【Live Report】
UNISON SQUARE GARDEN〈プログラム 15th〉
2019年7月27日 at 大阪・舞洲スポーツアイランド 太陽の広場 特設会場
(トップ写真:にしゆきみ)
大阪・舞洲スポーツアイランド太陽の広場特設会場にて開催された、結成15周年記念ライヴ〈プログラム15th〉。数日前に発生した台風6号の影響が直前まで心配されたが、開場時間には雨もあがり、今日という日を楽しむ準備は整った。海沿いの道を進んでいった先に広がる、大阪湾を臨むその空間が、この日の私たちとUNISON SQUARE GARDENとの〈遊び場〉だ。
おなじみのSE、イズミカワソラの「絵の具」が、この日いつもより長く流れる中、鈴木、田淵、斎藤の順にステージに現れる。斎藤が片手を高く掲げると、ひときわ大きな拍手と歓声が起こる。そして、アカペラからはじまったのは、4thアルバム『CIDER ROAD』収録の「お人好しカメレオン」だ。記憶があっていれば、ライヴでは初披露となるこの曲。そんなまさかのオープニングに驚かされながらも、歌詞のひとつひとつが、今日この場所に集まった人たちへの歓迎の挨拶がわりであり、バンドの変わらぬ信念を改めて宣言するかのように響き渡っていく。
1曲目を唄い終え、一瞬笑みを見せた斎藤の「ようこそ!」という言葉を合図に「シャンデリア・ワルツ」が弾け、「君の瞳に恋してない」で会場の祝祭ムードは一気にマックスに。中盤、厚い雲に覆われていた空から陽の光が差し込み、夕焼け色に照らされる中はじまった3人のジャムセッションから「オトノバ中間試験」へとなだれ込み、「カウンターアイデンティティ」「Catch up, latency」で、ぐいぐいと会場のテンションをあげていく。そこで間髪入れず高らかに鳴らされたのは「プログラムcontinued(15th style)」。結成10周年の際に発表された楽曲の歌詞を書き換え、15周年ヴァージョンとして『Bee side Sea side ~B-side Collection Album~』に収録された、この日のテーマソングともいえるナンバーだ。
最初に演奏された「お人好しカメレオン」の〈ならば今その手を離さないで 離さないなら遊びに行こうよ/ただ甘やかす事はしないから あらかじめ出口チェックしておいてくれよ〉というサビや、この曲の直前にプレイされた「Catch up, latency」の一節に呼応するかのような、〈優しくなくても 正しくなくても 今日ぐらいは祝ってくれないかな〉というフレーズが唄われると、会場のあちらこちらから「おめでとう!」の言葉と拍手が湧き上がる。その気持ちに応えるかのように、〈依然continued!〉と力強く唄い放ち、ドラム台を囲みながらアウトロを奏で、互いに確かめ合いながら曲を締めくくる3人。ステージ両脇に設置されたビジョンに映し出された彼らの実に晴れやかな表情から、今日という日が最高のものになることを確信した。
「いやあ〜降ったね。降ったけど止んだね!」とこの日の天気について触れたあと、バンド初期の、まだ自分たちの足元が固まっていなかった頃の「今だから話せる黒歴史」的なエピソードを語る斎藤。「そんなUNISON SQUARE GAREDENも大人になりましたが、次の曲は当時を思い返して」と、インディーズ盤『流星前夜』(7月3日に再発)に収録の「水と雨について」を披露。さらにこれまた久々にライヴで聴く初期ナンバー「cody beats」と、アニバーサリーライヴならではの楽曲が、あの頃と変わらない青い煌めきを放ちながらプレイされていく。
そして、ワンマンでは恒例のドラムソロへ。ギターのフィードバックと地鳴りのようなベースから、グロッケンのようなシーケンスの音の上を、まるで唄うようにビートを叩き出していく鈴木。ビジョンに月が徐々に満ちていく画像がサブリミナルのように挟みこまれていくという映像演出も含め、ドラムソロというよりは、セットリストの中の1曲と言ってもいい、見事なインストパートだった。そこから、「天国と地獄」「fake town baby」「徹頭徹尾夜な夜なドライブ」とアグレッシヴなナンバーで畳み掛け、「シュガーソングとビターステップ」で会場は幸福な一体感に包まれていった。
ここで、彼らのライヴでは珍しく少し長めのMCへ。斎藤が、15周年を迎えるにあたり、これまで自分たちを支えてくれた人々への感謝を述べたあと、「これからも自分のために音楽を続けること。そうやっていけば、みんなが〈いいバンドだな〉と思い続けてくれるんじゃないかと思っています」と自身の思いを語り、「せっかくなんで、2人もなんか喋る?」という斎藤の振りから、鈴木、田淵それぞれがマイクに向かう。鈴木は、「真面目で才能あって一生懸命やってきてなかったらここまでできてない。それをこのライヴで証明できてるでしょ? 自分とチームが本当に誇らしいです。これからも自分勝手に楽しいと思うこと、カッコいいと思うことを突き詰めていきます」と真っ直ぐな言葉で感謝と決意を語った。そして、感極まった表情をみせる田淵は、自身とバンドに向けられた大きな拍手と歓声にしばし黙ったまま耳を傾けたあと、「UNISON SQUARE GARDENちゅうのは、すげえバンドだな! 今日はよく来た! またやろう!」と簡潔な言葉だが、最大限の気持ちを込めて力強く言い放ったのだった。
そんなMCのあとにプレイされたのは「さわれない歌」だ。田淵のパーソナルな部分が強い歌ゆえにバンドで鳴らすことにためらいがあったが、バンドのスタンスを表してる曲だとメンバーから言われ、10 周年の際に発表されたベスト盤『DUGOUT ACCIDENT』に収録――という経緯を持つこの曲が、このタイミングでプレイされてぐっとこないわけがない。一人だけの思いが、メンバーと共有され鳴らされることによって、バンドや彼らのことを応援する〈物好き〉たちそれぞれにとっての大事な楽曲となっていく。それを音楽の魔法と呼ばずして、なんと言えばいいのだろう。その後、「桜のあと(all quartets lead to the?)」に続き、バンドやチームの行き詰まった空気に風穴をあけた「オリオンをなぞる」、そして彼らのファーストシングル「センチメンタルピリオド」で、15周年記念ライヴは幕を閉じたのだった。
アンコールなしの全26曲。馴れ合いも、決まりなんかもない。自分の思うように、自由に楽しめばいい。ずっとそういうスタンスで15年間やり続けてきた3人にとって、2万5000人もの人たちが、UNISON SQUARE GARDENの音楽に反応し、思い思いにリズムに合わせ手を振ったり、跳ねたり、身体を揺らしたり、時には一緒に唄ったりしていた光景は、最高のお祝いとなったことだろう。
君の好きなロックバンドは誰がなんと言おうと絶対にカッコいいから――10周年記念の武道館でのメンバーの言葉が頭に浮かぶ。このバンドをずっと追いかけてきて心から良かった。そう思えた本当に素晴らしいライヴであった。 8月28、29日には、新木場STUDIO COASTで開催されるトリビュートアルバム発売記念スペシャルライヴ〈Thank you, ROCK BANDS! ~UNISON SQUARE GARDEN 15th Anniversary Tribute Live~〉も控えている。バンド結成15周年の節目を、彼ら3人と共にまだまだ祝っていこうではないか。
文=平林道子
写真= Viola Kam (V'z Twinkle)、にしゆきみ
【SET LIST】
01 お人好しカメレオン
02 シャンデリア・ワルツ
03 君の瞳に恋してない
04 流星のスコール
05 instant EGOIST
06 リニアブルーを聴きながら
07 Invisible Sensation
08 8月、昼中の流れ星と飛行機雲
09 オトノバ中間試験
10 カウンターアイデンティティ
11 Catch up, latency
12 プログラムcontinued(15th style)
13 黄昏インザスパイ
14 春が来てぼくら
15 水と雨について
16 harmonized finale
17 cody beats
18 10% roll, 10% romance
19 天国と地獄
20 fake town baby
21 徹頭徹尾夜な夜なドライブ
22 シュガーソングとビターステップ
23 さわれない歌
24 桜のあと(all quartets lead to the?)
25 オリオンをなぞる
26 センチメンタルピリオド
【 LIVE INFORMATION 】
Thank you, ROCK BANDS! ~UNISON SQUARE GARDEN 15th Anniversary Tribute Live~
2019年8月28日(水) 東京・新木場 STUDIO COAST
[出演] UNISON SQUARE GARDEN
[ゲスト/五十音順] 佐々木亮介(a flood of circle) / 山田将司、菅波栄純(THE BACK HORN) / 山中さわお(the pillows) / 東京スカパラダイスオーケストラ / 大胡田なつき、成田ハネダ、三澤勝洸(パスピエ) / LiSA
2019年8月29日(木) 東京・新木場 STUDIO COAST
[出演]UNISON SQUARE GARDEN
[ゲスト/五十音順] イズミカワソラ / 菅原卓郎、滝善充(9mm Parabellum Bullet) / 尾崎世界観(クリープハイプ) / SKY-HI / 堂島孝平 / 金井政人、柿沼広也、東出真緒(BIGMAMA)
UNISON SQUARE GARDEN 公式サイト http://unison-s-g.com/