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INTERVIEW
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さかいゆう、ニューアルバム『Yu Are Something』で露わになったルーツへの愛とオマージュ

text by 樋口靖幸

デビュー10年目にして途轍もないさかいの音楽愛に溢れたアルバムが生まれた。レイ・パーカーJr.やジェームス・ギャドソン、そしてジョン・スコフィールドといった彼のルーツに名を連ねるビッグアーティストとの共演がもたらしたアルバムだ。人一倍音楽に対する思いが強い人だというのはわかっていたが、ここまでオマージュが強いとは思っていなかった。それぐらいさかいにとって音楽とは〈生きること〉と同義であるのだろう。でもこれまでの彼は音楽を〈仕事〉として向き合わなければならない現実に苦しんでいた。予算があり、締め切りがあり、会社の事情がある。そういった音楽以外の物事すべてを理不尽と感じ、傷ついていた彼の心を、このアルバムは優しく癒しているのだ。


(これは『音楽と人』2019年2月号に掲載された記事です)



今回は話したいことがいっぱいあるんじゃないですか?

「そうかもしれない。これ、最高傑作だと思ってるんで、喋りたいことがけっこうある」

それはありがたい(笑)。

「毎回ベストを尽くしていい作品ができたと思ってるけど、どう贔屓目に見ても今回がベストだなって。やりたいことがかなりできたと思ってます」

とにかく聴いてビックリですよ、これ。

「そうなんです、これ聴いてビックリする人は、音楽ラヴな人です。逆に『アルバム良かったよー』みたいな人は、たぶん俺の歌だけを聴いてる人。ま、それでも全然いいんですけど、音楽にうるさい人たちはみんなビックリしてくれます」

ここまで自分が好きな音楽に対してオマージュを捧げる人だとは思ってなかった。

「自分でも自分をわかってないですからねぇ。でも今回、いろんな偶然と奇跡が重なってこういうアルバムができて。ジョンスコ(ジョン・スコフィールド)もたまたまスケジュールがOKだったから実現して。僕がニューヨークに滞在している期間で、彼の空いてる時間が6時間だけあって。しかもそのスケジュールに合う人たちがたまたまあのメンバーだったっていう」

ビル・スチュワートとスティーヴ・スワロー。俺、3人の名前をクレジットで見て「マジ!?」って叫んだから(笑)。

「ディレクターマネージャーであるジョンスコの奥さんと連絡をとって、まず曲を聴いてもらってオファーを受けてくれるかどうかっていうところから始まって。そしたら彼が気に入ってくれて。たまたまスケジュールが合ったからできたんですけど」

でも最初から自分のルーツだったり憧れの人とやることから制作が始まったわけではないんですよね?

「そうですね。最初はこの2、3年間の自分を全部ぶつけようと思って。デモも50曲くらいあったし。でも『海外レコーディングがいいんじゃないか』みたいな話が途中から出てきて『そんなのいいに決まってんじゃん!』って(笑)。で、なんでか知らないけどレイ・パーカーJr.とかジェームス・ギャドソンとやれることになって。一応説明しておくと、僕が好きなマーヴィン・ゲイとかビル・ウィザースとかスティーヴィー・ワンダー、あとはハービー・ハンコックなんかを支えていたミュージシャンなんですけど」

それがさかいゆうのルーツだっていうのは知ってたけど、そもそもジャズに魅了されたのっていつ頃ですか?

「たぶん20歳ぐらい。マイルス・デイヴィス、キース・ジャレット、ビル・エヴァンス、ハービー・ハンコック。最初はやっぱりマイルスで。有線放送でマイルスの特集をしてたんですよ。それまでは久保田利伸さんとか槇原敬之さんとかが好きだったんだけど、〈こんな世界もあるんだ!〉って」

何がそんなに良かったんだろう?

「ジャズというか音楽自体に枠組みがないところがいいなって思ったんでしょうね。だから自分もそういうのをやりたいと思って、そこへの憧れはありましたけど、簡単にできるもんじゃないから」

その憧れの人たちとレコーディングしただけあって、自分の好きなものに対するオマージュにあふれた作品だと思います。

「ありがとうございます、うれしいです」

ぶっちゃけ、ここまで音楽に対して憧れとか〈好き〉って思いが強い人だとは思ってなかったです。

「僕はそのつもりで今までもやってきたと思ってるですけど、どっかではじけてない部分もあったんでしょうね。でも今回アルバムのマスタリング終わったあと、3日間寝込むぐらい力を入れましたから。しかも完成してからもずっと聴いてるんですよ。今までは自分の作ったものはそんなに聴かなかったのに。いつもマスタリングが終わった時点で〈ここからは俺のモノじゃなくなった。さぁプロモーション頑張るか〉みたいな感じで」

仕事モードに切り替わって。

「そうそう。でも僕、ミュージシャンを仕事としてやってないから。人生としてやってるから。だから事務所やめようがレコード会社やめようが、お金出してくれる人がいなくなってひとりになっても、ずっとこれをやってますから。っていう感じで今回はやれたのかな。とことん自分を削って音楽をやった感じがする。だから寝込んだのかもしれない。もちろん今までの作品も好きだけど、今まではモードが切り替わってたんですよ。〈たくさん聴いたからもう聴きたくない〉みたいな」

さかいくんにとって音楽をやることは人生だけど、やっぱり仕事として成立させなきゃいけない。その狭間で悶々としてる感じはあったと思う。

「だから疲れてたんだと思う、仕事をすることに。いろんな人と関わらなきゃいけないこともそうだし。俺からすると、音楽以外のことは全部理不尽に聞こえるんですよ。予算とかセールスとか会社の都合とかいろいろあるわけじゃないですか。でも僕は音楽にしか興味がないから、そういうことって全部理不尽にしか聞こえなくて」

周りからすると逆なんだけどね。

「そうそう。俺のほうが理不尽なんだけど、でも音楽を仕事でやってないのに実際は仕事としてやってる。その矛盾をずっと抱えながらやってきて。でもディレクターだってスタッフだって自分の人生をかけて仕事をしてくれてる。だから自分も頑張るんだけど、やっぱり矛盾は抱えたまんまで。だから……疲れちゃったんでしょうね」

このアルバムがすごいのは、ジョンスコとか世界に名だたるミュージシャンと共演したことじゃなくて、さかいくんが心の底から好きな音楽を好きなようにやったところにあって。本当に音楽を人生として表現できたアルバムだからすごいんですよ。

「そう言ってもらえてうれしいです。僕がこういうインタビューで一番伝えたいのは、ジョンスコとやったからどうこうじゃなくて。音楽にしか癒せない傷ってあるでしょ? 誰にも触れさせたくない、誰かに何を言われても耳を傾けられない思いってあるじゃないですか。で、このアルバムはそんな自分のトゲみたいなものを抜いてくれるというか、癒してくれる。だからめちゃくちゃ聴いてるんでしょうね」


文=樋口靖幸

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