冒頭から身内の話で恐縮だが、我が家の娘がヤバTにハマっている。勝負服はツアーTシャツ、ベッドの枕元には彼らのステッカー、さらにタンクトップくんのキーホルダーを通学カバンにぶら下げるほど。小学生の彼女にとって彼らはスターであり憧れの存在なのだが、ヤバTの3人は世間で言うところの〈ゆとり世代〉でもある。そんな彼らのサードフルアルバム『Tank-top Festival in JAPAN』は、ゆとり世代はもちろんさらに下の世代にまで広く共感されるであろう時代性とメッセージ性を持った一枚だ。打たれ弱いだの協調性が足りないだの、世間の大人たちにディスられまくっていたゆとり世代を全肯定する音楽。これこそまさに正しいパンクロックの在り方だ。まもなく反抗期を迎えるウチの娘にとって、彼らの音楽は初期衝動のカタマリなのだろう。それぐらい彼らの音楽は今の時代を反映していることを、このアルバムはお父さん(自分)に教えてくれるのだ。
(これは『音楽と人』2018年1月号に掲載された記事です)
毎回そうなんですけど、初回盤につくDVDが面白くて。
3人「ありがとうございます!」
DVDを観た娘が「3人って仲良いね」って(笑)。
こやまたくや(ギター&ヴォーカル)「本当はめっちゃ仲悪いんですよ」
しばたありぼぼ(ベース&ヴォーカル)「フリをしてるだけ(笑)」
もりもりもと(ドラム)「見せ方が上手なんです」
こやま「や、仲良いほうやと思います。周りからも言われるし」
ありぼぼ「こやまさんが自分に合いそうな人を選んでるから」
こやま「そうそう。僕が先輩としてイキりたくてこの2人を誘ったんですけど、それがいいバランスになってるんじゃないですかね。イキりたい人とイキらせてくれる人との(笑)」
もりもとくんは完全にイキらせてくれる人で(笑)。
ありぼぼ「でも最近のもりもりはすっごく成長したから」
こやま「面白さのレベルが」
ありぼぼ「もともと静岡の人なんで会話のテンポもゆっくりだったんですけど、今は……」
こやま「ヤバTの笑いを支えてる(笑)」
もりもと「最近2人がこればっかり言うんです。自分たちが面白いこと言うのを避けてるようにしか聞こえなくて」
ウチの娘ももりもとくんが一番面白いって言ってます。
もりもと「もともと僕は〈面白くない人〉としてやっていくスタイルだったのに」
こやま「今回の初回盤のDVDも面白いですよ。ライヴ映像+もりもとが主役みたいな企画があって。満足度高いと思います」
もりもと「本当はその企画、すっごい嫌だったんです。スタッフさんも『やりたくないんだったら別のことを考えましょうか』って言ってたんですけど」
ありぼぼ「そこをなんとか宥めて(笑)」
こやま「ここ数年のもりもとの面白さが全部詰まってます」
早く観たいです(笑)。
もりもと「僕、ずっと根に持ってることがあって。昔、ライヴ中にMC振られて上手いこと言えなかったんですよ。その時こやまさんに『だからメジャーデビューできないんだ』って」
こやま&ありぼぼ「あははははは!」
もりもと「『お前のせいでデビューできない』って言われたこと、たぶん一生忘れないですから(笑)」
(笑)肝心のアルバムですが、最初に触れておきたいのは「大人の事情」という曲で。歌詞にある通り〈6曲目に収録するはずだった曲が大人の事情で入れられなくなった〉と?
こやま「そうなんです。けっこう激しめの曲を作ってたんですけど、それが入れられなくなって。で、急遽作りました」
そのことをあえて曲にしたのは?
こやま「単純に1個いいネタができたなと思って(笑)。これは曲にしようって。歌詞の中に固有名詞を入れてたんですけど、NGを食らった訳ではないんですが、それの許可を取るまでの時間が間に合わなかったんです。でもそのおかげでもう1曲できたのはよかったですね」