アンコールで披露された「我逢人(がほうじん)」を観て、安堵と喜びが身体中を駆け巡った。彼らが出会い、Mrs. GREEN APPLEとして音を鳴らしている事実が、どうしようもなく嬉しかったのだ。
Mrs. GREEN APPLEにとって初のアリーナツアー〈ARENA TOUR / エデンの園〉。昨年12月、横浜アリーナからスタートし、今月16日に国立代々木競技場第一体育館でファイナル公演が行われた。「インフェルノ」で幕を開け「藍(あお)」を披露したあと、「ちょっと大森感極まってます。今日はとんでもないところまで一緒に行けたらいいなと思ってるんで」という大森元貴の呼びかけにより、場内はいっそう熱を帯びていった。その後も「WaLL FloWeR」「VIP」「アンゼンパイ」と続き、最新作『Attitude』からは「ProPose」「Soup」が披露されたのだが、この新旧織り交ぜたセットリストの中で、5人が鳴らす音に、そして大森が紡ぐ言葉に救われてきた人は、一体どのくらいいるのだろうかと思いを巡らせていた。
この日、「僕のこと」を披露する前に大森は次のように語っていた。
「誰かと自分を比べたり、どうしようもない感情に、夜な夜ななってしまう時があって。みんなもそうでしょう? でも、人と比べる瞬間があっても、自分は素晴らしい存在なんだと信じていたい」
大森は心の隙間を埋めてくれるような言葉を、音に乗せて、時にはMCで、とにかくさまざまな形で与えてくれた。それらに救われた人は星の数ほどいるだろう。でも、じゃあ誰が大森の心の隙間を埋めるのか? 彼はずっと寂しさを抱えたままなのだろうか。
アンコールの「我逢人(がほうじん)」で、その役目は紛れもなく、若井滉斗、藤澤涼架、山中綾華、髙野清宗の4人であると確信した。今の彼らには、大森が求める音楽に近づくための必死さなどは感じられなかった。むしろ、個々に音楽を純粋に楽しむ余裕が伺えて、とても頼もしく見えたのだ。これまでのミセスのライヴにはどこか〈寂しさ〉が漂っていたが、今回のアリーナツアーで、特に「我逢人(がほうじん)」ではそれを感じることはなかった。強いて言えばツアーが終わってしまうことへの寂しさはもちろんあったと思うが、楽しさのほうが完全に勝っていて、全員が同じラインで、Mrs. GREEN APPLEとして生きる喜びをわかち合っているように思えた。〈傷を癒して 心撫で合って/人は、人は/笑顔であってほしいな〉という、「我逢人(がほうじん)」の詞の世界が目の前に広がっているような気さえしたのだ。
Mrs. GREEN APPLEの第1章はこのアリーナツアーをもって終わるが、第2章で彼らはより強固な絆でこちらが想像もつかないような音楽や景色を届けてくれるのだろう。モニターに映し出された5人の笑顔を見ながら、そんなことをぼんやりと考えていた。
音楽と人4月号(3/5発売)では、より詳しいライヴレポートと密着記事を掲載します。乞うご期待。
文=宇佐美裕世
写真=上飯坂一
『音楽と人』 2020年4月号
2020年3月5日(木)発売
表紙&巻頭特集 aiko
澁谷逆太郎、Mrs. GREEN APPLE、ヤバイTシャツ屋さん、Official髭男dism、Plastic Tree、KANA-BOON、flumpool、KALMA、Lucky Kilimanjaro、the GazettE、河内REDS、THEラブ人間、松室政哉、lynch.、高橋徹也、錯乱前戦、downy
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