〈2019年プレイバック&MY BEST MUSIC〉と題したこの企画では、音楽と人にゆかりのあるミュージシャンの方々に登場いただき、今年1年間を振り返るインタビューをお届け。さらには2019年、心に響いた作品、または楽曲をセレクトしてもらい大公開していきます! 今日は、忘れ柴田が失恋の悲しみとともに、2019年を振り返ります。
〜柴田隆浩(忘れらんねえよ)の2019年〜
今年のトピックはなんといっても3年ぶりの失恋……ってこれインタビューでも話したしサウナでも散々語りましたよね。でも失恋ってマジで苦しいんですよ。苦しくて苦しくて、そんな自分を救うために書いたのが「なつみ」って曲と「喜ばせたいんです」って曲で。そうやって自分を救うために書く行為って、忘れらんねえよの原点ですよね。好きな子とかフラれた子に面と向かって言えなかったことを歌に乗せるしかない……って、その行為そのものは山崎まさよしさんの「One more time,One more chance」と同じなんですけど、俺の場合はどういうわけかこうなってしまう(笑)。
あと今年最大のトピックは、昨日撮ったばっかのミュージックビデオ。あの菅田将暉さんが役者として出てるんですよ! 今まで彼とは音楽での共演だったわけで、役者としての菅田さんを近くで見たことがなかったんですけど、昨日は完全に……メジャーリーグで言うと大谷が降臨した状態っすよ(笑)。例えば棚の上のミカンを取るっていうシーンがあったんだけど、その仕草だけでもう……何回もそのシーンをリピートできるぐらい神々しいんですよ。とにかく美しくて、息が止まりそうになった。あとは菅田さんが横になって涙を流しながら歌詞を口ずさむシーン。あん時菅田さん、マジで泣いてたから。やっぱ役者ってすごいなって思ったら、「や、この歌は本当に泣けるんで」って言ってくれて……。
来年の抱負ですか? 新しい恋愛を……いや、まだ俺はあの子のことを諦めてないんで。だって好きなんだもん。早く他の女の子を好きになったほうが楽になるかもしれないけど、まだ諦めたくない。で、最近思うのは、もっと自分に自信を持とうってことで。俺だっていい歌書いてると思うし、お客さんも喜んでくれてるし、いろんな人が忘れらんねえよを「いい」って言ってくれてるのに、何でそんなに自信がないんだ?って。もっと自信持って、堂々と女の子に「あなたのことが好きで、あなたのために歌を作った」って言えるようになりたいです。
〜MY BEST MUSIC〜
オレンジスパイニクラブ「キンモクセイ」
YouTubeでいろいろ見てるうちに関連動画で引っかかって出てきたんだけど、ずば抜けていい歌、レベルの高いポップソング。声も素晴らしい。動画の再生回数からして、もうかなり人気のあるバンドだと思う。でもそういう世間の評判とかはぶっちゃけどうでもよくて、とにかくこの「キンモクセイ」って曲は俺には作れないタイプの美しい音楽だと思う。バンドのメンバーには挨拶したことがあるけど、まだライヴはちゃんと観たことがない。でもこの曲は本当に素晴らしい。
3markets[ ] 「拝啓、1メートル。」
このバンド、人気が出るのは当たり前! 何がいいって、とにかく歌詞が素晴らしい。あとギターが大天才。や、バンドそのものが天才だと思う。これは間違いなく2020年はいくバンドだと思う。このバンドの歌詞って心の叫びなんですよ。「助けて!」って救いを求めてる。ヴォーカルの人のブログを読むと、さらに歌詞の切実さが伝わってきてヤバい。基本ネガティヴなんだけど、その中にユーモアもある。だからどっかでちゃんと自分を客観視できるんだと思う。痛々しいけど、俺はそういう人の歌に美しさを感じてしまうタイプ。絶対彼は心が美しい人だと思う。
菅田将暉「まちがいさがし」
菅田さんとの交流って、彼が忘れらんねえよを好きだってことをテレビ番組か何かで言ってくれて、そこから対談みたいな企画が生まれたのがきっかけ。当時彼はまだ音楽活動をしてなくて、忘れらんねえよはセカンドアルバムを作ってる時期だったかな。「今アルバム作ってるんで」って先に聴かせてもらったのが、米津玄師さんの「まちがいさがし」と「キスだけで feat.あいみょん」で、どっちも素晴らしくて。最初「まちがいさがし」は米津さんっぽい曲だなーぐらいの印象だったんだけど、ずっと聴いてると凄まじい曲だと思うようになって。メロディがいいとか歌詞がいいとか菅田さんの声がいいとかもちろん素晴らしい要素だらけなんだけど、それだけじゃ説明つかない良さがある。なんだろう……時代の空気そのものを曲に封じ込めた感じ? とにかく特別な空気感がこの曲にはあるんですよ。音楽を構成する要素って、言葉では説明つかない何かがあって、それがこの曲の素晴らしさの正体のような気がする。
GEZAN「DNA」
GEZANが今一番のパンクロックバンドなんじゃないかって思う。もっと言うと一番美しいパンクロック。音楽云々よりも活動のスタンスですね。常に対社会というか、やってることが文学なんですよ。良い悪いの価値観をはかるんじゃなくて、答えとか正解のないものをひたすら追求してる感じ。それは俺にとってパンクであり、文学であって。でも俺の場合、すげえ下世話だし俗物だから、どっかで物事に対してイエスかノーを求めてしまうんですよ。答えを欲しがってしまう。だから彼らとは面識がないんだけど、きっとウマは合わないと思う(笑)。でもすごい好き。音楽が純粋だし、美しい。この曲にすごく好きなフレーズがあって……〈才能を残さず使い切り/イメージでできた羽で空を行くんだ〉っていう一節。すべてを捨ててもいい、自分がやりたいことなら全部失っていい、みたいなことを唄ってるじゃないですか。これって自分の思想で生をまっとうしようしてる人の歌で、俺には絶対できない。ここまで純粋で美しい気持ちで生きたいけど、どうしてもそうなれない。だから余計惹かれるんですよ。
marebito「消失と生活の歌」
知ってる人はあんまりいないと思うんですけど、ここ最近本当によく聴いてる曲。友達に教えてもらったんですけど……本当にヤバいですよ。小林唯っていう人がやってるソロプロジェクトで、歳も30過ぎてるらしいんですけど、とにかく美しいんですよ。まるでハタチそこそこの青さみたいなのがあって、誰でも思ってるような気持ちを極限まで美しく表現した、みたいな。ライヴの動員もまだないみたいだし、この先売れるかどうかわかんないけど、売れてほしい……とか思うのは余計なお世話だなって。とにかくこういう音楽と出会えたことが嬉しいし、こういう人と俺は酒を呑みたい。ということで彼と今度呑むことになりました(笑)。
Information
最新アルバム『週刊青春』が発売中。1月24日に、〈Zepp DiverCity ワンマン がんばれ柴田~こっからもっかい青春はじめる~〉を開催。
忘れらんねえよ オフィシャルHP http://www.office-augusta.com/wasureranneyo/index.html