なんでもっと個々を褒めて、個性を伸ばさないんだろうってずーっと思ってて。CHAIでそういうことを表現したいよ
そこがCHAIの新しさで。ただ、これは大きな話になっていくけど、ネガティヴを全部ポジティヴに変えようとしていくと、最終的には日本の今の空気とか国民性と戦っていかなきゃいけなくなると思う。そこは自覚あります?
マナ「うん!!」
……超楽しそうに言ったね(笑)。
マナ「あははははは!」
ユウキ「でもそこにずっと苦しめられてきたから」
マナ「だって誰でもわかるでしょ。みんなも絶対感じてると思う。それを押し付けがましく言うんじゃなくて、楽しく言いたいだけ。で、この表現をいいと思うか悪いと思うかはみんなの自由なの。でも絶対気づいてるよね、とは思う」
カナ「グラミー賞獲ったら絶対示せると思うんだ。〈この子たちすごい、日本人でこんなことやれるんだな〉って。そうなったら日本も変わると思う。だから私たちが早く上に行かないと!」
ユナ「早く目立たないと!」
ユウキ「ね。ずっと自分たちが思ってたことを、どんどん言っていきたい。きっと誰も言ってなかったこと。国民性どうこうじゃないけど、みんなまず遠慮するじゃん。人のことを褒めないし、褒められないし」
褒められたら謙遜しなきゃいけない、生きづらいなら笑っちゃいけない、っていう空気ね。
ユウキ「そう。そういう考え方だから、みんなどんどん、ちっちゃく、ちっちゃーくなってしまうんだけど。でも爆発したい気持ちはみんな絶対持ってるはずだから。〈みんなもっと欲を出していいんだよ〉ってことは言いたい」
カナ「例えば、就活の時に『個性を出しなさい』って言われるのに、なぜかみんな同じ格好で、同じ髪型、同じ化粧だったりするのも、なんて変な文化だなって思うし。就活に限らずだけど、なんでもっと個々を大事にしないんだろう。なんでもっと個々を褒めて、個性を伸ばさないんだろうって、それはずーっと思ってて。CHAIでそういうことを表現したいよね。もっと個性出していいんだよ、もっとみんなのこと褒めていこうよって。自分が感じてきたこと、自分が言われたかったことを言い続けていきたいって思う」
マナ「なんか就活の時は赤い口紅もダメらしいよ。なんとなくほんのりピンク、みたいな」
ユナ「そうなの!? ちょっとびっくりした。なんかとんでもない話だね」
カナ「や、ほんとにとんでもないよ。就活化粧の仕方、っていう講座があるらしいし」
そうなんだ。私もよく知らないけど……今は時代が違うのかな。CHAIと同世代の宇佐美さんはわかる?
編集部・宇佐美「ほとんど決まってましたね。口紅はコーラルピンクみたいな。髪型も必ずひとつにまとめなきゃいけなくて。あとスーツもシワが寄っちゃいけないからアイロンかけろとか、パンプスとかも全部決められてて」
ユナ「そうなんだ! 衝撃だね、それは」
ユウキ「なんか嫌だなぁ。押し付けだよね」
マナ「そうだよ。でもそうしないと『あなたはそれでは就職できない』って真顔で言われるんだって」
ユナ「そうなの? それ誰が決めるの?」
ユウキ「おかしい! そんなの変!」
編集部・宇佐美「私はそういうのにムカついて、もう一切そのセミナーには参加しなかったんですけど」
一同「あはははは! カッコいい〜!(拍手)」
マナ「ほんと、そういう人たちをCHAIが褒めたい! ちょっとでも個性を出せるように、そうすることでちょっとでも楽になれるように、私たちは訴えていきたいと思ってる」
楽になれるように、っていい言葉ですね。音楽がポップで楽しいだけじゃない。CHAIの存在があることで、凝り固まった意識が少しでも楽になるっていう。
ユウキ「そう。なんかフッとほどけたらいいよね?」
うん。今回はなかなか有意義な話になったかもしれない。
一同「やった、うれしー!」
編集部・宇佐美「いや、すごく気持ちがスッキリしました。そういうこと言ってくれるアーティストとか表現者って、あんまり日本にいないと思うんですね」
カナ「確かにいないよね。意外と私たち、真面目に育ってきたから(笑)。そういう苦しさ、すごくわかる」
ユウキ「ね。普通の生まれだもんね。みんな」
特別なスターじゃなくても、普通でも、これだけ爆発して楽しんでいいんだよ、っていうことですよね。
ユウキ「そう。それは来年もどんどん主張していきたい! それでまたいっぱい海外行きたい!」
マナ「ね。来年はよりパンクなCHAIに!」
音楽的にパンクナンバーとかも出てきたりするの?
マナ「あ、それはない(即答)」
はははははははは。
ユウキ「パンクってどういう曲なのかいまいちわかんない」
マナ「レッチリのイメージしかないんだけど……違う?」
ユウキ「あれはヘビメタ?」
……そこらへんの話はしなくていいので(苦笑)。とにかく、来年も元気でフレッシュなCHAIでいてください!
カナ「ははははは! ありがとう~!」
文=石井恵梨子
撮影=Chito Yoshida_AVGVST