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  • #THE COLLECTORS

あの頃、僕らは 「THE COLLECTORS~さらば青春の新宿JAM~」によせて

text by 金光裕史

現在公開中のドキュメンタリー映画「THE COLLECTORS~さらば青春の新宿JAM~」。この作品は、2017年12月31日に惜しまれつつ閉店したライヴハウス・新宿JAMで、閉店直後の12月24日に行われたTHE COLLECTORSのライヴを軸に、バンドの姿、東京モッズのカルチャーを描いたもの。ひとつの時代の終わりが産み落とした〈青春〉のドキュメンタリーを、ぜひ劇場で目撃してほしい。

 

(これは『音楽と人』2018年12月号に掲載された記事です)


 

モッズのバイブルとしてよく知られる名作『さらば青春の光』は、主人公のジミーが夕陽を背にして、複雑な表情を浮かべながらとぼとぼドーバーの崖から歩いてくる、そんなシーンから始まる。まるでそれは、映画のエンディングで、崖の上からスクーターを落とし、青春のシンボルを手離すことで、モッズを卒業し、大人になろうとする、いや、ならなくちゃいけないと言い聞かせた、その後の心情を描いているようだ。

「THE COLLECTORS~さらば青春の新宿JAM~」は、昨年、37年に渡る歴史に幕を下ろした老舗ライヴハウス新宿JAMで、閉店直前の12月24日に行われたTHE COLLECTORSのライヴを軸に、この場所で何が生まれ、それが当時の音楽シーンにどんな影響を与え、そしてモッズというカルチャーがなぜ今に至るまで熱烈なファンに愛され、そして引き継がれていったのか、それがよくわかる作品だ。当時のライヴ映像や写真の数々は、今見るととても新鮮で、その空気をリアルに伝えてくれる。峯田和伸(銀杏BOYZ)やTHE BAWDIESのメンバーの口から語られる憧れと、會田茂一や片寄明人(GREAT3)、真城めぐみ(ヒックスヴィル)という当時を知る仲間たちの目撃証言は、新宿JAMとモッズが生んだシーンがいかに魅力的だったかということと、ここから生まれたカルチャーが、今も日本のロックシーンのどこかにふつふつと息づいていることがよくわかる。コータローがインタビューで語っていたように、当時のドキュメンタリーとして非常によくできている。音楽好きであれば、誰でも興味深く観ることができるだろう。

 

 

しかし視点を変えると、これはTHE COLLECTORS……というより加藤ひさしが、今もずっとここにいることが、そしてこの時の思いのままでいることが、はっきりわかるドキュメンタリーでもある。58歳になろうとする今でも、彼はこの時のままなのだ。

「JAMはあんまり好きじゃなかった」

「他のライヴハウスの敷居が高いからここに出ていた」

加藤の言葉はどこまでが本気でどこまでがジョークなのかわからないこともあるが、多くの人にモッズのカッコよさを知ってほしかった彼だ。その気持ちは本心だろう。もし「世界を止めて」でブレイクして、モッズ・ファッションと共にTHE COLLECTORSの名前がお茶の間にも知られ、その夢が叶っていたなら、とっくに彼の心はここになく、ただ懐かしい青春の1ページで終わっていたかもしれない。しかし幸か不幸か、THE COLLECTORSはなかなか認められなかった。当然モッズ・カルチャーも、一部に熱狂的なファンを持ちつつも、ほとんどの人には知られないままだ。それが〈自分だけが知っている〉という強いこだわりと絆を生んだのは確かだが、同時に、自分たちが大勢でないことにも気づかされた。

ほとんどはそこで諦める。モッズコートを押入れの奥にしまい、ベスパは子供を乗せやすい軽乗用車に変わる。何なら音楽も、時代に合わせたものになる。でも彼はそうしなかった。どうしても諦めきれなかったのだ。その満たされない、足りない何かを抱えたまま、彼は58歳になる。聖地だった新宿JAMはなくなった。でも自分の心だけは、まだあの頃のままだ。お前らどうしてモッズのカッコよさがわかんねえんだ、と、あの当時と同じシルエットの細身のスーツは着られなくなった今も、まだ憤っている。

 

 

そう、ある意味でこれは、いつまでたっても14歳のままで、その気持ちが拭えない、ガキのまんま大人になった男のドキュメントなのだ。ジミーはスクーターを崖から突き落とし、自分の青春にケリをつけた。大人になるってこういうことだと、過去と決別した。そこまでドラマチックじゃないにせよ、どんな人にもそんな瞬間はやってくる。

でも加藤ひさしはそうなりきれない。大人になれない。

いつまでも子供のままだ。でもその姿はちょっと、僕たちが過去に置いてきた何かをいまだに追いかけているようで、大人になろうよ、と思う反面、ちょっと羨ましくなったりもする。この映画にグッと引き込まれるのは、きっとそういう、加藤ひさしのいつまでたっても、ロックンロールを、いやモッズを好きになった14歳のままでいる姿が、そこに垣間見えるからじゃないだろうか。

新宿JAMでのライヴに向けて、加藤が当時と同じスーツを新調するため、奈良のモッズショップまで、わざわざ向かうシーンがある。黒のモッズスーツを着て、32年前と同じ格好をした加藤が見せる表情は、あの頃、このスーツでライヴに出ようと決めた鏡の前と、きっと同じ顔だ。

 

文=金光裕史

 

『THE COLLECTORS~さらば青春の新宿JAM~』
​新宿ピカデリー他にて上映中!
http://thecollectors-film.com/

 

 

映画『さらば青春の光』(1979公開)

1973年のTHE WHO『四重人格』を原作として製作された映画。1960年代初期のロンドンを舞台に、自分の道を模索する若者グループ、モッズとロッカーズの対立を描いている。

 

 

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