おカネない、雨降ってる、とかはどうにもできひんけど、音楽聴くぐらいはできる。音楽は気持ちを押してくれるし、僕らの音楽もそうでありたい
でもやっぱり、特殊っちゃ特殊ですよね。当時、同級生が何を聴いていたかと比較すると。
タダミ「でも、昔の人も今の人も、感じてることは一緒のことだったりするんだなあ、と思ったり。歌詞に出てくるものは違うんですよ、たとえば公衆電話からポケベルになったり、ポケベルから携帯になったり。でも、思ってることは一緒やし、ちょっと恋心を抱いたりもするし、野望を抱いたりもするし。そういうところは、今の音楽とそんなには変わらないと思うんですけど、その頃の音楽のほうが……やっぱり、身体に入る感じがあるんですよね、聴いてて。それは、なんなんやろ……あの、あまり、ものに溢れていなかったからなんかな。楽器の設備とかも、今ほどないじゃないですか。ない中で、できる限り頑張ってらした時代のものやから、本気になってる感じがめちゃめちゃ伝わるというか」
サクラ「そういう音楽って、今に残っている理由があるから、それを探してるんですかね? 店なり、建物なり、映画なり」
タダミ「ああ、古いもので、今でも残ってるものには、残ってる理由があるんやろうと」
サクラ「そうそう。でもほんま、なんで白黒の写真とかが好きなんやろ? わからないです。難しい……なんでやろ?」
タダミ「色とか気になるんちゃう? 白黒の」
サクラ「気になる、めっちゃ気になる。聞いたことあります、お祖母ちゃんとかに。『昔って色、どんなやったん?』『今と同じよぉ』って言われるんですけど。なんでそうなのかはわからないですけど、気がついたらそっちに足が向いたり、耳が向いたり、昔のことを調べたり。そういう人間だから、そういう曲を書いてしまうんかなあ」
4曲目の「あぁ御堂筋」とか、まだバンドブームすら来てないですもんね(笑)。それよりだいぶ前の昭和。
サクラ「これは、大阪の曲をすごい作りたくて。もう〈うち〉と〈あんた〉にこだわって」
パーカッションの鳴りとか、すごいですよね。
タダミ「はははは。そう、すっごいムード出てますよね。これ、三沢またろうさん(昭和の時代から活躍する超大物パーカッショニスト)なんですよ。もう大感動で」
サクラ「またろうさんにも『歳、いくつ?』って言われました(笑)。スナックとかで唄ってほしいですね、この曲」
たとえばコンテストとかイベントとかで、同じぐらいの年代のバンドと一緒になるじゃないですか。浮き放題でしょ。
タダミ「(笑)そうですね。でもそれがね、よかったのか、コンテストでも大ウケしたり。収穫なしってコンテストは、今までなかったですね、このおかげで」
サクラ「ほかのバンドマンもお客さんも、河内REDSをすごいおもしろがってくれるというか。パンク畑の人も、企画に呼んでくれたり、歌ものの人も呼んでくれたり」
あと、「おかん」っていう曲が、強烈ですけども。
タダミ「この曲は、僕たちがメジャー・デビューをつかむきっかけとなったオーディション番組で――寺岡(呼人)さんが審査委員長で、課題曲として1曲作ってきなさい、という回があったんですよ。各バンドにテーマが与えられて、『河内REDSはお母さんの泣けるバラードを作りなさい』と。で、この曲を作ってデビューをつかんだので、僕たちにしても、すごく大事な曲なんですよね。ずっと音源にはせずにいたんですけど、このアルバムに入れることが決まって、ほんとにうれしくて」
〈「あんたの顔も名前も全部 忘れる日が来たら 殺してください」/そう言った/おかんは淋しそうに〉というラインが──。
サクラ「この部分は、タダミくんが作詞です」
タダミ「これは、うちの家の約束なんですよ、実は。倫理的によくないことかもしれないですけど」
でも、高齢化社会ですしねえ。
タダミ「そうなんですよね。僕、以前、介護の仕事をしていて。やっぱり、親を入所させる方、多いんですよ。で、お子さんのことをお子さんってわかっておられない方もいて。そういうのを間近で見ていると、考えることも多くて。っていう時に、こういうお題をもらったので、自分の家のことも含めて書いたんですけど。でも、河内REDS、こういう曲はけっこう多いんですけど、今回のアルバムの1曲目、表題曲の〈時計じかけのオレたち〉みたいな曲は、初な気がするんですけどね。サクラくんが書いたんですけども、何か、社会に問いかけてる感じ、あるやん?」
サクラ「社会というか、社会の中の自分かな。これ、よく行く立ち呑み屋で、ビール呑んで、なんか食べながら、ニュースを見ていて……〈やばいなあ〉と思うんやけど、目の前はすごく平和。で、明日はバイト、イヤやなあ、でももっとイヤなことが起こってる、地震とか。でもそれ、テレビの向こう側やし、遠くしか感じられない自分がいたりとか。でも、いつか自分もそういう、死にかけるような目に遭うこともあると思うし。その時に自分は何を思うか、でもここは立ち呑み屋で、〈美味しいな、これ〉ってまた戻るというか。そんな時にできた歌で。ニュース、構成がよくできてるなあと思うんですよね。暗いニュースを何本か取り上げて、最後にパンダの出産のニュースで『新しい命が生まれました』みたいな。で、ホッとして天気予報見て終わり、うまいことできてんな、あれが最後に暗いニュースやとモヤッとするから、みたいな」
モヤッとさせないように終わろうというのが、逆に怖い気もしますけどね。
サクラ「そう、そうなんですよね。人生も、最終的にはニュースみたいにハッピーに終わればいいんですけど、そうとは思えないからこの曲ができた、というか」
タダミ「でもこの曲、唄い出しとかすごくどんよりした感じやねんけど、サビがすごくパーッと晴れていくような感じやん?」
サクラ「うん。あの、悲しい曲とかも、僕、絶対、救いがほしいんですよ。悲しいだけで終わるみたいなんが、すごいイヤで。つらいだけじゃ、イヤじゃないですか。つらいだけの時も、もちろんありますけど。おカネもないし、雨も降ってるし、とかは、どうにもできひんけど、音楽聴くぐらいはできるから。それが気持ちを押してくれるし、僕も押してもらったし、宮本(浩次)さんとかに、つらい時。そういう力はあると思うんですよ、音楽って。僕らの音楽もそうでありたいなと思います」
目標とか夢は?
タダミ「やはり、僕の野望としては、国民的なバンドですかね。若い人たちにウケるのもうれしいんですけども、僕たちの親世代とかにもウケるようなバンドになりたいですね。そういうバンドって少ないと思うんですよ、今。家族で楽しんでもらえるようなバンド」
サクラ「全国区の大阪のバンドになりたいです。あと僕、甲子園球場でライヴやりたいです」
タダミ「やってみたいですね。その時は観に来てください(笑)」
文=兵庫慎司
NEW ALBUM『時計じかけのオレたち』
NOW ON SALE
01 時計じかけのオレたち
02 市民プール
03 オリオン座
04 あぁ御堂筋
05 僕はラジオ
06 トンカツ
07 東京ガール
08 おかん
09 蛍
10 レッツゴー!繁華街
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