おかもとえみは万華鏡みたいな人だ。とにかくいろんな表情を持っている。
かつてはTHEラブ人間でベーシストとしてバンドを支えていたし、さらに遡るとギャルサーに加入するほどディープなギャル時代を過ごしてきた。その一方で、ゾンビを愛してやまない不思議ちゃん的嗜好を持ち合わせていたり、最近はSNSで友人のKAE(ACRYLIC RESIN ARTIST/BRAND DIRECTOR)にスタイリングされた写真を公開したのだが、これまで見たことのなかった新鮮な姿に、思わず同性の筆者でさえもドキリとしてしまった。
極めつけは、9月25日にリリースされたフレンズのセカンドプチアルバム『HEARTS GIRL』だ。曲によって唄い方を変えながら制作に臨んだという本作は、音楽を聴いているのにドラマを見ているような感覚に陥ってしまう。曲ごとに全く違う登場人物が浮かんでくるのだ。それほどまでに、彼女の歌にはとてつもない表現力が宿っている。
しかし何よりすごいのは、いろんな表情を持っている自分自身に潰されないところだろう。彼女の場合、才能に恵まれたことで苦しめられたり、やりたいことが多すぎるがゆえに悩みに悩んで、結果的に閉じこもってしまうなんてこととは一切無縁。どんなことにも果敢に挑んでいく印象だ。
そんな彼女でさえも、もちろん落ち込んだり悩むことがある。しかし、そのたびにフレンズやファンの存在に助けられるし、自分にとってバンドは「太陽」だと彼女は語る(なので、弊誌公式ツイッターでも太陽を意識したポースでオフショットを撮影した。決して気功を使いこなせる仙人を意識したわけではない)。
彼女のバンドに対する思いとパーソナルな部分を紐解くべく、単独インタビューを敢行。えみそんワールドにどっぷりハマりつつ、彼女の魅力を再確認していただきたい。
『HEARTS GIRL』、すごくキラッキラしてますね。音楽を聴いてるのにドラマを見ている感覚というか。そのくらい、おかもとさんの歌の表現力が凄まじいです。
「嬉しい!」
この作品を作ろうと思ったきっかけは何でしょうか。
「ツアーをやるにあたって何か作ろうって話をずっとしていて。ひろせ(ひろせひろせ/MC&キーボード)とLINEしてて〈何かテーマある?〉って聞かれた時に、バンドをやってきたこの4年間の、みんなのフレンズとしての蓄えをどんどん取り入れていって、今が芽を出す時だなって。で、発芽っていう言葉がすごく頭の中にあって。今回のツアーでも一皮剥けるというか、1個芽が出たフレンズを見せたいと思って。はつが、はつが、はつが……『HEARTS GIRL』だ!って」
はははは。そこからなんですね(笑)。
「そこから生まれていきました。かと言って、曲を発芽に寄せていったわけではなくて。みんなで出し合った中で、自分たちの良さがより出た、勝手に発芽していったような曲が揃いました。今回は塁くん(関口塁/ドラム)が作曲したり、太郎くん(三浦太郎/ギター&ヴォーカル)の作詞作曲だったり、他の人に頼んだ作詞の曲もあって。フレンズってものの中で自分たちがどんなことをできるかな?って考えて、個性を伸ばしながらやれたと思います。塁くんは初めて歌を唄ったし。みんなでカラオケに行った時、塁くんがYogee New Wavesを唄ってて、低音が響くスウィートボイスがすごくいいなと思って、唄ってもらうことになりました」
普段からみんなで出かけることってあるんですか?
「それ以前に毎日会ってるし、遊びじゃないけどみんなで音鳴らしてる時も楽しいし。地方行ったら行ける人でご飯行ったりとか……そうやって自然と遊んでますね」
普段の制作活動と遊びが地続きというか。
「そうですね~。けっこう楽しみながらできてるかなと」
今作は最初に言ったようにドラマを見てる感覚に陥る曲が多いですが、こういう方向性にしようと思った理由は何でしょう?
「もともとフレンズのコンセプトの神泉系って、神泉から渋谷に向かうあのワクワク感みたいなのを常に大切にしてて。そのワクワク感とかドキドキ感が、よりキラキラした形で表れたのかなって思います。〈12月のブルー〉は男性目線で書いた失恋ソングというか。自分の中でそういう物語にしながら書いてたので、ドラマのようって言ってもらえるのはすごく嬉しいです」
どの曲も登場人物を思い描きながら唄ってるんですか?
「そうですね。例えば〈0:25〉っていう曲は、テーマが〈神泉の裏ギャング〉って太郎くんが言ってて。あ、裏ギャングかぁって思って、ちょっとワルめの女の人を想像したり。すっごくモテモテで、髪の毛全部コーンロウとか……」
けっこう具体的(笑)。
「あと何カラットのダイヤのピアスをつけてる、強いイイ女ってイメージで唄ってみました(笑)。他の収録曲に関して言えば、〈HEARTS GIRL〉は曲がひろせから上がってきて聴いた時に、ここまで超ポップな感じってフレンズにはなかったので、自分が歌詞を書くべきなのかな?ってちょっと悩んで。自分じゃない感じがしたのと、他の人の言葉でこの曲を聴いてみたいと思って、Kawataさん(S.Kawata/作詞家)がすごく好きだったので作詞をお願いして。Kawataさんの言葉を自分の中に取り入れて唄ってみました」
それって無意識に演じてるってことなんですかね?
「あ~、そうかもしれないです。演技とかやってみたいことがいろいろある中で、人の歌詞で唄ってみたいって気持ちもあって。あと、今回は曲ごとに唄い方を変えてみたり。アルバムを一貫してというよりは、曲ごとに向き合って歌を入れました」
表現力が増しているのはもちろん、最近はライヴを重ねるごとにおかもとさんが堂々としてきてるなって感じます。
「ライヴの時、前は〈何しよう……〉みたいなアタフタする瞬間があったんですけど、今は一つ一つの景色を大事にしてますね。喋ってない間もみんなをずっと見てるし、そんな瞬間も楽しめたり、人がすごいいる中でもワクワクできるような心になったかもしれないです。それが堂々としてきたところに繋がっているのかも」
例えば、フレンズが大好きなお客さん以外の人も観るフェス会場とかでも、そのスタンスは変わらないですか?
「うーん。普通に初めましての時あるじゃないですか、街とか呑み会で会ったりする時の感じというか(笑)。〈初めまして。やっほー!〉みたいな。せっかく観に来てくれてるので、仲良くなりたくて。そんな気持ちでみんなのことを凝視してますね」
凝視(笑)。
「できるだけみんなの顔を見るようにしてます。抱きしめたくなる気持ちで」
日常生活でも、初めて会う人に対しておかもとさんはオープンな感じですか?
「そう……日によるんですけど、たまーに閉ざす時もあります(笑)。喋れない日ってあるじゃないですか。〈あれ? 今日なんにも会話噛み合わないな〉って時は、ちょっと諦めます。でも基本はみんなと仲良くなりたいので、できるだけ知らない人とも喋りたいなって思ってます」
ギャルサーに入っていたこともありましたよね。ギャルサーって規模が大きいところはそのぶん人も多いけど、特に構えることもなく自然に入れたんですか?
「そうですね。ギャルサーに入りたいって友達が4人いて、それぞれ別々のところに入って」
あ、別々のギャルサーなんですね! みんなで同じところに入るんじゃなくて。
「確かに(笑)。友達もみんな勇敢というか……そうですね。今思うと一緒のところ入ればよかったなってめっちゃ思います(笑)」