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【音楽と人編集部コーナー】編集部通信

text by 宇佐美裕世

『音楽と人』の編集部員がリレー形式で、自由に言葉を発信していくコーナーがスタート。エッセイ、コラム、オモシロ企画など、編集部スタッフが日々感じたもの、見たものなどを、それぞれの視点で読者の皆さまへお届けしていきます。今回は新潟出身の編集者によるエッセイ。



〈原信〉〈セーブオン〉
自分にとって馴染み深すぎる、けれども東京では一切見かけない店名に心臓が跳ね上がった。
〈なにもない/あるといえば母校と実家くらい?〉〈もう夜なのに灯りがない気がしない?〉〈海 山 川 田んぼ 雪はあるけど/スキーもしない〉
そうそうそうそうわかるわかるわかるわかる!と、勢いよく共感したくなるようなあるある話の羅列に、思わずにやけると同時に堪らなく泣きたくなった。
新潟上越出身のバンド・My Hair is Badの最新作『boys』に収録されている「ホームタウン」の話だ。


この曲で椎木知仁(ヴォーカル&ギター)は、先ほど挙げた新潟県民しか知らないような固有名詞を使って、上越で過ごした時間や、「地元愛」と一言では言い切れない地元への思いを綴っている。大袈裟だが、この曲に痺れない新潟県民はいないんじゃないかと思う。かくいう私も新潟出身である。私は大学卒業までの23年間を新潟で過ごし、就職を機に東京に出てきた。就職は、地元を出ていく大きな理由ではあった。 その一方で、もっと広い世界を見てみたいと思っていた。 東京に行けば、ライヴにも簡単に足を運べる。見たことないものや人に出会い、刺激的な生活が送れるのではないか。おのぼりさん丸出しな発想だが、頭の片隅でそんな夢を見つつ上京した。しかし、いざ上京してみたら私は新潟が恋しくて仕方がなくなってしまったのだ。たしかに、東京には刺激がたくさんある。とにかく何でも揃ってる。電車も待たなくていい。良くも悪くもいろんな人がいる。テレビのチャンネルだってたくさんある。ライヴだって毎日のようにいろんなところで開催されている。夜も明るい。なのに、どうしようもなく寂しくなる。


そんな時思うのは、決まって、地元にいる家族や友達、数えきれないほど足を運んだショッピングセンター、何度も見たなんてことない風景、地元にしか売ってないB級グルメ、「いつまで放送してるんだ」とツッコミたくなるご当地CMなどなどだ。私は完全に、ないものねだり、隣の芝生は青い状態に陥ってしまったのだ。それがまだ上京して1年目、とかなら可愛げもある。私の場合、厄介なことに現在進行形なのである。ちなみに今年で上京して丸6年を迎えた。なのに、上京してから今日まで1~2ヵ月に一度は帰省している。帰省するたび、親や親戚からは冗談で「もう帰ってこなくていいよ」とか「仕事、クビになったの?」と言われる始末だ。私は定期的にこの「帰省」というイベントを迎え、新潟で鎧を脱ぎ捨てないと東京で戦えなくなってしまった。「戦えない」と言っても、私は別に何かに追われているわけでも、スナイパーでも軍人でもない、ただの会社員なのだが。


このような新潟ジャンキーの自分を変えてくれたのが、「ホームタウン」だ。私はこの曲を初めて聴いた日から、朝昼晩毎日聴いている。食事並みに自分の身体に取り込み、血肉と化している。きっと、再生回数はおぞましいことになっているだろう……と思いアプリを使って調べてみたら、我ながら狂気を感じる数字だったので伏せておく。自分が一体この曲によってどう変わったのかというと、地元を考える時間がいい意味で減ったのだ。この曲に込められた、椎木の「新潟を背負って進んでいく決意」に確実に背中を押された気がした。特に、曲中の〈また旅に出る その荷物をまとめる/ここから離れる 別れじゃなく 出発だ/勝手に上越を背負って 挑戦したい 成長したい/見たい 見せたい ホームタウン〉という一節は、自分にとってお守りのような言葉だ。当たり前だが、新潟はずっと新潟で、日本海に面したあの場所にある。家族だって元気な限り、そこにいる。だから恐れずにこっちで何でも挑戦して、なんなら新潟に恩返しするぐらいの気概でいないと!と、なんだか壮大な想いさえ自分の中で膨らんでくる。そんなふうに、この曲はどうしようもない自分を成長させてくれた。マイヘアにはこの場を借りてお礼を申し上げたい、ありがとうございます。3人は新潟の誇りだ。JR新潟駅の新幹線のホームとかにある「ようこそ新潟へ」的な看板とかに、もれなく彼らの写真をくっつけてほしいレベルだ。


家族、友達、好きな人、好きだった人、思い出の詰まった場所、青春時代――この曲を聴いて思い出すものは、人それぞれにいろいろあると思う。そういった自分の中の大切な記憶というのは、知らず知らずのうちに日々を生きる上での原動力にもなっていて、誰でもひとつは抱きしめながら生きているのではないかと思う。だからこの曲は、田舎に生まれた人にも都会に生まれた人にも、年代を問わず、きっといろんな人に響くはずだ。マイヘアの支持層といえば、圧倒的に若い人が多い。恋愛の歌をよく唄っている。よく聴きもしない人からしたら、そんなイメージを持っているかもしれない。しかし、この「ホームタウン」で彼らは、先ほど述べたような、帰ってこれる場所や原動力があるから自分たちはどこまでも行ける、自分たちは自分たちのままだ、ということを唄っている。その感情はとても普遍的なものだ。恋をしてる人だけじゃない。若者だけじゃない。このバンドは、これからもっと多くの人に愛される可能性を秘めている。と、今作『boys』で今さら彼らの魅力に気づかされたマイヘア新参者の私は思う。


このように、私はこのコーナーで「好きなもの」について語っていこうと思う。恥とかどうでもいいプライドは捨てて。初回である今回は、新潟とマイヘアについて長々と書かせてもらった。よく周りの人から言われるのだが、私は好きなものに対する思いの強さが異常らしい。編集部の人からも、「好きなものを語る時、瞳孔が開ききっている」と言われる。自分が嫌になることなんて、日常茶飯事。それでも、好きなものや人によって自分自身を肯定されている気持ちになれる。〇〇に出会えて、好きになれた自分に生まれてよかったと。好きなものを語る時こそ、大袈裟だが私は生きている!と感じることもできる。そんな自分の場合、好きなものを語らせてもらうことが、人となりを知ってもらう一番の近道なのだろう。編集者の温度だったり、人間性が伝わることで、『音楽と人』という雑誌をより深く愛してもらえたら。そんな淡い期待を込めつつ、自由に綴れたらと思う。どうぞ宜しくお願い致します。


文=宇佐美裕世

予想以上にエモく撮れてしまった日本海

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