このインタビューの数日前、アルバム『歓声前夜』を引っさげた初のワンマンツアーの東京公演を観に行った。結成14年目してワンマンツアーが初という事実は、ひとつひとつのことに対して真摯に向き合って意味を見出してきた彼ららしいトピックであり、そこでも4人は「あなた」と一対一で対峙しながら、音楽を鳴らしていた。常に「自分」、そして「あなた」と向き合ってきたSUPER BEAVERの音楽は今、ライヴハウス、そして日本武道館を経て、お茶の間にも広がろうとしている。ニューシングル「予感」はカンテレ・フジテレビ系ドラマ『僕らは奇跡でできている』の主題歌として絶賛オンエア中。高揚感溢れるビートのうえで、〈予感のする方へ 心が夢中になる方へ〉〈会いたい自分がいる方へ〉と唄われるこの曲は、純粋に光へ向かっていく勇気を与えてくれる。なぜ、そんなに自分自身と向き合い、そしてピュアに前へ進んでいけるのか。フロントマンの渋谷龍太と、一対一で対峙しながら、その理由を探ってみた。
(これは『音楽と人』2018年12月号に掲載された記事です)
私、渋谷さんとお話するのめちゃめちゃ緊張するんですよ。
「なぜですか!」
いや、ライヴであれだけお客さんと一対一のやり取りをしてる人にインタビューするって、すごくパワーがいるというか。
「いやいや、ステージは気張ってますけど、ステージ降りたらふぬけてるんで」
ふぬけてますか(笑)。
「はい。ライヴの前になると、なんとなくスイッチが入る予感がしてきて、ステージに上がった瞬間にパンッてスイッチが入る感じなんで。だから普通に喋ってるぶんには、普通です」
なるほど。で、先日、初ワンマンツアーの東京公演を観に行って。まず今までワンマンツアーをやってなかったっていうことが驚きだったんですけど、何か理由があったんですか?
「基本的に対バンが好きなので、対バンツアーばっかり廻ってたっていう感じです。ただ、その中でもっと長い時間僕たちの音楽を聴きたいって言ってくださる方の声がすごく増えてきて。そう言ってもらえたことで自分たちがすごく、ワンマンに対して楽しみになれた。対バンと変わらないくらいワクワクできたので、やってみようって」
どれくらいワクワクできるかっていうのがポイントだったんですね。
「やっぱ、2マンだったら2バンドで作る化学反応みたいなものがあるじゃないですか。それがけっこう好きだったんですよね。自分たちを好きだって言ってくださる方に、僕たちが好きなバンドを観てもらうこともとっても好きだし。それに、バンド結成した当初とかはワンマンっていうものが、こっ恥ずかしかったんです、なんとなく」
どうしてですか?
「うーん、小さい頃から誕生日会を自分で開いたりとか絶対できないタイプで。計画的に自分が主役になる準備をするのがあまり得意じゃなかったんですよね。みんなは誕生日会を計画して友達をお家に招いてみたいなことをやってて、母ちゃんとかにも『あんたやりたくないの?』とか言われたけど、頑なに拒んでいて」
それは、恥ずかしさだったり、遠慮みたいな気持ち?
「そうですね。お祝いするのは好きだったけど……なんだろうな、自分がやってもらうってなると、どっか厚かましいと思っちゃうんですよね。もっと普通でいいというか。そういう気質ではあったんで、ライヴも同じように感じてたことがあって。ただライヴは時間を割いてお金を払って来ていただいていて、それを凌駕するものを自分たちは絶対提示する、持って帰ってもらうんだ、っていう気持ちが続けてるとやっぱり出てきまして。それが出てきてからはワンマンってものがあんまりこっ恥ずかしいものじゃなくなってきたんですけど」
それはバンドに対する自信や自負が強くなってきた、ということですかね。
「自分の中で思考だとか意思だとかが固まってきたというか、誰に何言われてもブレないっていう部分を自分で見つけたこと。それを自信って言うのかわからないけど、自分の確固たるものに気がついたり、発見することができた時に、そういう意識の変化が出てきたんですかね。こういうインタビューもそうなんですけど、インタビューして自分が思ってることを言葉にすると、自分ってこんなこと考えてたんだってハッとする瞬間っていうのがあるんです。不思議なことに。そういうのを何度もやってくると、洗練されてくるっていうか、無駄なものが落ちてくる。自分の核となる部分だけがしっかり見えるようになってくるので。そういうのが大きいかなって思います」
人と接する中で、自分が整理されていったと。それだけ普段から自分自身と向き合ってる人とも言えるわけで。
「ああ、そうですね。楽しいこと嬉しいことはもちろんだし、何に対して自分が憤ってるのかとか、何に対して今自分が不安に思ってるのかとか、っていうのは明確にするようにしてます。なんでこう感じているのかっていうのは、根源まで突き詰めようって」