それぞれの絶望を抱えつつ、バンドの悩みも抱えて、もうキャパシティを超えてたというか。あんまり先が見えない状態になっちゃって
そういうのってメンバーにもあまり見せてこなかったの?
大屋「見せないようにしてる時もあるけど、明らかに落ち込んでるなっていう時もあるよね?」
中原「そうだね」
大屋「日によって波があって。スタジオ入ってきた瞬間に、〈あっ、今日は落ち込んでんなあ〉みたいな(笑)。明らかにトゲトゲしてるっていうのは、それこそ去年の夏くらいが一番ひどかったよね」
中原「すごかったね(笑)。理由はわからないけどスタジオ入ってきた瞬間、〈あれ? なんか空気違えな〉〈何話しかけたらいいんだろう〉みたいな」
川口「ま、でも去年はLAMP IN TERRENみんな鬱病みたいな感じでしたよ(笑)」
みんな! どういう状態!?
川口「それぞれに悩んでいた時期でもあったし、大も大ですごく大きな悩みを抱えてて。それが伝染して、鬱がすげえグルーヴしちゃったみたいな。きれいにハモっちゃって」
中原「酒呑みに行っても暗い話ばっかりしてたよね」
それはなかなか辛い時期ですよね。
川口「そうですね。それぞれ生きてて何かしらの絶望を抱えつつ、バンドの悩みも抱えて、もうキャパシティを超えてたというか。あんまり先が見えない状態になっちゃって」
大屋「活動休止するってあたりが俺的には、〈あっもうダメだ〉みたいな感じに一番なってて。でも活動休止で強制的に一旦ストップすることで、それまで自転車操業みたいな感じで騙し騙しやってたのをリセットして、もう1回自分たちを見直せたのは大きくて」
中原「単純に活休明けてから会話が増えましたからね。もともと少ないほうではないんですけど、大1人に任せてしまってた仕事をみんなで話して割り振ったりとか、最近ちょっとずつでき始めて。仕事の話じゃなくても、くだらないことを話したりも増えたかなって思います」
活動休止はその頃のバンドにとっては必要要素だったと。川口くんもそう感じます?
川口「そうっすね、活休からじゃないですかね。そういう……みんなの顔に笑顔が戻ったのは」
一同「ははははは!」
どれだけ暗かったん(笑)。
川口「でもそんなもんだったんですよ。休んだら治りましたみたいな。ケガしてんのにずっと放置しすぎたなみたいな。ただ誰も治そうとする心の余裕はなく、なんとなく見て見ぬふりをし続けて。それは大もだし、俺たちもだし」
大変だったのは松本くん1人だけじゃなかったわけだ。
一同「そうですね」
この作品が重たいなって感じる理由がなんとなくわかったような気がします。かと言って、暗い作品ではないんだけど。
中原「うん。作品として明るいなとは思いますね」
どういうところでそう感じます?
中原「単純にすごくわかりやすい。さっき覚悟を決めた曲があるって言ってたんですけど、辛かったけど今の自分も受け入れて、それを出しきって先に向かっていくぞっていうのがあるから。希望が見えるというか」
大屋「これまでの歌詞が〈今がキツイ〉〈今が辛い〉っていうイメージだったとすると、〈亡霊と影〉とか〈凡人ダグ〉とかは、〈あの時辛かった〉みたいなニュアンスに変わってきてる気がする」
私が思ったのは、バンドありきの作品だなってことで。この曲たちを松本くんが1人で弾き語りとかしてたら、ちょっと聴くのシンドイなって思ってたと思う。でも3人が松本大っていう人間と歌に寄り添ってプレイで背中を押してるから、ちゃんと前に進んでいくパワーがある。だから暗くないんですよ。
中原「うれしいですね、それ」
大屋「ソロでもアイツはいい曲書くんでしょうけど、バンドでやってる、ヴォーカル松本大が一番カッコいいっていうのがあるから。だからあいつが自分をすべて出すなら、みんなで支えるっていうか……ちょこっと恥ずかしいけど(笑)」
川口「でもみんな自然だったと思いますよ。自然に身を任せてたらこうなった。このバンドで一番重要なものは何か、一番伝えなきゃいけないものは何かって考えると、やっぱり歌なんですよね。そうなった時にそれぞれがどういう役割をしなければならないっていうのが、感覚的にわかってきた。昔、やっぱりステージに立っている以上、自分も目立ちてえなみたいな時があって。そしたら、『大がすごく唄いにくそうなライヴをするね』って人から言われて。その時めっちゃ悔しかったんですけど、映像を見たり普段の自分を思い返すとたしかに、そうだよなって思わされるんですよね」