも知っているから、そして自分にもそんなところがあるとわかっているから、どん底から見上げる希望は、小さな光で輝いている。ライヴ会場と通販のみでリリースが予定されているCRYAMYのセカンド・シングル「GUIDE」に収録された4曲もそうだ。カワノ(ヴォーカル&ギター)は本当にどうしようもない男だが、だからこそ、マイノリティにしかわからない傷の痛みに涙を流す。演奏は勢い重視だし、歌だって決してうまくない。でもそんな彼らの曲が胸を掴んで離さないのは……何度も言う。これはあの日の僕だからだ。



(これは『音楽と人』7月号に掲載された記事です)



近況を聞かせてください。


「僅かな貯金がなくなりました(笑)。アンプを買おうと思って、品定めしてたんですよ。エリック・クラプトンが好きなんで、ブルースブレーカーが欲しくて。探してたら15万ぐらいで出てたから、思い切って買おうとしたんですけど(ツアーの)2公演が延期になって。当てにしてた金が入ってこず、家賃と生活費に消えてしまい……」


残念ですね。


「それ以上にライヴができないのが悲しいです。個人的な話ですけど〈#3〉(註:昨年末リリースの2nd EP)は、自分の中でけっこう大事な作品だったんで」


どこが大事だったんですか?


「作詞とか作曲って、みんなモノ作りとして捉えてますよね。こういう曲にしようとか、こういう歌詞がいいとか、文学的なフレーズ入れようとか。妙な作為が見えるものが多くて。僕にはあんまりそういう感覚がないというか、歌詞を思ったまま書き殴って、無理やりそこにメロディとコードを当てるんですね」


だから生々しくていいんじゃないですか!


「個人的な愚痴みたいなもんですよね。自分なりの作品に昇華したいと思ってるのに、どうしても落とし込めなくて、感情を書き殴ったような歌詞になってしまう。ずっとそうだったし、〈#3〉ももちろんそういう形で書いてたんですけど、開き直ってバーッてやってるものが不思議と受け入れられて、チケットも売り切れるようになって……CRYAMYのお客さんってどうかしてるな、って(笑)」


何も昇華していない、自分のウンコみたいな表現を認めてくれて。


「そう、ウンコなんですよ(笑)。それを表現として昇華するとしたら……ってずっと考えてたんですけど、なんかライヴやってて思ったんですよね。CRYAMYの曲が、聴いた人の人生において、こういう歌が聴きたかったっていう思いと、僕の好き勝手に吐き出した愚痴が重なった時、初めてウンコじゃなくて、表現になるのかもなって。だから最近は、小難しいことを考えるのをまったくやめてしまいました(笑)」


それでいいと思います。


「ありのままでいいですよね。なんか最近、ギターソロはないほうがいいとか、すぐ歌から入ったほうがリスナーに引っかかりやすいとか、そういう作曲マニュアルみたいなのが溢れてて、すごく気持ち悪いんです。おまけにコロナでしょ。このまま自粛要請が続いていったら(註:5月中旬に取材)、レコーディングもリハもできないんだから、バンド人口なんて減りますよ。宅録が当たり前になって、4人がせーので音を出すバンドなんて、どんどん主流じゃなくなっちゃう。じゃあ何で俺はバンドやってるんだ?って問いかけざるを得ないですよね」


その答えは?


「でもやるんだよ、って感じかなあ(笑)。漠然とやっちゃいけないと思うし、なんか……クサいけど、バンドはロマンなんですよ。こんな俺の愚痴を並べた歌詞でも、誰かの心の一瞬と交われるかもしれない、って」


ロックって、お前はお前、俺は俺でしかないって、同じじゃないことを認め合うところから始まると思ってるんだけど、それが音楽を通して〈あ、一緒だ〉ってなれる瞬間が美しいんだよね。


「そうなんですよ。だから、俺が唄ってる勝手な気持ちが、たまたま聴いてる人の何かに刺さって、同じ気持ちになれたらいい。それがほんとに俺がやる意味かなって」


そうだね。


「そういえば、太宰治が〈芸術家はもともと弱い者の味方だったはずなんだ。弱者の友なんだ。ここが出発で、これが最高の目的なんだ。こんな単純なこと、僕は忘れていた〉って書いてたんですけど(註:『畜犬談』)、吐き出した愚痴のような言葉を唄う身からすると、すごく胸に残る文章で。仮に今の主流が配信ライヴに切り替わって、ライヴに行くことなんて古いし、そもそも危ないって空気になったら、じゃあ少数派の、今までライヴでその気持ちを発散していた弱者の気持ちはどうなってしまうんだ、って思う。社会は主流に合わせて動いていくけど、僕らはそこに乗り切れなかった人たちの気持ちと近いと思うんですよね」


たぶん、カワノくん自身がそうなんだろうね。


「そうなんですよ。僕、小さい頃、小児肺炎にかかって身体が弱かったんです。すごく痩せてて背も低いからずっと虐められてて。それを変えたくて身体を鍛えようと思って、格闘技を始めたんです。そこそこ強くなったんですけど、そしたら歪んできて。人殴ったり、悪い先輩とつるんで学校も行かなくなったんですね。なんか、そのまま社会に参加できないまま今に至ってることに、妙なコンプレックスがあるんですよ。しょせん落伍者だし、最低な人間だと思ってるし」


そういう視点からしか物を見れない、と。


「そう。人に飼われてる犬って、よしよしってされたらそれなりに甘えることができるじゃないですか。僕は保健所で殺処分が決まってる犬みたいなもんで。だから視野が狭くて、誰も信用できない。そんな自分がすごく嫌。本音は心開かれたいんですよ」


でもある程度認められてきて、理解者が出てきて、お客さんも増えてきた状況になると、その視点が変わってこない?


「そう思ってたんですよ。お客さんが来てくれて、僕は今、人から必要とされてるんだって、そう思うようになるのかなって。時々そういう感覚にいってしまいそうになるんですけど、僕としては、お客さんが僕のことを一生懸命助けようとしてくれてるように感じるんですよ。彼らは彼らで、もしかしたら僕たち私たちの、同じような感情を唄ってくれてるって、そう思ってくれてるんでしょうけど」


うん。だと思うよ。


「だから交わってくれた人たちには誠実でいたいんですよね」


すべてが終わる瞬間に「生きててよかった」って言えるかもしれない。それがこのバンドの芯にあるもの

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