明日、メジャーセカンドアルバム『LOOKiE』をリリースするBiS。そこには、苦しい中でも必死にもがき、前を見て駆け抜けようとする、今の彼女たちの姿が投影されている。昨日、恵比寿リキッドルームにて開催された、初の全国ツアーの最終公演にも、それは表れていた。昨夏デビューしてからの約半年間、悩み、課題に直面しながら進んできた中で、メンバーひとりひとりがBiSに、そして何よりも自分自身に向き合い、新しい感情が生まれたり、たくさんの発見があったのだろう。今回は、その変化について語ってもらった、ネオ・トゥリーズのソロインタビューを再掲載する。BiS加入をきっかけに、新しい世界へ踏み出し、さらにその先へ行こうと前を見つめる彼女の言葉に触れてほしい。どんなに辛くても、傷ついても、彼女たちはこれからも夢の武道館に向かって走って行くはずだ。加えて、明日発売の音楽と人3月号には、トギーのインタビューを掲載。こちらもあわせて、彼女たちのBiSへの思いを感じ取ってほしい。
(これは『音楽と人』2020年1月号に掲載された記事です)
アイドルグループ・BiS。2010年の結成以降、幾度となく解散と再結成を繰り返してきた。そうして今年8月、応募総数2000名を超えたオーディションで選ばれた新メンバーにより、第3期BiSが本格始動。ようやく軌道に乗り始めた今、メジャーファーストシングル「DEAD or A LiME」をリリースした。激しくソリッドなロックサウンドを叩きつける表題曲は、何がウソか本当なのかわからない、錯綜する現状に対して一石を投じ、真実を探し出そうとしている。そんな歌を唄う彼女たちの心境を探るべく、グループの中でもっとも消極的な性格といわれる、ネオ・トゥリーズに初取材を敢行した。これまで外の世界との繋がりを断っていた彼女は、BiSの一員になったことで自身の世界を切り拓き始めていた。自らの意志と行動次第で未来は変えていける。その思いを確かにした彼女が、これからどう化けていくのだろうか。その可能性は未知数だ。
「(12月号の目次を読みながら)うわあ。取材していただけて嬉しいです! ちょうど読ませていただいていたんですよ」
そこに載っているアーティストでよく聴く人たちっていますか?
「KEYTALKさんとかブルエンさんとかよく聴いてました。でも今は洋楽に興味があって。サウンドプロデューサーの松隈(ケンタ)さんに、〈DEAD or A LiME〉はマリリン・マンソンさんを意識して唄ってほしいって言われたので、実際にミュージックビデオを見させていただいたら、カッコよすぎて。そこから聴くようになりました」
聴いていて面白いなと感じますか?
「はい。今まで全然触れてこなかったので新鮮で。洋楽を聴いてから英語を学びたいなと思い始めたりしています」
今作の資料で、ネオさんは消極的な性格だって紹介されていて。これまでも物事にあまり興味を示せなかったとも聞いていたんですけど、今、それとは真逆ですよね。
「そうですね。今までは物事に一切興味を持てなくて。人にも興味がないし、実際に人とも全然しゃべらず関係を持たなくて、ひとりで過ごしていました」
学生時代はずっとそんな感じだったんですか。
「そうです。お弁当を『一緒に食べよう』って友達に誘われても『ひとりで食べる』って断ったり、何か発表がある時は、人前に出て話したくないからっていう理由で学校を休んだり(笑)。目立ちたくない、できれば自分に気づいてほしくない、話しかけてほしくないっていう気持ちが強かったんです。人と話しても何もない、何も生まれないっていうふうに思ってしまっていたんですね。人を信用できないことが多くて」
それはどうしてなんでしょう。
「両親とすごく仲が悪かったんです。一番味方でいてほしいのに、自分を拒否されてる感じがしてしまって。だから自分のことはわかってもらえないんだ、もう無理だなって諦めてしまいましたね」
そういうことがあっても、学校にいる歳の近い友達になら自分をわかってもらえるかもしれないじゃないですか。学校は学校で居心地が悪かったんですか。
「そういうことを考える以前に、会話をしたくないというか、する必要がないって考えてしまって。その時の自分は、今後の人生で友達と関わることはないなって考えてしまっていたんです」
今仲良くしているのも一時的なものなんじゃないかなって感じてしまった。
「はい。一生、一緒にはいないでしょうって」
そういうふうに気づいたきっかけとかありますか?
「ほんとに突然そう思うようになって。でも家のことがあって、自分のことはわかってもらえないって諦めて、人と全然関わらなくなってしまったのかな。でも、そんなふうに何にも興味がない中で唯一音楽だけが好きだったんです。自分が好きになった曲は1ヵ月間、毎日ずっと2時間聴き続けるみたいな。で、次の曲にハマったらその曲を1ヵ月間毎日ずっと永遠に流し続けて」
何の曲をエンドレスで聴いていたんですか?
「THE ORAL CIGARETTESさんの〈容姿端麗な嘘〉、KEYTALKさんの〈スターリングスター〉とか、[Alexandros]さんの〈Run Away〉、クリープハイプさんの〈栞〉とか。そういう邦楽ロックを友達がカラオケで唄っているのを聴いてハマったんです」
比較的アップテンポの曲が好きになりやすかったんですね。
「そうですね。ゆったりしたバラードとかはあまり聴かなかったです。そのあと偶然WACK(註:BiSの所属事務所。BiSHやGANG PARADEなど多数の女性グループが所属している)に出会って。最初に知ったのがBiSなんですけど、当時、今GANG PARADEにいるカミヤサキさんっていう坊主頭の方が一時的にBiSにいたんですね。女性のアイドル、しかも坊主のアイドルがロックな曲を唄ってる!って驚いて、気に入って聴いてたら、BiSHにも出会ってすごいハマってしまったんです」
BiSやBiSHは、それまで聴いていたものとは全然違う衝撃でしたか。
「そうですね。バンドを聴いていた時はアイドルに一切興味がなくて。アイドルっていうと可愛い衣装を着て、キラキラしていて明るい感じのイメージがあったんですけど、BiSは真逆で。めちゃくちゃカッコいいな!って衝撃を受けて、WACKのアイドルをいろいろ聴くようになりました。曲自体が自分にすごくハマるし、好きだなと思えることが多かったんです。それでカラオケに行ってWACKのアイドルの歌を唄ってみたら楽しすぎて、どんどん自分も唄いたい!っていう気持ちが強くなりました。最終的にサウンドプロデューサーの松隈さんが作る曲を唄いたい、松隈さんのもとで絶対にやりたいなっていう気持ちが出てきて、WACKに入りたいなと思うようになったんです。歌手になりたいとかじゃなくて、ここに入りたいっていう」
アイドルになりたいというより、WACKの一員になりたかったんですね。
「はい。だからWACKのオーディション以外、他は何も受けてないです」