本当はちゃんと話したいの。このイベントの打ち上げでもいいんだけど。いろいろあったしね。だからちゃんと話したい (峯田)
2人もこの男から多大な迷惑を被ってると思うんですが。
TOSHI‐LOW「峯田とは呑みに行ったことねぇもんな」
峯田「うん。TOSHI‐LOWくんに限らずあんまり呑みに行かないからな、俺。でもご飯食べたりしたいですけどね」
TOSHI‐LOW「行こうよ」
峯田「うわぁ……ふ、2人で?」
あはははははは!
TOSHI‐LOW「じゃあ将司も行こう(笑)」
将司「俺じゃ緩衝材にならないですよ(笑)」
峯田「今さら2人で会うの恥ずかしいよ(笑)。話したいことはいっぱいあるんだけど。でもいろんな邪魔してるものを取っ払ってくれないと。そういうのTOSHI‐LOWくんの中にあるからな。照れ隠しで」
TOSHI‐LOW「もうないよ、べつに」
峯田「本当はちゃんと話したいの。このイベントの打ち上げでもいいんだけど、TOSHI‐LOWくんは先輩だから、一応ね。いろいろあったしね。だからちゃんと話したい」
TOSHI‐LOW「だから行こうって言ってんじゃんか(笑)。今嫌な顔したのおめえだろ(笑)」
峯田「だって俺、お酒呑まないから!」
TOSHI‐LOW「じゃあ一緒にランチ行こ」
OLか(笑)。あ、弁当作ってもらえば?
TOSHI‐LOW「俺、大人には作んないから……そういえば金光、今日の取材でも、将司と峯田に弁当作ってこいとか言いやがって! そんな簡単に俺の弁当が食えると思うなよ!」
峯田「昔から作ってたんですか?」
TOSHI‐LOW「息子が小学生の時から。もう中2だけど」
峯田「すごいねえ。バンドやって、ギター弾けて、弁当も作れる! いろんな才能ありますよね」
将司「繊細さと大胆さと怖さとやさしさが同居してますよね」
TOSHI‐LOW「そういうのを才能と言うんだったらそうかもしんないけど、秀でてる何か、とかなくない? この3人にもそういうの感じないし。ただ、自分の中にある弱点とバランスとって、人様に見せる何かにする努力と発想で生きてると思うけど」
将司「どれだけ自分を理解できてるのか、ってことだと思うんですよ。そこがTOSHI‐LOWさんはすげえんじゃないかな」
TOSHI‐LOW「でも3人とも持ってる数値はあんまり変わらないと思うんだよ。そのふぞろいのバランスを自分の弱点と見るのか、それが自分の形だと思って見るのかで、そういうものすら武器にできるかどうか決まるじゃん」
峯田「辞めないで続けることだって才能だと思うしね。今も残ってる人たちは、それだけですごいですよ。自分が20代の頃、気に食わねぇバンドがいっぱいいたけど、もう残ってるバンドに対してはそういうのないな。久しぶりに会ったりすると〈ああ、生き残ってるな〉って。それだけですごいなって思うよ。残ってるだけで。やってるだけで」
TOSHI‐LOW「峯田の言う通りで、やっぱり続けることができてる人は何かあると思うよ。それを才能と呼ぶのなら、続ける才能があったってことだから。やっぱ続けるってさ、弁当もそうだけど、何でも続けてればある程度できるようになる部分ってあるのよ。でも、できるようになっちゃうから失う衝撃もあって。それが自分のジレンマになったりもするじゃん。歳とってるのにまだ青春の歌を唄わなきゃいけなかったりさ。でも、それを矛盾してるととらえることもできるけど、今の歳になったから、それをもっと理解して青春を唄えるようになったって考え方もできる。それは人それぞれだと思うのね。でもどうせ歳とっちゃうんだから、そこは理解しつつやり続けたほうが、俺は面白いと思ってるけど」
峯田くんは今も「BABY BABY」を唄い続けてますけど、そういうことは感じますか。
峯田「うん。何年かすると、色が変わるもんね。中身はまったく変わってないんだけど。聴いてる人はその時代時代で変わるけど、曲作った本人は変わらないから。それは音楽の面白いところっていうか。あの曲を作った19歳の時にはもう戻れないんだけど、でも唄ってる時に、あの時の景色がフッと浮かびながら唄ったりもする。それがいいんだよね」
将司「俺らの昔の曲は、自分にあたったり、闇とか孤独を見つめてる曲が多かったから、今それを唄うとなると、自分の気持ちが追いつかないっていうか。いつまでも閉じこもったままの感じでやんなきゃいけねえんだって、それに振り回されてた時期もありましたしね。でも何年か経って、その曲たちを俯瞰して見ることができた時に、この孤独とか闇っていうのは、自分がうまく昇華して、ガチで対峙することによって、聴いた人に寄り添えるものになるのかもしれない、と思って。じゃあ頑張って唄おうかなって気持ちになれたかな」
みんな歳をとって成長するということですね。
TOSHI‐LOW「自分たちが長く続けられた……それがいいことかどうかわかんないけど、やっぱり続けてる限り、今の時点から見ることができるんだよね。その延長線上でやれてるうちは、その時思ってた孤独を今見れるから、過去を変えることができる気がするのね。その時はめちゃくちゃ嫌でさ、それを唄って吐き出してたのかもしれないけど、今はその自分をわかった上で、その時にこれを唄ったってことはこうだったんだな、負の感情を撒き散らしてたのも今の自分でいるための通り道だったんだ、って認めることができる。でも辞めてしまえば終わっちゃうじゃん」
続けてるから見方も変わるしとらえ方も変わる、と。
TOSHI‐LOW「そうすると今作ってるものも、点ではなくなる気がする。若い時は点じゃん。今日終わってもいいみたいなものをみんな書いてるわけだし、出しきっちゃえばいいし、未来のことなんか考えてないじゃん。なのに歳とって作ってくものはさ、みんな永遠性が出てくるじゃん。峯田の〈恋は永遠〉や将司の〈心臓が止まるまでは〉とかさ、その先を考えてるから、その永遠性が出るわけじゃん。だから面白いんじゃんって」
お互いのバンドへの見方もだんだん変わってきますよね。2011年の震災当初は、いろいろありましたけど。
TOSHI‐LOW「そんなん別にねえよ。なあ?」
峯田「全然。すっごい見てくれてますからね。それにずっとやってるしね。あの時言ってたの。『俺ら、今だけじゃねぇから。ずっと(復興活動)やってっから見とけよ』って。すごいよね。音楽しかないって言って音楽やってた若者がね、いろんなものとぶつかってね、自分の中の世界と戦ってた人が、いよいよ外の世界と戦った気がしたんですよ。それを見せつけられた」
TOSHI‐LOW「あれはな、雑誌に載せなきゃいいことをひと言載せたからいけねえんだよ。編集者が悪いな。削りゃよかったのに(笑)」